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公的年金以外に老後の生活でどのような資産を頼りにするつもりなのだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 老後に備えての貯金。漠然とした形でしている人も多いかも。(ペイレスイメージズ/アフロ)

公的年金制度で公的年金は給付されるものの、それだけでは到底生活を維持することはできないのが実情。現状では人々はどのような資産を老後に備えているのだろうか。内閣府の世論調査「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」(※)の調査報告書から確認する。

今調査対象母集団では67.8%の人が老後の生活設計を考えたことがあるとしている。また、老後の生活設計をしている人においては、公的年金を全面的に頼りにすると考えている人は少数派なのが実情。

↑ 老後の生活設計を考えたことがある人(2018年)
↑ 老後の生活設計を考えたことがある人(2018年)
↑ 老後の生活設計の中での公的年金の位置づけ(択一回答、老後の生活設計を考えた人限定、男女別)(2018年)
↑ 老後の生活設計の中での公的年金の位置づけ(択一回答、老後の生活設計を考えた人限定、男女別)(2018年)

それでは公的年金以外で、どのような資産を老後に向けて準備したい、あるいは準備をした(している)と考えているのだろうか。複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。もっとも多くの人が候補に挙げたのは「預貯金」だった。72.7%が選択している。

↑ 老後に向け準備したい・した公的年金以外の資産(複数回答、老後の生活設計を考えた人限定)(2018年)
↑ 老後に向け準備したい・した公的年金以外の資産(複数回答、老後の生活設計を考えた人限定)(2018年)

次いで大きく値を減らして「退職金」「民間個人年金」が続く。「証券投資」は14.6%に留まっている。また「国民年金基金」が1割台しか無いが、これは元々自営業や自由業の人向けの制度で、会社員などは利用できないからに他ならない。

一方で公的年金以外に資産の準備をしない・しなかった人や、特に無いとの意見も少数ながら見受けられる。単純に楽観主義なのか、実家からの遺産相続などのあてがあるのかもしれない。

これを男女別に区分したのが次のグラフ。

↑ 老後に向け準備したい・した公的年金以外の資産(複数回答、老後の生活設計を考えた人限定、男女別)(2018年)
↑ 老後に向け準備したい・した公的年金以外の資産(複数回答、老後の生活設計を考えた人限定、男女別)(2018年)

男女の立ち位置や資産に対する見方の違いがよく分かる結果が出ている。男性は長期就業に携わっているケースが多いため「退職金」をあてにしている人が多く、また「証券投資」にも積極的。他方女性は「預貯金」の値が男性より大きく上回る結果となっている。また「民間個人年金」や「国民年金基金」なども合わせ、手堅い資産構築を選択する傾向が強いことがうかがえる。

最後に、公的年金には失望している人が多いとの話がよく出てくる若年層における実情を。

↑ 老後に向け準備したい・した公的年金以外の資産(複数回答、老後の生活設計を考えた人限定、18~29歳、男女別)(2018年)
↑ 老後に向け準備したい・した公的年金以外の資産(複数回答、老後の生活設計を考えた人限定、18~29歳、男女別)(2018年)

全体の動向と大きな違いは無いが、リスクの高い資産へはあまり注視をしておらず、「預貯金」「民間個人年金」「国民年金基金」のような安全性の高い資産へ積極性を示していることが分かる。特に女性では「預貯金」に92.9%と極めて高い値が確認できる。世間一般に語られていイメージよりはるかに、若年層は将来に向けて堅実なものの見方をしているのかもしれない。

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※老後の生活設計と公的年金に関する世論調査

2018年11月1日から18日にかけて日本国内に居住する18歳以上の日本国籍を持つ男女から層化2段無作為抽出法によって選ばれた5000人に対し、調査員による個別面接聴取法によって実施されたもので、有効回答数は2919人。男女比は1369対1550、年齢階層比は18~19歳39人・20代192人・30代340人・40代517人・50代475人・60代553人・70歳以上803人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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