西欧諸国でニュースの情報源として一番使われているのはテレビ
政治や経済、社会情勢など多様な分野で日々提供されるニュース。そのニュースを人々はどの情報源から入手しているのか。イギリスやドイツなど西欧諸国の実情を、アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年5月に発表した調査「In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology」(※)の報告書の内容から確認する。
次に示すのは調査対象母集団において、少なくともニュースの情報源として毎日1度以上利用する媒体を複数回答で尋ねた結果。「インターネット」とはインターネットを用いてニュースを取得するという意味。発信元がテレビやラジオ、紙媒体の運営組織であってもかまわない。また「紙媒体」は特に説明は無いが、新聞や雑誌を指していると解釈して問題は無い。
調査国全体の中央値ではテレビが70%でトップ、次いでインターネットが60%、ラジオが54%、そして紙媒体が30%。今件はあくまでも「毎日1度以上」ではあるが、新聞が基本的に日刊ベースで刊行されていることを考えると、紙媒体の30%という値からは「ニュースの情報源としての新聞離れ」がよく分かる値に違いない。
各国の動向を見ると、イタリアやスペイン、フランスでは他の媒体を大きく引き離してテレビが高い値を示しており、特にイタリアやスペインでは8割を超える値を計上している。一方でイタリアではインターネットの値も高い。ただし、ラジオや紙媒体の値は低め。
インターネットの値はイタリア以外ではデンマークやスウェーデンなどが高く、デンマークとスウェーデンではテレビすら抜いてもっとも利用されている媒体となっている。インターネットがそれだけ深く浸透し、情報の取得用メディアとして利用されている証でもある。もっともスウェーデンは他の媒体の利用も高い値を示しており、今件調査項目の選択肢の単純合計値ではもっとも高い242%となっていることから、ニュースそのものへの関心度合いが大きいのかもしれない。
意外にもドイツはテレビとラジオの値が高めで、ラジオの値は調査国の中でも最大値。他方、インターネットはフランスに次ぐ低い値に留まっている。
その新聞だが、ドイツとスウェーデンですら4割台に留まっており、その他の国は2割台から3割台。見方を変えれば6割台から7割台は日々新聞などを読むことは無いということになる。
報告書では今件動向に関する解説は特に無い。代わりにアメリカ合衆国の類似動向について【News Use Across Social Media Platforms 2018】の結果を基に、2018年夏の時点でアメリ合衆国の18歳以上のうち約半数はテレビのニュースを頻繁にニュースの情報源として利用し、インターネットは45%、ラジオは26%、紙媒体は16%との値を提示している。「頻繁に」と「少なくとも毎日1度以上」とは頻度の上では別物で単純比較はできないが、それぞれの媒体の相対的な立ち位置を比較すると、おおよそ今回の中央値と似ている、やや紙媒体の値が低いかな、という感はある。
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※In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology
2017年10月から12月にかけて西欧諸国(デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、イギリス)を対象にしたもので、有効回答数は各国2000人強。RDD方式によって選ばれた18歳以上の自国居住者を対象に電話(固定電話と携帯電話双方)によるインタビュー形式で実施されている。結果の値にはそれぞれの国の国勢調査の結果を用いたウェイトバックが行われている。
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