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空き家問題最大の「その他の空き家」を都道府県別にさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ まるで廃墟のような家も「その他の空き家」。(写真:アフロ)

空き家には「二次的住宅」「賃貸用」「売却用」「その他」の4種類があるが、最近急増し問題視されているのは「その他」に属する空き家。その都道府県別の実情を総務省統計局が2019年4月に発表した、2018年時点における住宅・土地統計調査(※)の速報集計結果から確認する。

次に示すのは都道府県別における、「その他の住宅」の空き家率状況。これは全住宅の中で「その他の住宅」区分の空き家が何%あるかを示している。例えば千葉県は4.76%と示されているが、これは千葉県にある居住用住宅全体(空き家のみではない)のうち、4.76%が「その他住宅」区分の住宅としての空き家であることを示している。

なお「その他の住宅」区分の住宅とは、「別荘や一時的宿泊場のような二次的住宅」「賃貸用」「売却用」ではない住宅。具体的には「転勤・入院などで居住世帯が長期にわたって不在となった住宅」「建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅」「建て壊し・撤去費用が捻出できずに放置されている住宅」「税金対策のために放置されている住宅」などを意味する。昨今問題視されている「空き家問題」では、この「その他住宅」のうち後者2つ、金銭的問題で半ば放置されている住宅(放置的空き家とでも呼ぶべきだろうか)の増加が問題視されている。

↑ 空き家率(全住宅比、その他の住宅限定、都道府県別)(2018年)
↑ 空き家率(全住宅比、その他の住宅限定、都道府県別)(2018年)

無論「その他の住宅」の空き家すべてが「放置的空き家」ではない。しかし少なくとも第三者がすぐに入居できない空き家には違いない。そのような空き家が全国では5.57%、地域によっては1割を超えているのが確認できる。

全体としては大都市圏、特に関東では低い値が示されている。また概して東日本より西日本の方が高めで、10%超えは和歌山県、島根県、徳島県、愛媛県、高知県、鹿児島県とすべて西日本圏に属する(和歌山はやや微妙だが)。

これを値の高低順に並べ替え、上位陣・下位陣の序列でグラフ化したのが次の図。

↑ 空き家率(全住宅比、その他の住宅限定、上位陣、都道府県別)(2018年)
↑ 空き家率(全住宅比、その他の住宅限定、上位陣、都道府県別)(2018年)
↑ 空き家率(全住宅比、その他の住宅限定、下位陣、都道府県別)(2018年)
↑ 空き家率(全住宅比、その他の住宅限定、下位陣、都道府県別)(2018年)

全体のグラフでも触れているが、高知県、鹿児島県、和歌山県などの西日本地域で1割を超える値を示している。これは全住宅のうち1割以上が「即時居住可能”ではない”空き家」として存在していることを意味する。全部が全部「放置的空き家」では無いだろうが、居住地域の空洞化が懸念される。

他方東京都の2.35%は飛び切りの低さだが、それ以外でも神奈川県や埼玉県などの関東圏、大阪府や愛知県などの大都市圏では比較的低い値に留まっている。立地条件もよいことから、「放置的空き家」的な状況に追い込まれたとしても、賃貸住宅などへの建て替え需要も多分に生まれるからだろう。

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※住宅・土地統計調査

5年毎に行われているもので、今回発表分は2018年10月1日時点のデータを計測したもの。約22万単位区・計約370万住宅・世帯を対象に、対象世帯に調査員が調査票を配布・後日回収する方式で行われている。今件における「空き家」とは、居住世帯が無い住宅のうち、建築中や一時現在者のみの住宅を除いたもので、賃貸用・売却用・二次的住宅・その他の類すべてが含まれている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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