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高齢者のインターネットアクセス機器の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ シニアも気軽にインターネットライフ。その実情は。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・全体ではスマートフォンによるインターネット利用者は54.2%だが、60代前半では44.4%。60代後半になると31.3%にまで減る(2017年)。

・パソコンによるインターネットの利用が60歳以降のすべての年齢階層区分で一番多い。従来型携帯電話の利用率も高く、70代後半以降はスマートフォンの利用率すら超える。

団塊世代が定年退職を迎え、人口構成比率上でもさらに高齢層の割合が増加し、高齢社会化が進む中で、高齢層のインターネット利用状況に注目が集まりつつある。就業時と比べてプライベートの時間を多く取れるメリットがある一方、新しい技術には腰が引ける傾向がしばしば見受けられること、さらには身体的な老化に伴い操作に難儀する事例もあることなど、年齢階層間のギャップの原因となる点も指摘されている。今回は総務省が2018年5月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に、高齢者がどのような機器を使ってインターネットをしているかを確認する。

今調査ではパソコンでインターネットを利用している人は48.7%、携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォンの双方)でインターネットへのアクセスをしている人は62.6%に達している。

↑ インターネット機器としての個人の機器利用率(全体比、パソコンと携帯電話、年齢階層別)(2017年)
↑ インターネット機器としての個人の機器利用率(全体比、パソコンと携帯電話、年齢階層別)(2017年)

次に示すのは60歳以上に限定して年齢区分を細分化し、携帯電話を従来型携帯電話とスマートフォンに分割し、インターネットを利用する際の機器の利用実情を確認したグラフ。他にも主要なネットアクセス機器も併記し、利用実情を把握する。「6歳以上全体」とは調査対象母集団全体のこと。このグラフでは60歳以上の年齢階層がメインとなっており、単に「全体」とすると60歳以上全体と誤解する可能性があることから、あえてこの表記にしている。

↑ インターネット機器利用率(年齢階層別(一部))(2017年)
↑ インターネット機器利用率(年齢階層別(一部))(2017年)

パソコン経由の利用が60代以上のすべての年齢階層でトップ。パソコンの利用率が高いのは、現役世代の時に使っていた端末を利用し続けている、技術が流用できるのに加え、大きな画面で操作できるため視力が落ちても安心して使えるからだと考えられる。入力時に小さなタッチパネルを使わなくても済むのもメリットに違いない。

全体ではスマートフォンによるインターネット利用者は54.2%と半数を超えているが、60代前半では44.4%と半数を割り込む。そして60代後半以降はさらに値が落ちていく。また従来型携帯電話の利用率はそれなりに高く、60代から70代までは全体の平均を上回る利用率を示している。さらに70代後半以降は従来型携帯電話の利用率がスマートフォンを抜いている。これは「今まで使っていた従来型携帯をそのまま愛用し続けている」「スマートフォンへ買い替えをすることにより、多くの新しい操作を覚えるのは面倒」「メールや簡単なソーシャルメディアへのアクセスができれば十分」など、シニア側の利用実状が理由であると考えられる。

「メールや簡単なソーシャルメディアへのアクセスのみで十分ならば、どのみちすべての機能が使える、新型のスマートフォンを従来型携帯電話から買い替えても、特に弊害は無いのでは」との意見もあるだろう。スマートフォンでもそれらのサービスは十分以上に利用できる。しかしスマートフォンは従来型携帯電話と比べて多機能=覚えねばならないことが多い。その上、タッチパネル製品が使いにくい(高齢者は指先が乾燥気味で反応しにくい)など、高齢層ならではの問題点が、スマートフォンを忌避する理由として挙げられる。さらに豊富な機能を使わなくても料金体系の上で、スマートフォンは従来型携帯電話と比べて割高になるのも、シニア層でスマートフォンが敬遠される一因でもある。

もっとも昨今ではいわゆる「格安スマホ」の展開により、料金面でのスマートフォンのハードルは以前よりも低くなりつつある。ただしその分、普通のスマートフォンと比べて「格安スマホ」は利用時のハードルが高いため、高齢層は普通のスマートフォンよりもより一層難儀するかもしれない。

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※通信利用動向調査

2017年分は2017年11月~12月に世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送による調査票の配布および回収の形式によって行われている(企業向けは一部オンラインでも実施)。有効回答数はそれぞれ1万6117世帯(4万1752人)、2592企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。過去もほぼ同様の条件下で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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