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一戸建てか共同住宅か…住宅の建て方の内情をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 最近ではトレンドの高層住宅。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

総務省統計局が2019年4月に発表した、2018年時点における住宅・土地統計調査(※)の速報集計結果によると、日本における住宅の建て方としては一戸建ての割合が減り、共同住宅の割合が増加する傾向にあることがわかった。今回はその内情を確認していく。

住宅の建て方にはいわゆる一軒家こと「一戸建て」、木造平屋で基本的に1階建の建物が複数に分かれて2軒以上の居住区画を持ち、それぞれ独立した玄関を持つ「長屋建て」、そしてアパートやマンションなどの「共同住宅」などが存在する。個々の住宅の建て方別の戸数比率の動向を見比べたのが次のグラフ。

↑ 住宅の建て方別住宅割合(全国)
↑ 住宅の建て方別住宅割合(全国)

1958年には16.6%を占めていた長屋建ても直近の2018年では2.6%でしかない一方、5.6%に留まっていた共同住宅は4割以上に達しており、一戸建てに迫る勢いを見せている。一戸建ての価格の上昇、あるいは「手に届きにくい」存在になったのか、それとも居住に関するライフスタイルに変化が生じたのかはこのグラフからだけでは分からないが、ともあれ住宅の建築様式に大きな動きがあることは確か。一戸建て・共同住宅にはそれぞれに長所・短所があるが、昨今ではセキュリティの問題やメンテナンスの容易さから、共同住宅の方がお手軽さの点で上にある感は否めない。

それでは増加の一途をたどる「共同住宅」においては、どのような変化が見られるのだろうか。階数別の住宅数推移を見ると、1・2階建の「低層アパート・マンション」形式の伸びが緩やかなのに対し、3~5階の中層、そして6階以上の高層共同住宅が大きく伸びているのが分かる。

↑ 共同住宅の階数別住宅数(全国、万戸)
↑ 共同住宅の階数別住宅数(全国、万戸)

3~5階の中層共同住宅は一定数ずつ順調に伸びているが、その一方で6階以上の高層共同住宅は加速度的な伸びを示している。2003年には1・2階の低層共同住宅の数を抜き、中層に迫る勢い。その分3~5階の中層住宅の伸びは大人しいものになりつつある。

これをさらに細かく区分し、全体に占める割合でグラフを生成したのが次の図。

↑ 共同住宅の階数別割合(全国、1968・73年は11~14階・15階以上の計測無し)
↑ 共同住宅の階数別割合(全国、1968・73年は11~14階・15階以上の計測無し)

1968・1973年は11~14階・15階以上の計測データが確認できずグラフにも反映されていないが、

・1~2階の低層平屋建て型の共同住宅は比率的には減少中(※絶対数は緩やかながらも増加)

・3~5階の中層共同住宅のピークは1993年。以後は緩やかに比率が減少している(※絶対数は増加している)

・6~10階の高層共同住宅だけでなく、11~14階、さらには15階以上の高高層共同住宅も着実に割合を増加させている。

などの傾向が把握できる。賃貸物件・分譲マンションの需要としては「交通の便がよい」「駅に近い」などの立地条件を求める声が大きい。そのような好条件の場所に少しでも多くの物件を確保するためには、必然的に高層化が必要となる(同じ場所に1階建てと50階建ての共同住宅を建てた場合、単純計算では確保できる住宅戸数は50倍も違う。実際には共用部分やエレベーターの利用面積も異なるので、もう少し倍率は低くなるが)。自然の摂理により、高層共同住宅の戸数が増加しているのだろう。

他方2013年から直近の2018年においては、ほとんど比率に違いが生じていない。共同住宅の階数的構造変化にストップがかかったのかもしれない。

高層(共同)住宅においては、6階以上は義務、3階から5階建ては努力目標としてエレベーターの設置が義務付けられている。また入居者の高齢化に伴い、エレベーターを含めたバリアフリー対策の需要も高まりを見せている。

今後さらに共同住宅の高層化が続けば、高層共同住宅ならではの環境整備の拡充が求められ、セールスポイントにもなるに違いない。

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※住宅・土地統計調査

5年毎に行われているもので、今回発表分は2018年10月1日時点のデータを計測したもの。約22万単位区・計約370万住宅・世帯を対象に、対象世帯に調査員が調査票を配布・後日回収する方式で行われている。今件における「空き家」とは、居住世帯が無い住宅のうち、建築中や一時現在者のみの住宅を除いたもので、賃貸用・売却用・二次的住宅・その他の類すべてが含まれている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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