年齢階層別のインターネット利用率をさぐる(2019年公開版)
日常生活への浸透、機能拡大による利便性の向上などの変化を受け、インターネットの利用層は、老若男女を問わず拡大中。その実情を総務省が2019年5月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値から確認する。
今回発表された最新版の「通信利用動向調査」によれば、2018年時点のインターネットの人口普及率(過去1年間にインターネットを一度でも利用したことがある人の率)は79.8%・利用者人口は9542万人との値が出ている。
これを直近5年分について、年齢階層別に確認したのが次のグラフ。「全体で8割近くとはやや少なくないか?」との印象を持つ人もいるだろうが、年齢区分で見ると13歳以降は50代まで、8割どころか9割強の利用率なのが確認できる。
6~12歳が6割台に留まっているのは、まだ幼い状態の人も含まれ、またリスクを考えれば仕方が無い。一方、50代以降では利用率は漸減し、60歳以降になると値の減少度合いが大きなものとなる。高齢層ほどインターネットの利用を避ける傾向にあることは、これまで数多くの調査資料でも明らかにされている通りで、今回の結果も納得がいく。
その理由までは今件資料だけでは特定できないが、経年による視聴覚の衰えの問題や、利用の際に覚えねばならないことが多く難儀させられる、さらには「新しい物事への挑戦」には何事も失敗がつきものだが、その失敗を恐れる(主に時間のロスの観点で)傾向が強いこと、そして昨今浸透しつつあるスマートフォンやタブレット型端末におけるタッチパネルは苦手(指先が乾燥気味で反応しにくい)などが考えられる。また現状の生活環境においてインターネットが要らない、メリットとデメリットを比較した場合に必要性を感じない人も多分にいるのも要因だろう。
最近では高齢層の大きな伸びも確認されている。上記グラフでもその伸び方はよくわかるが、それをさらに対象期間を拡大したのが次のグラフ。さすがに80歳以上はやや凸凹があり、直近数年では逆に減少の動きすら見受けられるものの、60歳以降はおおよそ増加を見せている。
元々伸び代が大きいこともあるが、若年層に追いつき追い越せとばかりの勢いが感じられる。ただしここ数年は伸び率が鈍化、さらには頭打ちになっている感はある。また80歳以上はほぼ横ばい。
50代までと60代以降にやや大きな差異が生じるのは、50代までは業務としてインターネットの利用が求められる事例が多いからに他ならない。経年による身体機能の衰えで利用ができなくなる事例をのぞけば、それらの人達は定年退職を迎えても(60代を過ぎても)インターネットは利用し続けるはず。高齢層の利用は環境の変化とインターネット「世代」の年齢の積み上げ、二つの要素で底上げされていく。
このままの勢いが続けば、この数年のうちに「インターネットは若者のツール。高齢層には関係の無い話」といった、世間の一部で語られている、常識扱いされている言い回しも、過去のものとなりそうだ。いや、すでに70代でも過半数が利用している以上、すでに過去のものと認識しても問題は無さそうだが。
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※通信利用動向調査
2018年分は2018年10~12月に、「世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に」「企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に」対して、郵送による調査票の配布および回収の形式によって行われている(企業向けは一部オンラインでも実施されている)。有効回答数はそれぞれ1万6255世帯(4万2744人)、2119企業。世帯調査における調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。
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