「あの国は世界に良い影響を与えているだろうか?」その評価実態
ドイツとカナダが全体ではトップの好感触
世論は国民感情や煽動的な情報、報道に惑わされることが多く、必ずしも論理的なものとは異なる結果が出るとは限らない。とはいえ、他国の人が自国をどのように見ているのかは気になる所。その実情を「特定の国が世界全体に良い影響を与えているか、それとも悪い影響を与えてるか」との評価に基づき、毎年イギリスのBBCが調査発表している「Global Survey on Country Influence」から確認していくことにする。
今調査の直近分となる2014年発表分は、2013年12月から2014年4月に渡り、対面調査や電話応対インタビュー形式によって18歳以上の成人男女に対し、大よそ1国あたり1000人を対象として行われている。調査対象国は24か国、評価対象国は調査対象国も含め17か国。
行われた質問は「回答者から見て、次の国は世界にポジティブな(良い)影響を与えているか、それともネガティブ(悪い)影響を与えているか」とのシンプルなもの。二者択一だが、それ以外に問い合わせ時には列挙しない形で「状況に寄りけり」「どちらとも言えない」「回答拒否」などを意味する「中庸その他」の選択肢が存在しうる。
回答結果を向けられた国それぞれに関して集計し、「ポジティブ値の平均」から「ネガティブ値」の平均を引き、好評価度を算出したのが次のグラフ。もっとも好感触となったのはドイツとカナダで、それぞれプラス42%の結果が出た。
次いでイギリス、フランス、EUと続き、日本はその次、ブラジルと同率。日本が微妙な位置づけだが、これは「東南アジアの隣国」、具体的には中国と韓国による所業の結果であると報告書に記されており、事実その2か国の否定的意見が全体値を引っ張っている。「良い隣人を持つ人は幸いである」。
他方アメリカ合衆国はプラス3%、中国はゼロに留まり、ロシアはマイナス14%。諸大国の評価は低めで、さらにアクが強い、具体的な攻撃的姿勢を見せることが多い国で大きなマイナス値が示されている。
日本は、アメリカは? …具体的動向
それでは評価対象国となった諸国の詳細を、いくつかかいつまんで確認していく。
韓国と中国のネガティブ評価が異常な状況にあることが分かる。少なくともかの国の人たちにとって、日本は世界に悪影響を及ぼすとの認識であることは一目瞭然。それ以外では大よそ好意的だが西アジアや一部東南アジア、南アメリカでは中庸回答が大きめ。日本のイメージそのものの浸透が薄いのかもしれない。ドイツのネガティブ値の大きさが気になるところだが、ドイツは日本に限らず多様な国でネガティブの評価が多いので、問題にはならない。
続いてアメリカ合衆国。
アメリカとカナダの中の悪さはよく見聞きする話ではあるが、国民感情としてもそれが表れている。しかしむしろ南米諸国やヨーロッパにおけるアメリカの評価が、かなり低めなのが目に留まる。双方ともアメリカに頼る部分が多い一方、口出しする動きには良い思いをしておらず、世界に対する影響もネガティブにとらえる向きがあるのだろうか。
アフリカ諸国では概して高め、東南アジアでは韓国が一段と高く、日本やインドは高め、オーストラリアや中国、パキスタンは低め。一部諸国を除けば全般的にネガティブな値が一定以上加算されており、それが全体値の低さにつながっているようだ。
対中国の評価は非常に興味深い。
北米は低めだが南米は高め、ヨーロッパは大よそ低めだが大陸諸国から距離を置くイギリスは幾分高め、西アジアは賛否両論、そしてアフリカは高め。中国の投資経済施策の結果が如実に表れている。アジアでは成立当時から親密な関係にあるパキスタンからの好意的な意見をはじめ、インドネシアやオーストラリアなど、なるほど感を覚える動きをしている。日本はともかく韓国の値が低めなのはやや意外か。
最後は韓国。
他国への評価と比べ、「中庸その他」の回答値が高め。印象そのものが薄いのか、具体的イメージを浮かべにくいのだろうか。その一方で地域別のネガティブ値はほぼ一定しており、これも特異な動きと言える。
北米ではややポジティブ、南米やヨーロッパではネガティブ、西アジア、アフリカではいくぶんのポジティブ、東南アジアではポジティブから中庸までさまざま。
これらの値は回答者、つまり一般市民の目線で「対象国が世界全体に良い影響を与えるか、悪い影響を与えるか」を選んでもらっただけだが、大よそ回答者本人の対象国への印象にもつながる。悪い印象を持つ国に対し、その国が世界に良い影響を与えると答える状況はあまり考えにくい。個々の国の市民ベースでの、他国への全般的な印象の違いが透けて見える結果といえよう。
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