新聞の販売部数などの推移をさぐる(2019年前期まで版)

↑ 新聞の販売部数の動向は?(写真:アフロ)

主要5紙販売部数推移

新聞の販売部数は減少の一途をたどっている。それではその減少ぶりはどのような実情なのだろうか。主要全国紙(読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞(日経新聞)・産経新聞)の朝刊販売部数の動向について、日本ABC協会発行による「新聞発行社レポート 半期」の掲載値から確認する。

最初に示すのはデータが取得できる2005年前期以降の5紙における朝刊の発行部数。産経新聞は一部データが欠けているが、可能な限り補完している。

 ↑ 主要全国紙の朝刊販売部数(万部)
↑ 主要全国紙の朝刊販売部数(万部)

読売新聞はかつて販売部数1000万部超を社是的なコピーとして掲げていたが、2011年前期でこれを割り込み、以後復活は果たしていない。とはいえ、元々部数が多かったこともあるが、大きな変化は生じていなかった。ところが2014年に入ってから小さからぬ下落が生じている。踊り場的な期間もあったが、下落傾向は継続中。他方、朝日新聞は2010年前後から、毎日新聞は2007年後半から漸次減少が起きている。特に毎日新聞はここ1、2年の減少幅の大きさから、そう遠くないうちに日経新聞と部数順位が入れ替わる可能性が否定できない状態となっている。

日経新聞は現状維持、さらには増加する機会もあったものの、2011年以降はいくぶんの下落。ただし2014年に入ってからはほぼ横ばいの動きに移行している。電子版へのシフトが比較的堅調であり、紙媒体の新聞と電子版の購読者を合わせて「コンテンツの購読者」との視点で考えれば、実質的にはむしろプラス化しているとも解釈できる。ただしこの数年ほどの間に大きな下落への動きが確認できることから、電子版へのシフトが加速しているか、紙媒体版の日経新聞離れが起きている可能性がある。

産経新聞はやや気になる動きが目に留まる。2008年後期から2009年前期にかけて、ダイナミックな下落を示している。これについては当然産経新聞側から正式な発表は無いものの、いわゆる「押し紙問題」に関して、他社に先駆けて解消したのが原因であると複数の報道が伝えている。これが事実とすれば、その後の産経新聞における部数の増減傾向が、他社と異なる動きを示しているのもある程度納得が行く。もっともここ1、2年は他紙同様に下落の動きにあるのだが。

前期比動向

元々各紙とも販売部数が大きいため、その変移だけでは動向が把握しにくいのも否めない。そこでいくつか切り口を変え、その流れを確認していくことにする。まずは前期比。半年期のみのグラフは半年ごとの定点観測記事で掲載しているが、その値をつなぎ合わせたものは、上記で触れている通り産経新聞がイレギュラー的な値を示しており、やや見難いものとなったため、産経新聞を除いた版も併記する。

↑ 主要全国紙の朝刊販売部数(前期比)
↑ 主要全国紙の朝刊販売部数(前期比)
↑ 主要全国紙の朝刊販売部数(除く産経、前期比)
↑ 主要全国紙の朝刊販売部数(除く産経、前期比)

要は前回(半年前)販売数と比べてどれだけの割合で増えたか、減ったかを示すものだが、基準となるゼロ%より下の領域で多くの線が行き来していることから分かる通り、新聞の販売部数は総じて減少傾向にある。また個別の新聞におけるさまざまな傾向が見えてくる。

2014年における読売新聞の下落ぶりや、2013年後期の日経新聞の下げ方、そして2016年前期の毎日新聞の急降下ぶりなど、先の産経新聞の大きな下落同様に何らかの事案が影響したと考えられる大きな下落の動きも見られる。あるいは大きな動きを示した各紙は「押し紙」に関し、何らかの施策を講じた可能性もある。ただし産経新聞の2009年における下げ方が「押し紙」制度の廃止によるものならば、他社も同レベルの下げ幅(マイナス10%超)を示してもおかしくは無く、それに届いていない実態を併せ見るに、単なる購読者離れと解釈した方が確からしい感はある。

他方、読売新聞は2019年1月から、日経新聞では2017年11月から月ぎめ購読料を値上げしている。値上げの告知は当然それよりも前になるので、読売新聞が2018年後期から、日経新聞が2017年後期から大きな下落を示したのは、値上げによるものとの見方もできる。一方で毎日新聞の2017年後期以降の加速のついた下落ぶりは、月ぎめ購読料が変更されていない以上、値上げによるものではなく、何か別の理由があるものと考えられる。

朝日新聞における2014年後期から2015年前期にかけて生じた大きな下げは、2014年後半期に相次ぎ露呈した不祥事と、それへの対応・結果によるところが大きい。谷のピークは越えたものの下げ幅が大きなままで推移しているのは、新聞の読者や読者予備軍からの認識として、根本的な問題は解決していない、購読価値の回復はなされていないとする人が多数に及んでいるのだろう。またそれを裏付ける品質の実情も、現状に至るまで否定はできない。むしろさらに悪化しているとの指摘も少なくない。

続いて比率ではなく単純な販売部数の変移を確認する。こちらは元々部数が少ない新聞ほど増減する数も少なく、多い新聞ほど何かの影響を受けた時に増減する部数も多くなるので、一概に「変化部数が多い」=「大きな影響を受けた」とは言い切れないことに注意。元々の部数が大きければ、統計上のぶれによって生じる増減数も大きなものとなる。とはいえ、大部数を抱える新聞でも、10万単位での部数が半年で増減すれば、その絶対数に対する衝撃は小さくあるまい。

↑ 主要全国紙の朝刊販売部数(増減部数、前期比、万部)
↑ 主要全国紙の朝刊販売部数(増減部数、前期比、万部)

産経新聞の押し紙問題解消に伴うものと思われる部数の減少が非常に大きかったこと(減少部数そのものは後の読売新聞や朝日新聞と同レベルだが、産経新聞の元々の総販売部数の少なさを考えれば大きな影響であることは、上記の比率推移からも分かる)、その直後に起きている毎日新聞の部数減がかなりの規模に上ること、朝日新聞も10万部単位で部数を減らす半期が複数回生じていること、そして2014年後期以降の朝日新聞と2014年、そして2015年前期までにわたる読売新聞の減少部数がいかに大きいものであるかが把握できる。また2018年後期以降の読売新聞の減り方の大きさも改めて認識できる。

全体的な流れとしては、産経新聞のイレギュラーな動きをのぞけば、2010年あたりから新聞の販売部数の減少傾向が起き、以降はうねりを見せながら段々とその勢いを増している雰囲気がつかみ取れる。プラスとなることはあっても、5万部を超えた増加の動きは(少なくとも今件の観測期間内では)皆無である。

とりわけ震災以降は新聞の存在意義そのものが問われる事案が相次いでいるが、それがどのような影響を及ぼしているのか、あるいは影響していないのか、朝刊の販売部数動向でそれが透けて見えてくる、かもしれない。あるいはほぼ同時期に進行している、デジタル系の技術革新と浸透、特にスマートフォンの普及の影響の方が大きいのかもしれないが。

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