電気代・ガス代の出費性向をさぐる(2019年時点最新版)
東日本大震災をきっかけに日常生活で消費する電気に対する意識は小さからぬ変化を見せている。総務省統計局の家計調査の結果を用い、月次の値が取得可能な二人以上世帯に関して動向を確認すると、震災以降の電力事情を背景に、世帯単位での電力使用量は前年同月比でマイナス圏を推移することが多くなっている。その一方で電気料金(電気代平均単価)の値上がりに伴い電気代ではプラスを見せる場面が増え、2013年以降は両者においてこれまでに無いかい離が見られるようになった。
2015年夏季以降は原油や天然ガス価格など資源価格の低下を受け、また原発の一部再稼働などもあり、電気使用量の減少は継続しているが、電気代平均単価や電気代は下落の動きを示した。
ところが2017年に入ってから、特に同年夏以降は、原油価格の引き上げに伴う電気代平均単価の上昇を受けて、再び電気代も上昇を示している。
電気使用量がマイナス圏で推移しているのは、電力使用制限令や節電要請によるもの、自主的な節電行動、さらには電力消費量がこれまでと比べて低く抑えられる家電商品の積極的導入に伴う「意識しない節電」による(LEDや省エネ型のエアコンの導入が好例)。一方で電気代がプラスに推移しているのは、それら節電による電力使用量の減少分以上に、電気代平均単価が上昇しているからに他ならない。また2014年の夏季において電力使用量・電気代がマイナス圏に推移しているのは、前年同月の時点で大きなプラスを示していたことに加え、冷夏によって冷房需要が減退したのが主要因。無論、断続的な節電も一因だが、それのみが原因ならば夏に限らず前年同月比で電気使用量はマイナス化していなければならないので、主要因では無い。
他方2015年夏以降は節電努力が続く一方で電気代平均単価が下落し、電気代が下がり、マイナス値を示す形となった。前年同月でプラスを計上した月の反動も一部影響してはいるが、グラフの位置関係が使用量と代金で逆転しており、大きな単価下落が起きていることが確認できる。2016年では一時的にプラス圏に移行したが、これは多分に前年同月の反動によるもの。
2017年以降は緑の輪で囲った部分が赤の部分と似たような傾向を示している通り、電気使用量の増加を超える形で電気代が上昇している。前年同月からの反動の大小も要因だが、電気代平均単価の上昇も大きな影響を与えている。
また電気代ほど目立ってはいないが、ガス代も似たような原因により、上昇を続けていた。為替相場の変動も一因だが、多分に電力供給関連でガスの需要が一気に増え、需給の関係から一般消費者が日常生活で使うガスにも影響が及んでいる次第。そのガス代も電気代と同じような動きを示している。
この電気代・ガス代について、一般の世帯を代表する二人以上世帯の、月あたりの代金の推移を前年同月比で示したのが次のグラフ。さらに金額そのものの推移も提示しておく。なおこれらの値は調査世帯が電気料金を実際に支払った日(の月)の電気使用量や電気代の変移であり、実際の電力使用とは一か月ずれが生じていることに注意してほしい。例えば夏真っ盛りの8月に消費した電力分の代金は、翌月の9月に計上される。
金額推移だが、ガス代は年1回ピーク、電気代は年2回ピークが生じている。それぞれ2月、2月(大)と8月(小)で生じており、電気・ガスともに冬の暖房で大きく消費されること、夏は電気による冷房でも消費されるが冬の暖房ほどでは無いことが分かる。なお夏のピークが9月(8月消費分)ではなく8月(7月消費分)なのは、8月も後半に入ると涼しさを覚える日が増えることや、お盆休みなどで家を空ける機会も多分にあるからだと考えられる。
2011年の夏は大規模な節電(電力使用制限令も発令されている)により、電力使用量が大きく減少。結果として電気代も安く済んでいる。2012年に入ってからはプラス圏での推移機会が多くなり、2013年6月以降はプラス圏で高い水準を維持したままの状態が続いている。これは電気代平均単価の値上げに伴い、電力使用量が減っても電気代が前年同月と比べて高くなったからに他ならない。
2014年に入っても節電などで電気使用量は減少を続ける一方、電気代は高値のまま。しかし夏季に入ると前年同月比でマイナス値を一時的につけるようになる。これは電気代平均単価が下がったわけでは無く、冷夏による冷房需要の減少による所が大きい。
そして2015年夏季以降は資源価格の低迷に伴う電気代平均単価などの低下の恩恵を受け、大きな下落。さらに2017年以降は大きな上昇を示し、前年同月比でプラス圏に移行している。これは前年同月のマイナス値の反動に加え、電気代平均単価が大きく引き上げられたことによるもの。ただし2018年夏の大きな増加は、単純に電気代平均単価の引き上げに加え、猛暑に伴い冷房を利用する機会が増えたことも要因として考えられる。
一方ガス代については、かつてはプラスマイナスゼロを中心に上下に行き来しているだけのように見える。ただしガス単価の漸増や、電気からの置換の動きもあり、2014年以降は漸増の動きを示していた。そして2015年夏以降の動向も電気代と同様。震災以降の上げ幅が限定的なため、金額面では大したものではないが、前年同月比では電気代同様に大きな減少を計上。そして2017年以降は再び増加に。日常生活に欠かせない電気やガスの負担の増減は、家計にも大きな影響を与えていることは間違いない。
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