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どこの国でも公的年金がトップ…老後の主な収入源の国際比較をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 高齢者の収入源。その実態は。日本や諸外国の実情を確認する。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

どの国も「生活の主軸は公的年金」

心身ともに衰え、現役世代のような就業対価が得にくくなる高齢層でも、日々の生活には資財の消費は欠かせない。それではその年齢階層では、主にどのような収入源を頼りにして暮らしているのだろうか。内閣府が2016年5月に発表した高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(※)の最新版から、日本や諸外国の実情を確認する。

次に示すのは現在の生活において何を主な収入源にしているか、択一回答で答えてもらった結果。厳密には「蓄財引出(預貯金などの引き出し)」は収入とは別物であるが、今調査では同一のものとして選択肢に加えている。

↑ 生活の主な収入源(60歳以上、択一回答、国別)(2015年)
↑ 生活の主な収入源(60歳以上、択一回答、国別)(2015年)

日本に限らず今調査の対象国ではいずれも、公的年金を主な収入源としている人がもっとも多く7割前後。アメリカ合衆国では5割強とやや低めだが、その分私的年金の比率が高くなっている。なお今件はあくまでも「主な」であり、例えば日本の公的年金における値は70.8%だが、これは「公的年金を収入源としている人は7割のみ」を意味しない。例えば就業収入がメインで、公的年金がサブの人もいるだろう。

公的年金以外では就業収入の人が2割前後。ただしドイツは約1割に留まってる。それ以外の蓄財の引き出しや財産収入(株式運用・配当や、賃貸住宅の所有による家賃収入など)などは数%のレベル。補助的に取得している人は多数に上ることは容易に想像できるが、メインとしている人はごくわずかでしかない。

今件を日本に絞り、年齢階層別に見たのが次のグラフ。

↑ 生活の主な収入源(日本、60歳以上、択一回答、年齢階層別)(2015年)
↑ 生活の主な収入源(日本、60歳以上、択一回答、年齢階層別)(2015年)

60代前半はまだ定年退職を迎えていない可能性、あるいは一度退職した上で嘱託などとして再就職している事例も多々あることから、2/3近くが就業収入を主な糧としている。公的年金がメインの人は1/4程度でしかない。これが60代後半になると、就業収入をメインとする人は3割足らずとなる。見方を変えれば、60代後半でも就業を続けて生活の主な支えにしている人が1/4強もいることになる。

70代に入るとさすがに就業収入のメイン回答者は1割前後に減る。公的年金を主軸とし、就業者は就業収入、そして蓄財の引き出しで生活をまかなっている。サブ、補完的な観点で財産収入や子供からの援助を充てている人はそれなりにいるはずだが、メインの人は誤差の範囲。

年齢階層別に見ると

上位を占めた公的年金と就業収入について、国別かつ年齢階層別に区分したのが次以降のグラフ。まずは公的年金だが、日本同様他国でも60代前半では少なめ、60代後半から値が高めになる。

↑ 生活の主な収入源(60歳以上、択一回答、「公的年金」回答率、国別・年齢階層別)(2015年)
↑ 生活の主な収入源(60歳以上、択一回答、「公的年金」回答率、国別・年齢階層別)(2015年)

アメリカ合衆国では全体に値が低め。アメリカ合衆国をのぞけば、70代に入ると8割以上が公的年金をメインとして生活していることになる。

一方就業収入の状況は次の通り。

↑ 生活の主な収入源(60歳以上、択一回答、「就業収入」回答率、国別・年齢階層別)(2015年)
↑ 生活の主な収入源(60歳以上、択一回答、「就業収入」回答率、国別・年齢階層別)(2015年)

その就業収入だが、60代前半の時点で一番高いのはスウェーデンで2/3超。日本がそれに続き6割強。次いでアメリカ合衆国の5割強、ドイツの1/3強と続く。年を取るに連れて減少していくのはどこの国も同じだが、ドイツでは60代後半、スウェーデンでは70代前半で事実上ゼロに等しい状況となるのに対し、日米では年上でもなお「就業収入が主な収入源」と回答する人が一定率存在する。特にアメリカ合衆国では80代に入っても前半で8.1%、後半以降でも4.9%もの人が該当している。国の制度や就業スタイルの違い、高齢者の就業に対する社会の認識の差異の結果によるものだが、高齢者の生活様式を他国との比較で確認する際に、留意しておくにこしたことはあるまい。

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※高齢者の生活と意識に関する国際比較調査

今調査は5年毎に行われているもので、最新分は2015年9月から12月にかけて日本、アメリカ合衆国、ドイツ、スウェーデンにおいて、60歳以上の男女(老人ホームなどの施設入所者は除く)に対して調査員による個別面接聴取方式によって行われたもので、有効回答数は各国とも1000件強。それぞれ男女別・年齢階層別・地域・都市規模などを基準にウェイトバックが行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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