売れ行き不振は前世紀から…百貨店やスーパーの売上高の推移をさぐる

↑ 今も百貨店は憧れの場所には違いないが。(写真:アフロ)

・百貨店やスーパーの売上額は1990~1991年がピーク。それ以降売上は減少。

・飲食料品は売上の減少幅は小さいが、住関品や衣料品は約5~10年のサイクルで大幅な減少を示している。

・消費税率の引き上げ時には大きな駆け込み需要による売上増と、その反動が生じた。

低迷続く衣料品と住関品

かつては憧れの場所、特に子供にとっては一日中いても飽きない場所だった百貨店やスーパー(※)だが、今やその勢い、商品やサービスに対するきらびやかさは見られない。需要や流通の大きな変化で相対的立ち位置を後退させているからだ。しかしそれでも多彩な商品が一堂に会する、言葉通り「百貨」が集まるこれらの店舗には、不思議な魅力を感じさせる。その店舗の営業業績の実情について、経済産業省・商業動態統計調査の発表結果を用い、確認をしていく。

その年次動向だが、現時点では年ベースで2017年分までの値が公開されている。

↑ 百貨店・スーパーの売上額(年ベース、前年比、既存店、主要分野別)
↑ 百貨店・スーパーの売上額(年ベース、前年比、既存店、主要分野別)

箇条書きにグラフから読み取れる動向を記すと次の通りとなる。

・1990~1991年がピークで、あとは下降、ほぼ前年比マイナスを継続している(売上額は減少の一途をたどっている)。

・飲食料品は他分野と比べれば下げ幅が小さい(マイナス5%未満に収まっている)。

・住関品や衣料品は1992~1993年の低迷時期を皮切りに、約5~10年のサイクルで大幅な減少を示している。

・衣料品は特に下げ幅が大きい。住関品も同様の傾向を見せていたが、2009年をピークとする下落期では衣料品の下げ方が著しい。リーマンショックは高額商品が多い衣料品に大きな影響を与えたように見える。

・衣料品、食堂・喫茶の2008~2009年の下げ幅はこれまでのパターンを逸脱するほどのもの。

・2009年は全分野でマイナス、2010年もマイナスだが、下げ幅は縮小(売上高の前年比における絶対額がマイナスであることに違いは無し)。

・2011年は震災の影響にも関わらず、年ベースでは総売り上げ・衣料品・飲食料品で下げ幅を縮小している。

・直近数年では飲食料品は堅調だが衣料品の下げ幅が大きなものとなっている。住関品はプラス圏への動きも見られるようになり、飲食料品とともに売上総計を支える形に。

これらの動向からは、百貨店・スーパーの低迷は昨日今日に始まった話では無く、1990年前半以降継続中の問題であることが分かる。特に住関品・衣料品は1990年代後半以降、2004~2005年の好景気をのぞけば大よそ前年比マイナス3%から6%の範囲で低迷した状態がしばらく続き、両分野が深刻な状況にあることが見て取れる。ただしここ数年では住関品も復調の気配が見られるのが幸いか。

2007年から始まる金融危機、さらに2008年のリーマンショックによる景気後退が原因の売上高の減少ぶりは、少なくとも1988年以降において類を見ないほどのもの。2010年に入って下げ幅はようやく縮小の雰囲気が見え始めたが、2011年の震災で再び頭打ち、そして2012年以降はようやく復調の気配が感じられる。

また、注目したいのは「食堂・喫茶」。金額が小さく、他の分野よりも直接客足に影響されやすい分野だが、こちらも衣料品同様の大きな下げが生じている。理由の一つは顧客の消費性向の変化(外食離れ)があるが、それと同時に店舗そのものへの来客数が大幅に減少している可能性を示唆している(来客数は計上されていないため検証は不可能)。

消費税率改定で生じる大きな動き

消費税率の改定など滅多なことでは無く、そのために百貨店・スーパーの売上にも大きな影響が生じている。そこで2014年3月と4月、そしてその1年後にあたる2015年3月と4月の売上前年当月比を抽出したのが次のグラフ。

↑ 百貨店・スーパーの売上額(月ベース、前年比、既存店、主要分野別)(2014年3月~2014年4月)
↑ 百貨店・スーパーの売上額(月ベース、前年比、既存店、主要分野別)(2014年3月~2014年4月)
↑ 百貨店・スーパーの売上額(月ベース、前年比、既存店、主要分野別)(2015年3月~2015年4月)
↑ 百貨店・スーパーの売上額(月ベース、前年比、既存店、主要分野別)(2015年3月~2015年4月)

耐久消費財が含まれ、消費税率改定前の「駆け込み需要」の対象となりやすい「その他(住関品など)」は特需として33.9%の上昇幅を示したが、その後の反動が生じる4月では12.1%の下落で済んでいる。

他の項目も似たようなもので、食堂・喫茶を除けば税率改定前の特需による上昇分より、4月の反動分の方が変化率は小さい。税率改定による消費性向の減少は、直前の駆け込み需要を食い尽くすほどのものでは無く、1か月単位では案外軽微なものとして留まったことになる。唯一食堂・喫茶では反動の方が大きいが、これとて金額面では微細なものに済むことから、大きな心配は不必要。ただし反動による需要減退は4月で収束したわけでは無く、5月以降も続くことになる(衣料品や住関品の動向を見るに、直接には7月ぐらいまで続いたようだ)。

またその大きな動きの反動となる2015年3月から4月は、2014年とは逆の動きを示している。ただし全体的な景況感の回復などを受け、反動としての下げ幅は小幅に、上げ幅は大きめになっているところが興味深い。

今件データからは、ここ数年においてクローズアップされているチェーンストアの低迷振りは「1990年代以降露呈していた構造的な問題による売上低迷」に加え「昨今の景気後退による加速化」が加わった、二つの要素によるものであることが分かる。2007年以降の景気後退、さらには2008年のリーマンショックはチェーンストアの業績悪化の全原因では無く、あくまでも既存の現象の後押しをした、加速化させた要因に過ぎない。仮に2007年以降も好景気が続いていたとしても、現状のような状態は遠からず発生したものと見て間違いない。

人口の減少や可処分所得の漸減も、売上減少の理由として考えられる。しかしそれでは、GDPの増加期や好景気の時に、売り上げが伸びないことへの説明がつかない。むしろ今件の百貨店やスーパーにおいては「コンビニやディスカウントストアなどの台頭」「インターネット通販の普及」「家族構成の変化」「消費者の消費性向の変化」など、競合相手の勢力拡大をはじめ、刻々と変わりゆく周辺環境の変化に対応し切れなかった点に、売上低迷の起因があると考えたほうが道理は通る次第ではある。

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経済産業省・商業動態統計調査では百貨店とスーパーの合計値となる大型小売店の値が計上されているため、今回はその値を用いる。

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