海外情勢や消費税率引き上げ後の不安さらに強まる…2019年9月景気ウォッチャー調査の実情をさぐる

↑ 消費税率の10%への引き上げ。直前の月となる2019年9月の景況感は。(写真:吉澤菜穂/アフロ)

現状は上昇、先行きは下落

内閣府は2019年10月8日付で2019年9月時点における景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」(※)の結果を発表した。その内容によれば現状判断DI(※)は前回月比で上昇、先行き判断DIは下落した。結果報告書によると基調判断は「このところ回復に弱い動きがみられる。なお、消費税率引上げに伴う駆込み需要が一部にみられる。先行きについては、消費税率引上げや海外情勢などに対する懸念がみられる」と示された。2019年2月分までは「緩やかな回復基調が続いている」で始まる文言だったことから、景況感がネガティブさを見せる形が3月分以降、7か月連続する形となっている。

2019年9月分の調査結果をまとめると次の通り。

・現状判断DIは前回月比プラス3.9ポイントの46.7。

 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」が増加、「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは45.7。

 →詳細項目は「住宅関連」「雇用関連」が下落。「雇用関連」のマイナス1.0ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無(「小売関連」が50.0)。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス2.8ポイントの36.9。

 →原数値では「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が減少、「やや悪くなる」「悪くなる」が増加。原数値DIは36.7。

 →詳細項目は「住宅関連」以外が下落。「非製造業」のマイナス4.8ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は皆無。

昨今では現状判断DI・先行き判断DIともに低迷傾向と表現できよう。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

昨今では現状判断DIは特需的な回復の動きを示しているが基準値の50.0以下であることには変わらず低迷中、先行き判断DIは急速に下落し低迷感が加速の中にあると表現できよう。特に先行き判断DIはリーマンショック後の2009年11月につけた38.5を下回り、消費税率が5%から8%に引き上げられた2014年4月の前月にあたる2014年3月につけた33.5に近づく勢いを示している。増税が景況感の先行きに対し、大きなマイナス要因となることを示す証拠に違いない。

DIの動きの中身

次に、現状・先行きそれぞれのDIについて、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(~2019年9月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の現状判断DI(~2019年9月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月の現状判断DIは合計で前回月から3.9ポイントのプラス。詳細項目では「小売関連」「サービス関連」が上昇。もっとも大きな上げ幅は「小売関連」の7.4ポイント。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は皆無。詳細は後述するが、ようやく直前月になって消費税率引き上げにかかわる駆け込み需要が一部ではあるが明らかな形で発生し、それが「小売関連」などにプラスの影響を与えている。

景気の先行き判断DIでは詳細項目のうち「住宅関連」のみが上昇。

↑ 景気の先行き判断DI(~2019年9月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の先行き判断DI(~2019年9月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は皆無。「非製造業」の下げ幅が4.8ポイントと大きなものとなっているが、具体的なコメントで確認した限りでは、消費税率引き上げや米中貿易摩擦への不安が大きな要因となっているようだ。

消費税率引き上げへの不安ますます強まる

報告書では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状

・消費税の引上げ前の駆け込み需要で今月は売上が前年比150%と大幅に伸長しており、特にテレビ、冷蔵庫、洗濯機等の大型家電の伸びが高い(家電量販店)。

・消費税増税前の買い込みで、日用品、酒がよく売れている(スーパー)。

・消費税の引上げを意識した買物が増えている。特に化粧品、婦人の冬物衣料の前倒し購入や、宝飾や時計の高額品が売上を伸ばしている(百貨店)。

・分譲住宅では、9月に入っても消費税増税前の駆け込み購入はみられず、増税後の住宅取得優遇策を選択する客の方が多い(住宅販売会社)。

■先行き

・キャッシュレスポイントなどの施策があるためか、9月よりも10-11月の予約が堅調である(観光型旅館)。

・外国人観光客の動きに陰りがみられ、前年並みの来場者数となった。また、日韓関係の悪化や香港情勢などの影響により、今後、ますます来場者数が減少することが懸念される(観光名所)。

・消費税増税に関して、軽減税率や各種緩和策が講じられるが、心理的には右肩下がりになる(コンビニ)。

・9月の反動で、10月の消費税増税後の売上は期待できない(一般小売店[家電])。

今年の9月は気温の上ではあまり目立った動きは無かったものの、台風による被害が甚大なものとなったが、少なくとも全国規模では景況感に影響を与えてはいないようだ。他方、米中貿易摩擦に加え、韓国や香港での情勢不安定化によって観光などで悪影響が生じている。10月に実施された消費税率引き上げについてだが、駆け込み需要の類は一部で確認ができる。一方でむしろ10月以降における、施策によるプラスの影響への期待の声もある。

企業関連では米中貿易摩擦の激化に伴う世界経済の後退感と、消費税率引き上げへの不安によって生じたものと思われる動きの実情が確認できる。

■現状

・消費税率の改定の関係で、印刷物の受注が増加している(出版・印刷・同関連産業)。

・公共工事、民間工事共に、動きが出てきた(建設業)。

■先行き

・米中貿易摩擦による影響は、底を打っている情報もあるが、中小企業へは、遅れて悪影響を及ぼされているかのように、いまだ底打ち感がない状況である(電気機械器具製造業)。

・消費税増税前の駆け込み需要がほとんどないまま、増税後には買い控えが出ると予想され、多くのメーカーでは生産調整の指示が出ている(輸送業)。

企業関連では消費税率引き上げと米中貿易摩擦でダブルパンチ状態にあるようだ。一方で現状判断の観点では特需的な動きもあるが、長続きするものでは無いのが残念なところ。

雇用関連では人材需給にネガティブな変化が生じている気配が見える。

■現状

・求人をけん引する製造業で、受注の見通し不安が続き、求人減が顕著となってきている(民間職業紹介機関)。

■先行き

・消費税増税が秒読み段階となり、求人側の採用意欲が下がっている。景気が上向く材料が見当たらない(職業安定所)。

DIの動向の限りではすでに景気のピークは過ぎたどころか不景気の中にある感は否めないのだが、雇用関連でもそれを裏付ける声が相次いでいる。景況感の先行き不安は企業の行動の足かせとなり、求人意欲を縮小させてしまうようだ。

今件のコメントで全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計20件、先行き計27件、合わせて47件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好12件、やや良好15件、不変72件、やや悪い64件、悪い12件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでもないことが統計からはうかがえる。ただこの数か月は「やや悪い」の件数が増えているのが目に留まる。

消費税率の引き上げに関しては先行きのコメントにおいて「消費税」だけで786件もの言及が確認できる(前回月は686件)。景況感対策の施策への期待の声もあるが、不安や懸念といったネガティブな内容が圧倒的に多く、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見受けられず、これが現状なのだろう。

米中貿易摩擦に関しては先行きのコメントにおいて「中国」で23件、「米中」で44件が確認できる。こちらもネガティブな内容がほとんどで、景況感の足を引っ張っていることは間違いない。特に製造業でマイナスの影響が顕著化しているのが目に留まる。今後、米中間の対立が受注量にさらなる影響をおよぼすことは十分に考えられよう。

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※景気ウォッチャー調査

※DI

内閣府が毎月発表している、毎月月末に調査が行われ、翌月に統計値や各種分析が発表される、日本全体および地域毎の景気動向を的確・迅速に把握するための調査。北海道、東北、北関東、南関東、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の12地域を対象とし、経済活動の動向を敏感に反映する傾向が強い業種などから2050人を選定し、調査の対象としている。分析と解説には主にDI(diffusion index・景気動向指数。3か月前との比較を用いて指数的に計算される。50%が「悪化」「回復」の境目・基準値で、例えば全員が「(3か月前と比べて)回復している」と答えれば100%、全員が「悪化」と答えれば0%となる。本文中に用いられている値は原則として、季節動向の修正が加えられた季節調整済みの値である)が用いられている。現場の声を反映しているため、市場心理・マインドが確認しやすい統計である。

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