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「公的年金は現役で働いている世代が年金を受け取っている高齢者を扶養する制度」知っている人は67.1%

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 公的年金制度のあれこれ、どこまで知ってる? 意外と知らないことも多いかも。(ペイレスイメージズ/アフロ)

重要な社会制度ではあるが、仕組みをしっかりと理解している人は案外少ないのが公的年金制度。公的年金制度の基本的な仕組みはどこまで認知されているのか。内閣府の世論調査「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」(※)の調査報告書から確認する。

次に示すのは公的年金の制度に関する基本的な仕組みや役割について、その実情を知っているか否かを尋ねたもの。

↑ 公的年金制度の仕組みや役割についての認識(複数回答)(2018年)
↑ 公的年金制度の仕組みや役割についての認識(複数回答)(2018年)

学生も含めて20歳以上は公的年金に加入し、年金保険料を支払う義務があるということを知っている人は77.6%。何らかの事情で払えない場合も、関係官公庁に問い合わせることで(ペナルティはあるが)減免措置を受けられるので、義務であることとともに知っておきたい話には違いない。

次いで支払った保険料や期間に応じて年金が受け取れる実情を知っている人は74.6%。支払期間は20~60歳の40年間で満額の年金を受け取れるようになるが、それより短いと受取額も少なくなる(40年に満たない場合は60~65歳に限り任意で年金保険料を支払い続けて支払い期間を加算することができる。また一部期間なら滞納分を後納として支払うことで期間が加算される)。また、支払期間と免除期間の合計が10年に達していないと受取資格そのものが原則として無くなる。

次に年金は原則として65歳から受け取り始めるが、本人の希望により60歳から70歳の間で受け取り始める時期を選択できるという実情を知っているのは70.8%。公的年金制度は概念として、そして今件設問の選択肢にもあるが、本人の受け取り開始期間から亡くなるまで年金を受け取れる仕組み。受け取り開始時期を早めるほど月あたりの給付額は減り、遅くするほど給付額は増える。概算的に一人あたりの一生涯受け取れる年金の総額が平均的に同じとなるように計算されている。ただし本人がいつ亡くなるかは分からないため、多分に運試しのところもあり、それゆえに老後の生活設計は必要不可欠になる。

公的年金制度は現役で働いている世代が年金を受け取っている高齢者を扶養する制度だということを知っている人は67.1%。公的年金制度は自分の年金保険料を積み立てて、支払期間以降に払い戻しされる仕組みだと思っている人は少なくない。あくまでも年金保険料は将来の年金受け取り資格を得るための料金に過ぎない。

公的年金制度に加入することで、障害がある人や世帯の生計を支えている人を亡くした人も、保障を受けられる事実を知っている人は50.3%とほぼ半分しかいない。年を取ってから給付される年金は老齢年金と呼ばれており、この他に「重度の障害を負ったとき」(障害年金)や、「一家の稼ぎ頭が亡くなったとき」(遺族年金)にも所定の給付を受けることができる。つまり公的年金制度は部分的に医療保険の役割も果たしていることになる。

ちなみに男女別・年齢階層別で若年層の18~29歳と、年金給付を受け始めている人がいるであろう60代、そして年齢の観点では全員が年金給付を受けている対象となっている70歳以上の動向を確認したのが次のグラフ。

↑ 公的年金制度の仕組みや役割についての認識(複数回答、男女別・年齢階層別(一部))(2018年)
↑ 公的年金制度の仕組みや役割についての認識(複数回答、男女別・年齢階層別(一部))(2018年)

男女とも18~29歳は知っている人の割合は低く、受け取り開始時期となる60代は高い値を示すが、70歳以降は再び低い値となる。もっとも、受け取りに直接関係する話は70歳以上でも高い認識率を維持している。

ちなみに「現役で働いている世代が年金を受け取っている高齢者を扶養する制度」に関しては、18~29歳では女性の方が、60代と70歳以降では男性の方が高い。もっともどの属性でも7割を超えることは無く、見方を変えれば3割台から4割台の人は「年金保険料を積み立てて、自分が年を取ってから払い戻しされる」と考えている可能性がある。年金にかかわる話で色々と誤解が生じる機会があるが、その多分はこの事実と「障害がある人や世帯の生計を支えている人を亡くした人も保障を受けられる」について、知らないためのもの。もう少し認識率を高める方策を求めたいものだ。

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※老後の生活設計と公的年金に関する世論調査

2018年11月1日から18日にかけて日本国内に居住する18歳以上の日本国籍を持つ男女から層化2段無作為抽出法によって選ばれた5000人に対し、調査員による個別面接聴取法によって実施されたもので、有効回答数は2919人。男女比は1369対1550、年齢階層比は18~19歳39人・20代192人・30代340人・40代517人・50代475人・60代553人・70歳以上803人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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