20代が「自家用車を買ってもいいな」と思える世帯年収をさぐる
車の所有率が若年層の間で減少していると語られる機会が増えたが、そのもっとも大きな原因は現状、そして将来にわたる見通しとしての可処分所得の減少。見方を変えれば金銭的な充足があれば、若年層も自家用車の所有に積極さを見せることになる。それ自身は極めて当たり前の話ではあるのだが、ならば世帯年収でどれぐらいの額を確保できれば、所有を考えるようになるのだろうか。SMBCコンシューマーファイナンスが2018年12月に発表した調査「20代の金銭感覚についての意識調査2018」(※)の結果を基に確認する。
次に示すのは年収の一定区分別の「この世帯年収ならば自家用車を所有してもよいと思う」回答率と、累積回答率を併記したもの。例えば世帯年収400万円に達した時点で取得してもよいと考える人は、世帯年収500万円の条件でも当然取得したいと考える。400万円より500万円の方が、金銭的余裕は一層あると考えられるからだ。そこで各世帯年収の区切り別回答率に加え、累積の回答率も併記している。例えば300万円の累積回答率は32.2%だが、これは「年収を問わず所有したい」の15.6%、「200万円」の4.9%、「300万円」の11.7%をすべて足した結果である。
個々の区分回答率では500万円が16.2%でもっとも多く、次いで世帯年収を問わず所有・購入したいが15.6%、世帯年収がいくらになっても所有・購入したいとは思わない人が13.5%と続く。ボリュームゾーンとなる300万円から600万円の値を合わせると5割近くの回答率となる。もっとも「世帯年収600万円まで」と評する場合には、それ以下の条件でも所有したいとの累積回答率の考えが必要になるため、67.9%の値が導き出される。つまり、世帯年収600万円が確保できれば、20代のおおよそ2/3は自家用車を所有しようと考える。
それ以降の世帯年収増加による回答率は減り、累積回答率の上昇度合いも緩やかなものとなる。世帯年収条件の上限まで加算すると86.5%、つまり18.6%ポイントの増加にしかつながらない。若年層の自動車所有率を高めたいのなら、関連各方面は該当世代の世帯年収を600万円程度に引き上げ、安定化させる方策が費用対効果の上でも望ましい切り口となる。
同様の調査は過去においても実施されており、その累積回答率を直近年分も含めて5年分までさかのぼり併記したのが次のグラフ。
一部イレギュラーな動きもあるが、おおよその階層で値が減少している、つまり自家用車を所有しようとする人が減っている傾向があった。直近の2018年では前回年の2017年分から増加が生じており、これまでとは異なる動きとなっているのが分かる。「20代の自家用車離れ」にブレーキがかかった状態だ。
自家用車は仕事柄、居住地域の状況から取得が不可欠な人もいる。個々の環境によって所有動機は大きく変動するため、世帯年収はあくまでも要素の一つ。
一方で金銭上の問題が大きな影響を与えることも事実。消費の活性化を若年層に望むなら、それを後押しすべく、その年齢階層の世帯年収の底上げと安定化を推し量ってほしいものである。
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※20代の金銭感覚についての意識調査2018
2018年10月2日から3日にかけて、携帯電話を用いたインターネット経由で20代男女に対して行われたもので、有効回答数は1000件。男女・20代前半と後半の区切りで均等割り当て。未婚者756人、既婚者244人。調査協力機関はネットエイジア。
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