年齢階層別に平均賃金の推移をさぐる(2019年公開版)

↑ 賃金と年齢の関係を具体的な数字で確認。(写真:アフロ)

男女で異なる年功序列制のような賃金実態

以前と比べると随分と慣習としては薄れてきたが、それでもなお根強く残っているのが「年功序列制」。年を取れば誰もが昇進し、給与も増えていく仕組みだが、そのような制度が明確化されていなくとも、同じ職場で経歴・経験を積めば有能な人材となり、その実力にあった評価がされれば、次第に昇格・給与の上乗せは望める。日本ではどの程度、年齢と賃金との間に関係があるのだろうか。厚生労働省が2019年3月に発表した賃金構造基本統計調査の報告書から、その実情を確認する。

今回検証する賃金とは「賃金(所定内給与額)」を意味する。これは基本給に家族手当などを足したもので、通常はほぼ固定して受け取れる額を意味する。また今件はフルタイム労働者を意味する「一般労働者」を対象とし、フルタイムなら契約社員や派遣社員も該当する。ただしパートやアルバイトは「一般労働者」では無く「短時間労働者」なので、検証対象外となる。

まずは2018年における男女別・年齢階層別の平均賃金。

↑ 年齢階層別平均賃金(男女別、千円)(2018年)
↑ 年齢階層別平均賃金(男女別、千円)(2018年)

男性が50代前半まで年功序列制的に大きく上昇、以降は下落傾向の動きをしている。女性もピークは男性と同じ50代前半だが、上げ幅は小さく、40代前半でほぼ上昇が止まっているような状態。他方、男女とも50代後半以降、特に60代前半に大きな減少を示しているのは、(早期)退職で一度離職し、非正規社員として再雇用される事例が増えてくるからだと考えられる。

女性は男性と比べれば年齢階層間の差異は小さい。非正規社員率が男性と比べて高いことが影響している。

続いて同じ区分で前年比を計算したもの。

↑ 年齢階層別平均賃金(前年比、男女別)(2018年)
↑ 年齢階層別平均賃金(前年比、男女別)(2018年)

60代後半の女性で大きなマイナスが生じているが、これは前年におけるイレギュラー的なプラスの反動によるもの。それ以外ではおおよそどの属性でもプラスを示しているが、特に20代と50代後半で大きな上昇が確認できる。新入社員と、早期退職制度で一度退職し嘱託などで再就職した人たちへの待遇がひときわアップしたということだろう。

前年2017年では中年層でマイナス値を示す傾向があり、世代間格差の一端を見せられるような数字が出ていた。だが2018年では振れ幅ほど小さいものの、中年層でもプラスを計上しており、一安心といったところ。

一部の年齢階層を経年推移で

続いて過去のデータを絡めた、平均賃金の経年推移を年齢階層別に確認する。男女のデータはそれぞれ存在するが、すべてを精査するとあまりにも雑多なものとなるので、男性に焦点を絞る。まずは一番気になる人が多いに違い無い20代前半について。

↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、千円)
↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、千円)
↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、前年比)
↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、前年比)

金額の絶対額ではこの20年強の間ほとんど変化が無く、100円玉のやり取り程度の変化に留まっていた。しかし2014年以降は明らかに上昇の動きにあり、2015年以降は最高額を更新し続けている。

2007年から2008年では景気動向(サブプライムローンショックにはじまる「金融危機」は2007年夏から)に反して上昇しているが、手取りが低い非正規社員(契約社員、派遣社員など)の失職が想定できる(実際、2008年分の該当属性の動向を見ると、前年比で正規社員はプラス1.6%なのに対し、非正規社員はマイナス1.3%を示している)。全体に占める「手取りの低い非正規社員」の比率が下がれば、その母体での平均賃金は上昇するからだ。

直近の2018年に限れば賃金は前年に続き上昇。今回確認した期間内では最高値を更新し、当然のことながら金融危機ぼっ発直前の水準を超えている。2013年以降前年比でプラスを計上し続けているのは、グラフの形状から見ても珍しい、そして喜ばしいパターンであることがうかがえる。

続いて、20代前半だけで無く30代前半・40代前半・50代前半の前年比を一つにまとめたグラフ。

↑ 年齢階層別平均賃金(20・30・40・50代前半男性、前年比)
↑ 年齢階層別平均賃金(20・30・40・50代前半男性、前年比)

中期では30代前半が一番下側にいることに違いないが、金融危機ぼっ発以降(2008年以降)ではむしろ40代の下げ率が大きい。20~30代、50代と比べ、1ランク下の動きのように見える。この年代の男性非正規社員が増えたのか、あるいは元々賃金が高く、しかも下げやすい層として経営陣側に目をつけられた可能性はある。

これらのグラフから分かるのは、今回対象とした1993年以降(前年比では当然1994年以降)では多少の起伏があるものの、賃金に大きな上昇・下落の変移は無い(毎年2%から3%内に収まっている)こと、そして年齢階層別に賃金の上下の点で格差が生じていること。すべての年齢階層で一斉に上昇・下落するパターンはほとんど無く、必ず互いに補完し合っているように見える。例えば2005年は30代・40代・50代がプラス、20代が大きくマイナスといった形である。今回はグラフが雑多になるため各年齢階層の後半(20代後半など)は略したが、仮に入れたとしても同じような傾向が確認できている。

ただし2009年は例外。補完云々などは無く、皆が大きく下落している。2009年の急落ぶりと翌年の反動(ただし前年比プラスの動きを示したのは20代前半と50代前半のみ)がいかにレアケースであったか、つまり「リーマンショック」の影響力の大きさが改めて理解できるというものだ。

また逆に、最近では2015年、そして40代前半はプラスマイナスゼロではあるが2018年においては、すべての属性がマイナス圏から脱している。これもまた注目できる動きに違いない。

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