1971年以降の世界の二酸化炭素排出量をさぐる
温暖化に深く関連性のある問題として注目されている二酸化炭素の排出量。その実情を国際エネルギー機関IEA(The International Energy Agency)の最新公開資料(※)を基に、収録されている1971年以降の動向について確認する。
まずは世界全体の総量、そして主要国(直近年時点で排出量上位国。具体的には中国、アメリカ合衆国、インド、ロシア、日本、ドイツ、韓国、イラン、カナダ、サウジアラビア)の経年における二酸化炭素排出量推移。
中国の急上昇ぶり(増加率、増加量)やアメリカ合衆国の昔からの値の大きさ、そしていくつかの先進諸国における技術革新・公害対策などによる効果が出て値が減っているのが確認できる。日本やドイツは元々排出量が(今グラフ中では)少なめなポジションなのに加え、それでもさらに値を削っているのが見て取れる(もっとも2008年から2009年にかけての減少は、景気後退によるところも小さくない)。
なお中国とアメリカ合衆国の順位が入れ替わったのは2006年。この時アメリカ合衆国は56.0億トン、中国は60.0億トンだった。
続いて全世界比の推移。こちらは1990年以降に限定する。
世界全体の排出量との比率の上でも、中国の増加、アメリカ合衆国の漸増から漸減への転換、インドの漸増が見て取れる。またドイツや日本は漸減状態にあることが確認できる。特に中国は確実にその値を増やしているのが容易に把握できる状況となっている(2014年以降は比率の上では漸減に転じているが)。
なお日本が2011年以降わずかだが排出量が増加に転じたのは、震災を起因とする発電方式の状況変化に伴い、二酸化炭素排出量が増えているのを受けての結果である。もっとも2014年以降は再び減少の動きとなっている。
最後に「国民一人あたりの」二酸化炭素排出量推移。こちらは折れ線グラフでは分かりにくいところもあるので、直近10年分の棒グラフを併記し、合わせてその推移を見ることにする。なお棒グラフは直近年の国別排出量の多い順にしてある。
アメリカ合衆国やカナダは高めの水準だが、それでもじわじわと値を落としていること、ドイツや日本も同様に今世紀に入ってからは削減効果が出始めていることが読み取れる。ただし日本においては、2011年以降は一時的な上昇。震災による電力事情の影響が出ていた。
また総量部分でも増加傾向が目に留まったサウジアラビアが勢いのある上昇傾向なのが確認できる。これは他の中東石油産出国でも起きている現象で、例えば国ベースの排出量上位国に限定しなければ、一人あたりの排出量の最上位国はカタールで30.77トン/年となる。それだけ原油価格の高騰を受け、近代化による増加が進んでいることになる。
一方、中国の上昇ぶりも注目に値する。同国の人口数を考慮すれば、この傾斜が何を意味するのか、今記事一つ目のグラフと照らし合わせれば容易に理解できるはずだ(ここ数年がゆるやかな下落を示しているのは幸いかもしれない)。また、人口の観点で考慮すると、今グラフでは傾斜こそ現時点ではゆるやかで一人あたりの値も低いものの、インドの動向も気になるところではある。
■関連記事:
※IEAの最新公開資料
具体的には「CO2 Emissions from Fuel Combustion- Highlights-」。現時点では2018年発行分で、2016年時点のデータが最新。今件値は燃料消費行動に伴う排出量であり、人間などの生物による生体活動に伴い排出される量は勘案されていない。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。