経済格差は所有率格差…世界主要国の世帯年収別スマートフォン所有率をさぐる(2019年時点最新版)
生活を一変するほどの利便性を持つスマートフォンの所有にはそれなりのコストが必要なため、所有率には貧富の差が影響するとの指摘がある。世界主要国におけるその実情をアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年春に実施した携帯電話関連の世界規模での調査結果報告書「Smartphone Ownership Is Growing Rapidly Around the World, but Not Always Equally」(※)から確認する。
次に示すのは世界主要国のスマートフォン所有率を世帯年収別に区分して確認した結果。各国それぞれで回答者を世帯年収順に並べ、中央値以下は低年収世帯、中央値超は高年収世帯としている。なおスマートフォンは質問票では「インターネットやアプリケーションを利用できる携帯電話」と定義されている。また国の序列は先進国・新興国それぞれにおいて、国全体としてのスマートフォン所有率の高い順となっている。
差異の幅は国によってそれぞれ異なるが、全部の国で高年収世帯の方が低年収世帯よりも高い所有率を示している。因果関係か相関関係かまでは今調査だけでは確認ができないが、少なくとも現象として、どの国においても世帯年収が高い方が、スマートフォンを所有している割合は高いことは明らか。
他方、新興国間では高年収世帯と低年収世帯の差異にはさほど大きな違いは無いが、先進国では一部の例外があるものの、おおよそ世帯年収による差異が大きい国ほど、国全体としての所有率も低くなる傾向があることが分かる。実際に高年収世帯の値から低年収世帯の値を引いた結果を算出すると、その実情がよく分かる。
スマートフォンの所有の有無は金銭的な問題だけに影響されるわけでは無い。男女別、年齢階層別、学歴別など多様な要素に影響を受ける可能性がある。一方で今件調査の限りでは、どの国においても高年収世帯の方がスマートフォンの所有率は高いのもまた事実ではある。
他方、スマートフォンの利便性を知っており経済的に余裕があっても、あえて所有しない人も少なからずいる。利便性のすべてが自分に必要な要素というわけでは無く、持っていても宝の持ち腐れとなってしまいがちとの判断によるものだ。必ずしもスマートフォンが携帯電話の最適解であるとは言えないことも覚えおくべきだろう。
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※「Smartphone Ownership Is Growing Rapidly Around the World, but Not Always Equally」
2018年春に対象国に居住する18歳以上の人に対し、電話による通話あるいは対面回答方式によって行われたもので、調査対象数は各国1000~1500人程度。それぞれの国の国勢調査の結果に基づいたウェイトバックが実施されている。対象国は先進国として韓国、イスラエル、オランダ、スウェーデン、オーストラリア、アメリカ合衆国、スペイン、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、アルゼンチン、日本、カナダ、ハンガリー、ポーランド、ロシア、ギリシャ。新興国として南アフリカ、ブラジル、フィリピン、メキシコ、チュニジア、インドネシア、ケニア、ナイジェリア、インド。
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