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1割近くの人は老後の生活設計を考えたことが無く今後も考えるつもりが無い

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 十分な資産があれば老後の生活設計をしなくてもよいと考えることもあるだろう。(ペイレスイメージズ/アフロ)

年を取り職から離れると、就業でお金を得られなくなるため、生活に必要となるお金の工面が求められる。公的年金以外に退職金、蓄財の切り崩し、証券投資など、手立てはさまざまだが、事前の生活設計はあった方がよい。しかし老後の生活設計をしていない人もいるという。その実情を、内閣府の世論調査「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」(※)の調査報告書から確認する。

調査対象母集団においては、老後の生活設計を考えたことがある人は67.8%に達している。

↑ 老後の生活設計を考えたことがある人(2018年)
↑ 老後の生活設計を考えたことがある人(2018年)

この設問で「老後の生活設計を考えたことが無い」と回答した人において、それでは何歳ぐらいになったら考えるのかと尋ね、「老後の生活設計は(今後も)考えない」と回答した人、つまりこれまでもこれからも老後の生活設計は考えるつもりが無い人の割合を計算したのが次のグラフ。なお、今件に該当する人でも、将来において何らかのきっかけから考えるようになることはありうる。

↑ 老後の生活設計を考えたことが無く今後も考えるつもりが無い人(2018年)
↑ 老後の生活設計を考えたことが無く今後も考えるつもりが無い人(2018年)

全体では9.8%。1割近くの人が「老後の生活設計は一生涯考えるつもりは無い」と考えている。年齢階層別ではやや値が高めに出ている18~29歳を除けば、おおよそ年が上になるほど該当者率が高まる結果が出ている(女性は40代が最小値となっているが)。若い時は考えなくても別にかまわない、面倒だから、さらには楽観的な考えの下での結論であっても、年とともに考えねばならない状況に迫られる、考えた方がよいという事案に遭遇するなどで、考えるように転じる可能性は多々あるため、むしろ逆に年が上になるに連れて該当者率は低くなるのが道理ではあるのだが、実際には逆。今の高齢層は蓄財や公的年金で十分だとする楽観的な思惑が強いのかもしれない。そしてその発想が許されるような環境なのだろう。

職業別では農林漁業職で高めの値。衣食住のうち食、そして多分に住は確保されているであろう環境で、終生現役を貫く人も多々いるであろうから、細かいことは考えなくてもよいとの思惑の人がいるものと考えられる。

それでは今後も考えるつもりが無いか否かは別として、現状では老後の生活設計を考えたことが無い人に、なぜ考えたことが無いのかを択一回答で尋ねたのが次のグラフ。

↑ 老後の生活設計を考えたことが無い理由(択一回答、老後の生活設計を考えたことが無い人限定)(2018年)
↑ 老後の生活設計を考えたことが無い理由(択一回答、老後の生活設計を考えたことが無い人限定)(2018年)

最上位は「将来の話なので老後のことは分からない」とする意見で35.1%だった。何十年も先の話になるので今から考えても意味が無いだろうということだろうか。これは若年層では特に仕方が無い話ではある。

次いで「老後の生活設計の立て方が分からない」「老後を迎えた時に考えるつもり」「老後の生活を考えると不安になる」がさほど変わらない値で並ぶ。それぞれ「したいけど分からない」「その時が来たら考えよう」「考えるだけで怖いから考えたくない」と、異なる方向性でこれまでは考えていなかったとのことで、老後の生活設計を考えることの難しさの問題点が見えてくる。

他方、「考えるのが面倒」という本人の資質の問題もあれば、「資産があるので考える必要が無い」といった羨ましい回答も少なからず見受けられる。

「将来の話なので老後のことは分からない」など本人の選択による理由はともかく、「老後の生活設計の立て方が分からない」「老後の生活を考えると不安になる」などは老後の生活設計をしたい思惑があるにもかかわらず、できない状況に置かれている。問題を解決して老後の生活設計ができるような環境づくりが求められよう。

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※老後の生活設計と公的年金に関する世論調査

2018年11月1日から18日にかけて日本国内に居住する18歳以上の日本国籍を持つ男女から層化2段無作為抽出法によって選ばれた5000人に対し、調査員による個別面接聴取法によって実施されたもので、有効回答数は2919人。男女比は1369対1550、年齢階層比は18~19歳39人・20代192人・30代340人・40代517人・50代475人・60代553人・70歳以上803人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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