各国の固定電話と携帯電話の普及率推移をさぐる(新興国編)(2019年公開版)

↑ 新興国でも携帯電話の普及率は急速に向上している。(写真:アフロ)

国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)では定期的に主要国(ITU加盟国)の携帯電話やインターネットに関する統計資料をまとめ、各国の動向を推し量れるデータを公開している。今回はその中から「新興国における、固定電話と携帯電話の普及率の推移」を2019年の時点で抽出し(収録されている値は前年2018年分まで)、状況の精査を行う。

「新興国」との言葉には色々な定義、区分があり、さらに国数も多い。すべてを追いかけていては雑多に過ぎるので、今回はG20各国のうち目に留まった国、具体的にはロシア・インド・インドネシア・ブラジル・フィリピンにスポットライトを当てる。

なお今件の「固定電話普及率」は、世帯ベースではなく個人ベース。普通一世帯に固定電話を複数台契約する状況はあまり想定できないことから、100%到達は困難な値であることを留意しておかねばならない。また一部の国では最新値が2018年分ではなく2017年分となっているものがある。

それでは最初にロシア。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、ロシア)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、ロシア)

元々の固定電話普及率は低め、そして2000年から1、2年は携帯電話の普及率があまり伸びていないのが印象的。そして固定電話の普及率もあまり変化せず、携帯電話が急激な伸びを示している。

そして2003年以降携帯電話の普及率上昇度合いは加速している(もっとも2011年で一度失速が見られる。これは同年からロシアにおける契約者数のカウント方法をSIMカード関連で変更したからに他ならない。同国の携帯電話事情がダイナミックに変わったわけではない)。

携帯電話は他人との音声における情報のやり取りができるだけに限らない。SMSでのメッセージの相互交換、そしてマルチメディアフォンやスマートフォンのようにインターネットアクセス機能がある携帯なら、インターネットへの窓口を携帯電話が持っていることを考えれば、この普及率の増加がロシアの社会にもたらした影響の大きさが改めて確認できる。

続いてインド。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、インド)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、インド)

インドでは元々国土の広大さに加えて経済的な問題や地形の関係などから、電話系インフラの普及率は低いものだった。2000年当時の普及率は携帯で0.3%、固定でも3.1%でしかない。

それが固定電話は横ばいから漸減し、携帯は2005年あたりから急激に伸びを見せている。総務省のデータベース【「世界情報通信事情」のインドの項目】を見ると状況がある程度把握できるが、複数会社による競争の激化が、携帯電話普及率の向上に拍車をかけたと考えられる。

一方、2012年では携帯電話の普及率が大きな減少を示している。これは人口が急増したからではなく、加入者数が急減したのが原因。具体的にはプリペイド式SIMカードのうち長期間利用が無く、新規入金もされていないものについて、回線を切断(契約破棄)の措置をとったため。収益率改善の動きの一環とされている。もっともその後再び増加を示し、2018年では86.9%に達している。

次はインドネシア。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、インドネシア)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、インドネシア)

インドネシアは多くの島々で構成されている国土の構成上、固定系インフラの普及には困難が伴う。それでも固定電話の普及率は2010年にはピークとなる16.9%を示すほどとなったが、その後は減少。他方、携帯電話の普及率の上昇率は加速度的な動きを見せているのが分かる。技術革新や競争激化によるサービス料の値下げ、サービスそのものの向上など、裏付けする材料には事欠かない。ただし2014年以降は伸び率はやや鈍化。どうやら天井が見えてきた感がある。ところが2016年には大きく跳ね、それは2017年でも続いた。2014年12月以降、大手各社がLTEサービスを開始していることや、国ベースで4G網の整備に力を入れているのが奏功したのだろう。

そして2018年には大きな失速。これは2017年10月末からプリペイド式携帯電話の番号登録に関して規定が大幅に変更され、既存の利用者も再手続きが必要になり、住民登録番号にひもづけられた携帯電話番号の上限が基本的に3つまでに制限されたため。

次はブラジル。南米諸国ではBRICsの中で唯一含まれる国であり、日本との関係も深い。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、ブラジル)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、ブラジル)

ブラジルは2000年時点ではロシアに近い固定電話普及率を示している。一方で携帯電話はすでに1割超え。その後の伸び方は他国と比べるとやや緩やかなようにも見え、そして2014年をピークに値を落としているが、2018年時点では98.8%に達している。固定電話はほぼ横ばいで、2割前後を維持。他国と比べると減少する動きを見せなかったのが特徴的。これについて「世界情報通信事情」では、ケーブルテレビ事業者の躍進でシェアを拡大し、加入者数はむしろ漸増傾向にあると解説している。

2015年以降の携帯電話の値の減少については、カウント方法が変わったとの説明も無く、詳細は不明。景況感の後退が影響しているのか、あるいはLTEサービスの導入展開に伴う契約数の整理や、市場の飽和感が原因かもしれない。

最後にフィリピン。なおフィリピンは現時点で固定・携帯ともに2017年分が最新データとなっている。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、フィリピン)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、フィリピン)

伸び方のスタイルとしては、ブラジルやロシアよりは、インドネシアやインドに近い。固定電話の普及率は元々低く、時代を経てもさほど変化は無い。一方で携帯電話の普及率は上昇を継続中。同国の情報伝達のスピード、そしてそれに伴う社会構造へ確実に変化を与えているのは間違いない。

興味深いのは、他国のように2003年や2005年のような「節目」が無く、ほぼ一定度合いで上昇していること。インドネシア同様に島々で国が形成されていることもあり、携帯電話の必要性は昔から高かったものと考えられる。もっとも2013年の携帯電話の値は失速。これについて元資料でも「世界情報通信事情」でも特に解説は無く、詳細は不明。2017年も大きく落ちているが、こちらも原因は分からない。

携帯電話の普及率においては、グラフの形を見ると一部では緩やかさを見せつつあるものの、多くの国ではさらに上昇する気配が感じられる。また、数字の上では判断ができないが、SMSのみの携帯電話からスマートフォンに切り替え、インターネットに「はじめの一歩」を踏み出す人も確実に増加する。

この流れが各国にどのような変化をもたらすのか。少なくとも各国国内はもちろん、世界に向けた情報のやり取りの窓口が大きく開いたことは間違いない。ビジネス様式や各国の社会情勢にも小さからぬ、そして確実な影響を与えることだろう。

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