高齢者による犯罪の実情をさぐる(2019年公開版)

↑ 高齢者でも犯罪に手を染めてしまうことはある(筆者作成・撮影)。

高齢者でも聖人ではなく普通の人間である以上、衝動的に、あるいは自発的に罪を犯してしまうことがある。高齢者(今件では65歳以上)による犯罪の実情を、日本の高齢化の進行と今後に向けた施策などをまとめた内閣府発行の白書「高齢社会白書」の内容から再精査する。

今白書では高齢者による刑法犯の検挙人数などをまとめているが、その公開値を再整理したものが次の通りとなる。

↑ 高齢者による犯罪(包括罪種別刑法犯検挙人数、人)
↑ 高齢者による犯罪(包括罪種別刑法犯検挙人数、人)
↑ 高齢者の犯罪者率(人口10万人あたりの検挙人数、人)
↑ 高齢者の犯罪者率(人口10万人あたりの検挙人数、人)

検挙人数は2007年以降はほぼ横ばいで推移している。むしろ2013年のイレギュラー的な減り方を除けば、大体ここ数年は漸減していると表現しても問題はない。該当する高齢者人口が増加していることを考えれば、比率的には減少傾向にあると見てよいだろう。実際、高齢者の10万人あたりの検挙人数も2007年をピークとして、2011年にはイレギュラーな増加があったものの、おおよそわずかずつではあるが減少している。

ただしこの類の事例の常として、発生比率だけでなく、発生した件数そのものにも重点を置かねばならない。比率、総数が減っているとはいえ、高齢者だけでも年に4万件台の検挙数があり、それは今世紀初頭の2001年と比較すれば2倍強もの増加に違いない。

また各報道などでもよく取り上げられる「窃盗犯」(物品の盗取)について、件数、そして比率が増加していた点にも注目したい。これは多分に万引きによるところが大きい。ちなみに万引きは窃盗犯の一要件であり、万引きも窃盗には変わりない。

傾向としては2007年以降は検挙数全体が横ばいで推移しているものの、その中で「窃盗犯」の人員が増加していた。当然全検挙数に占める比率も増加することになる。ここ数年でようやく窃盗犯の数も横ばいから減少の兆しを見せはじめ、検挙数全体に占める窃盗犯の比率も減少に転じている。

↑ 高齢者の犯罪者率(高齢者の刑法犯検挙人数に占める窃盗犯の比率)
↑ 高齢者の犯罪者率(高齢者の刑法犯検挙人数に占める窃盗犯の比率)

2006年までは窃盗犯比率も減少していたが、奇しくも検挙数全体が横ばいに転じた2007年以降増加の動きを示し、2013年においては3/4近い73.7%が窃盗犯で占められるようになった。それ以降は少しずつ比率も落ちているが、高い値には違いない。シンプルな表現をすれば、警察に捕まった高齢者の7割強は窃盗犯となる。

一方で、積み重ねグラフ中では赤色に相当する粗暴犯(暴行、傷害、脅迫、恐喝が該当)が数、比率ともに増大しているのが目に留まる。高齢犯罪者の粗暴化とでも表現すべきか。

↑ 高齢者の犯罪者率(高齢者の刑法犯検挙人数に占める粗暴犯の比率および人数)
↑ 高齢者の犯罪者率(高齢者の刑法犯検挙人数に占める粗暴犯の比率および人数)

高齢者の万引き行為の背景は若年層から中年層までのそれとは異なる場合が多く、多分に孤独感や生活苦がトリガーとなっている。社会構造の全般的な変化が無い限り、今後も高齢化社会の進展とともに、万引き、そしてそれにより底上げされる窃盗犯の比率は上昇を見せるのは容易に想像ができる。行政側、特に地域社会を包括する自治体レベルにおいて、発生原因を見極め、多方面からの状況改善の施策が求められよう。

他方、原因の一つには病的状況も想定されるが、これは粗暴犯の増加にも結びつく話となる。多分に本人には罪の意識が無い以上、より難しい問題には違いない。

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