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若者は主にソーシャルメディア…意思疎通のメディア利用の実情をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ たとえ本人が間近にいてもスマートフォンでやりとり、というケースも。(写真:アフロ)

固定電話はほとんど使われず

自分の意志を特定少数、あるいは不特定多数に、即時、あるいは時間をおいて伝える手法をコミュニケーションと呼ぶが、各種メディアはそのために用いられることが多い。電話も手紙もインターネットのさまざまなサービスも、突き詰めれば自分の意志を誰かに伝えるための道具に他ならない。今回は総務省が2019年9月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)を基に、個人が意思発信のために用いるメディアの利用状況について、利用時間の観点から確認する。

次に示すのはコミュニケーションメディア、具体的には携帯電話(従来型携帯電話、スマートフォン双方。通話)、固定電話(通話)、インターネット通話(Skype、LINEなどの音声通話、さらにビデオ通話含む)、ソーシャルメディアの利用、電子メールの利用、計5種類のメディアの利用時間を示したもの。使わない人も利用時間をゼロとして、合算した上での平均利用時間なので、全体としての動向の把握が可能となる。つまりおおよそ利用者の利用時間と利用されている度合いそのものを推し量ることができる。

↑ コミュニケーション系メディアの平均利用時間(平日、分)(2018年)
↑ コミュニケーション系メディアの平均利用時間(平日、分)(2018年)

緑系統色は直接音声によるもの、赤系統色はデジタル系のものとして区分しているが、赤系統色の棒がよく伸びており、全般的に音声を用いたコミュニケーションの時間より、デジタル系の方が長いことが分かる(今件はインターネット経由の調査ではないことに注意。デジタルギャップによる調査結果のぶれは生じない)。

音声通話のみで動向を調べると、10~20代はインターネット通話が多用されている。これはLINEなどによる無料の通話が多用されているからと考えられる。30代以降はインターネット通話が落ち込み、携帯電話の方が長い時間となる。他方、60代に至っても固定電話はほとんど使われず、携帯電話の利用時間の方が長い。

デジタル系では全体においては電子メールの方が利用時間が長いものの、10代から20代に限ればソーシャルメディアの利用時間の方が長い。30代以降で一気に逆転の動きがある。若年層におけるデジタルコミュニケーションは、電子メールよりもソーシャルメディアが主流であることが、今調査結果からも明らかなものとなっている。もっとも30代以降になるとソーシャルメディアの利用時間は大きく減少し、電子メールによるコミュニケーションがまだまだ主流であることも事実には違いない。

1年間の変移を確認

同じような条件下で行われた前年分、つまり2017年分調査の結果と見比べ、その動きを算出した結果が次のグラフ。マイナスはそれだけそのメディアが使われなくなったことを意味する。

↑ コミュニケーション系メディアの平均利用時間(平日、前年比、分)(2018年)
↑ コミュニケーション系メディアの平均利用時間(平日、前年比、分)(2018年)

10代で大きくソーシャルメディアが伸びている一方、50~60代では電子メールが伸びており、同じデジタル系でも年齢階層間のギャップが広がった感はある。他方、20代でソーシャルメディアと電子メールの双方が大きく落ち込んでいるのが気になるところ。また、それらの動きを除くと、多くの属性で前年比がマイナスを示しており、コミュニケーション疲れ的なものが発生しているのではないかとの推測もできる。もっとも全体ではプラスにしてもマイナスにしても1分足らずの動きであり、誤差の範囲だとの解釈の方が的を射ているように思えるが。

直近年における単年の各メディアの利用状況の比較としては、「若年層がソーシャルメディア主流、中年層以降は電子メールがメイン」「固定電話も携帯電話も音声通話はほとんど使われない」に変わりは無い。今後ソーシャルメディアがより年上の層に深く浸透していくか否かに注目したいところだ。

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※平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2019年2月23日から3月1日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

なお今調査は例年11~12月にかけて行われるが、直近分は翌年の2~3月となっている。グラフや本文上の表記や考察は、報告書に準ずる形で2018年と表記する。また調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが生じているが、報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きをしている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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