初任給の実情と推移をさぐる(2019年公開版)

↑ もらって嬉しい初任給。その実情は。(写真:アフロ)

男女・学歴別の初任給の実情

人生で一度しか得られないものであり、多くの人にとっては一生忘れ難い経験となる、初任給。その相場の実情を2019年3月に厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査の報告書から確認する。

今回検証する初任給とは、新規学卒者(各種類学校を卒業してそのまま就職した人。いわゆる就職浪人をした人を除く)がその企業で初めて取得した「賃金(所定内給与額)」から通勤手当を除いた額。企業規模の別は精査せず、すべての規模を勘案した平均値を用いる。また「所定内給与額」とは基本給に家族手当などを足したもの、つまり通常はほぼ固定して受け取れる額を意味する。

まずは直近分となる2018年における、学歴・男女別の初任給状況。

↑ 新規学卒者の初任給(最終学歴別・男女別、万円)(2018年)
↑ 新規学卒者の初任給(最終学歴別・男女別、万円)(2018年)

女性よりも男性、低学歴よりも高学歴の方が給与は高い傾向があるので、初任給も当然高いものとなる。初任給の時点ですでに数%の差が生じていることになる。もっともこの初任給は当然就業できた人における平均値で、就職率とはまた別の話。

続いてこれを経年推移で確認していく。賃金構造基本統計調査では現在時系列で1976年以降の初任給が確認できる。ただし大学院・修士課程修了に関しては2005年以降のものとなる。これらの値を男女別にまとめ、グラフとして生成したのが次の図。

↑ 新規学卒者の初任給(男性、最終学歴別、万円)
↑ 新規学卒者の初任給(男性、最終学歴別、万円)
↑ 新規学卒者の初任給(女性、最終学歴別、万円)
↑ 新規学卒者の初任給(女性、最終学歴別、万円)

男女とも学歴が上になるほど初任給も高く、そして学歴間の額面上の差異にはあまり変化が生じていないことが分かる。それでも1990年代前半、バブル崩壊前後までは全体の額が大きく上昇するのに併せて、差異も開いていった。しかし1990年代後半以降は上昇度合いが非常に緩やかなものとなり、差もほとんど一定の額を維持するようになる。

物価動向を勘案すると

物価の上下とともにお金の価値も変わってくる。初任給もまた同じ。そこで物価動向を加味した上で、初任給動向を再精査する。総務省統計局が発表している消費者物価指数を基に、直近の2018年における消費者物価指数を基準値として、過去の各額面を修正していく。いわゆるウェイトバックを行う。要は各過去の年において、2018年当時の物価水準ならばどれほどの額だったかを計算した結果。

↑ 新規学卒者の初任給(男性、消費者物価指数考慮、最終学歴別、万円)
↑ 新規学卒者の初任給(男性、消費者物価指数考慮、最終学歴別、万円)
↑ 新規学卒者の初任給(女性、消費者物価指数考慮、最終学歴別、万円)
↑ 新規学卒者の初任給(女性、消費者物価指数考慮、最終学歴別、万円)

物価が上昇したバブル崩壊前後までにおける上昇度合いは緩やかなものとなり、むしろ1980年代前半は一時的に実質初任給が減少した時期もあるほど。その後はほんのわずかずつではあるが上昇を示している。ただし2011年以降は物価上昇に額の上昇が追い付いていない、実額でも減少した年もあることから、横ばいから下落の動きに転じている。ここ数年で再び上昇に転じたのは幸いだが。

取得可能なもっとも古い値、大学院などは2005年、それ以外は1976年における初任給と、直近の2018年のそれとを消費者物価指数を考慮した上の額で比較する。

↑ 新規学卒者の初任給(消費者物価指数考慮、最終学歴別・男女別、万円)(1976年(大学院~は2005年)と2018年)
↑ 新規学卒者の初任給(消費者物価指数考慮、最終学歴別・男女別、万円)(1976年(大学院~は2005年)と2018年)

大学院などは比較対象となる年が10年程度しか離れていないのでほとんど差が生じていないが、それ以外は2割台から3割台もの底上げが生じている。可処分所得となるとまた別の話となるが、少なくとも初任給の上ではそれだけ得られる額が増えていることに違いは無い。

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