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年齢でメディアへの信頼度にどこまでの違いがあるのかをさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 世代間ギャップはどのような場面にでも。メディアの信頼度も同様なのだろうか。(写真:アフロ)

信頼度は年齢で差が生じるのか

成長過程における環境、経験の違いで生じる世代間ギャップは、メディアへの信頼度においても生じている。その実情を総務省が2018年7月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「平成29年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値から確認する。

抽出する年齢階層は、未成年者を多く含む、そしてある意味特殊な生活環境に置かれている学生・生徒(中学生から大学生が対象)、若年社会人として20代、そして高齢層として60代。それぞれ、政治・経済問題(国内)、社会問題(国内)、海外ニュース、原子力の安全性、東アジアの外交問題の各ジャンルに関し、代表的なメディアとしてテレビ、新聞、インターネットニュースサイト、ソーシャルメディア、ブログやその他サイトを挙げ、それぞれの信頼度を算出した。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(学生・生徒)(2017年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(学生・生徒)(2017年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(20代)(2017年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(20代)(2017年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(60代)(2017年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(60代)(2017年)

年齢的には近く、被っている部分もあることから、学生と20代は近い動きを示している。新聞をもっとも信頼し、次いでテレビ、インターネットのニュースサイトが続き、ソーシャルメディアやブログはあまり信頼していない。ただしテレビや新聞への信頼度は学生よりも20代の方が低め。一般論レベルの話ではあるが、社会に出て経験を重ねることで、メディアに対する信頼度のウェイトが変化しているようすがうかがえる。国内問題や海外ニュースに関するインターネットニュースサイトの信頼度に限れば20代の方が高いのは、株価や企業の発表リリースなど、仕事でビジネス系の素情報を配信するサイトを使う人が多いからだろうか。

一方60代では大きな相対関係・順位に差は無いものの、ソーシャルメディアやブログの値が低くなり、テレビや新聞の値が高い値を示す。またインターネットのニュースサイトも高めの値だが、これは多分にテレビや新聞などの4マスの企業体による運営サイトをイメージしているものと考えられる。若年層と比較すると、物理メディアとインターネットメディアとの間の信頼性の格差が開いているようだ(インターネットニュースサイトをのぞく)。

元々使っていない人は?

今件における信頼度の算出にはそのメディアを利用していない人は除外されている。信頼度とは別に、元々単純にそのメディア全体を金銭的、身体上の理由で、費用対効果の上で使っていない人も多くいるのだろうが、信頼ならないので利用していない人もいることが考えられる。そこでそれぞれのジャンルに関して、該当メディアを情報源として使っていない人の割合を抽出したのが次のグラフ。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(学生・生徒、そもそもその情報源を使っていない・知らない)(2017年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(学生・生徒、そもそもその情報源を使っていない・知らない)(2017年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(20代、そもそもその情報源を使っていない・知らない)(2017年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(20代、そもそもその情報源を使っていない・知らない)(2017年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(60代、そもそもその情報源を使っていない・知らない)(2017年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(60代、そもそもその情報源を使っていない・知らない)(2017年)

信頼度の観点では近い学生・生徒と20代も、情報源としてのメディアの利用度合いでは大きな違いを見せている。学生は該当する情報を取得する際に使っていないメディアが多め。特にソーシャルメディアやテレビの値が、学生・生徒では高い(=使っていない・知らない人が多い)。

他方、高齢層は若年層とは大きな違いを見せる。テレビや新聞のような従来型の4マスはほとんどの人が情報源として用いているが、インターネット系はおおよそ利用そのものをしていない。それでもインターネットニュースサイトは5割近くの人が利用しているものの、ソーシャルメディアやブログなどは2割強でしかない。そのメディアを使えるツール自身を持っていない、持っていてもアクセスする気にはならない人が多分にいるとはいえ、ここまで若年層と大きな差が生じているのでは、メディアを通して見える社会の有りようが違って見えるのも不思議では無い。

インターネットのニュースサイトに対する信頼度が高めに出る傾向があるのは、新聞やテレビなど従来のマスメディアが主催するサイトであるからこそ。そしてその一方で利用者そのものが5割近くでしかない状況を見るに、「信頼していない人はそもそも利用していない」のパターンが多々あり、必然的に相応の信頼をしている人のみが利用している結果、平均値も高いものとなった可能性も否定できない。

今後スマートフォンやタブレット型端末がさらに浸透し、高齢層にもその利用が広まるにつれ、これらの値はどのような変化を示すのだろうか。非常に気になるところではある。あるいはスマートフォンが普及しても、「新聞」の記事を読む対象が紙から液晶に変わっただけとなるのかもしれないが。

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※平成29年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2017年11月11日から17日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケートと日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。グラフ・本文中の表記の「10代」は、厳密には13~19歳を意味する。

今件項目では主要メディア、具体的にはテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、そしてインターネットに関してはインターネットニュースサイト、ソーシャルメディア、動画配信・共有サイト、ブログ・その他サイトに細分化した上で、日本国内の政治や経済に関する情報源として、どの程度信頼できるかを「非常に信頼できる(3)」「ある程度信頼できる(2)」「あまり信頼できない(1)」「まったく信頼できない(0)」「そもそもその情報源を使わない、知らない」のいずれかから回答者自身の考えにもっとも近い選択肢を一つ、選んでもらっている。その上で、「そもそもその情報源を使わない、知らない」以外の回答に関して割り当てられた数字の平均を信頼度として算出している。全員が「非常に信頼できる」と答えれば3.00、「まったく信頼できない」なら0.00となり、値が大きいほど大きな信頼が寄せられていることになる。

一方この方法では「そもそもその情報源を使わない、知らない」の回答者は信頼度算出の際には除外されている。この回答者の中には「信頼がおけないので使っていない人」がいる可能性も否定できず、現実の信頼度は算出値よりもいくぶん低いと見た方が無難ではある。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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