Yahoo!ニュース

定年退職が始まる60代前半、公的年金と就業率との間にはどのような関係があるのだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 60を過ぎても働く人は多い。60代前半の公的年金の給付額と就業率の関係は。(ペイレスイメージズ/アフロ)

一般企業の多くでは定年退職の年となる60代前半、公的年金の給付額と就業率との間にはどのような関係があるのだろうか。厚生労働省が2018年3月に発表した、中高年縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)(※)特別報告の結果から確認する。

最初に示すのは60代前半(60~64歳)における就業率を公的年金の給付額別に区分して示したもの。就業内容は問われていないので、昔からの就業を継続している場合もあれば、一度定年退職などで職を辞した後に、軽労働などの別の職についている場合もある。なお、高額給付を受けている人は少数のため、該当属性の結果は統計上のぶれが生じている可能性が高い。

↑ 就業率(60~64歳、公的年金給付額別(2か月分)・男女別)(2015年)
↑ 就業率(60~64歳、公的年金給付額別(2か月分)・男女別)(2015年)

現役で就労しているからなのか、蓄財やその他の収入があるので意図的に受給をしていないのかは不明だが、回答時点で公的年金を受給していない人は9割以上が就業している。他方、受給をしている人でもおおよそ給付額が少ないほど就業率が高い結果が出ている。男性では5万円未満では95.0%だが、35~40万円未満では41.9%と半数を割り込む形となっている。公的年金だけで、あるいは公的年金が加わることで、生活の糧は十分であるとし、就業する必要は無いと判断する人が多いのだろう(もっとも高齢者の就業は収入を得るためだけでなく、社会的意義や他人との交流を求めて行う場合もある)。

男女別では女性の方が就業率は低い。女性は単身世帯のケースが多いのに加え、配偶者がいる場合は配偶者の稼ぎ(と公的年金)で世帯全体の生活が維持できるため、就業による収入で生活を支える必要が無いと判断されることがあるからだろう。

公的年金の受給や就業率は世帯の収支と大きな関係があることから、配偶者のある無しが大きく影響することになる。そこで配偶者のある無しで再集計したのが次のグラフ。

↑ 就業率(60~64歳、男性、公的年金給付額別(2か月分)・配偶者の有無別)(2015年)
↑ 就業率(60~64歳、男性、公的年金給付額別(2か月分)・配偶者の有無別)(2015年)
↑ 就業率(60~64歳、女性、公的年金給付額別(2か月分)・配偶者の有無別)(2015年)
↑ 就業率(60~64歳、女性、公的年金給付額別(2か月分)・配偶者の有無別)(2015年)

高額受給者の統計上のぶれを別にすれば、受給しない人が一番就業率は高く、受給者においても給付額が低額なほど就業率が高い傾向に変わりは無い。

他方、男性は配偶者がいる方が就業率は高く、女性は配偶者がいない方が就業率が高くなる傾向がある。そして配偶者無しに限れば、男女で傾向だった差異は見出しにくい。夫婦世帯の場合、男性が率先して働き、その時点で世帯が支えられるのなら、女性まで働くことは無いと考えれば道理は通る。言い換えれば、男性の場合は女性の配偶者が働いていない場合が多いため世帯全体の生活を支える必要性が高くなる、女性の場合は男性の配偶者が働いている場合が多いため自分自身も働く必要が無い場合が多いというところだろうか。

■関連記事:

60代前半の就業率は6割強・女性の5人に1人はパートやアルバイトに

老後の主な収入源の各国比較、公的年金がメインなのはどこも同じ

※中高年縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)

団塊の世代を含む全国の中高年者世代の男女に対する追跡調査で、2005年以降毎年1回、同一人物を対象に各種質問が行われている。今回対象となる第11回目で10年分の結果が出そろい、対象者が全員60歳以上となったことから、特別報告の名前で総括的な検証が行われている。第11回目の調査分は2015年11月第1水曜日に郵送調査票の送付と郵送返送方式で実施されたもので、対象者のうち第1回調査から第11回調査に連続して回答している人は2万101人。対象者年齢は第11回調査時点で60~69歳。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事