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過去70年近くにわたる主要たばこの価格推移をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 駅の売店脇でもよく見かけるたばこの自動販売機。価格は…?(写真:アフロ)

・たばこの価格は1958年から2009年までの間で、主要銘柄では3倍~4倍ぐらいの値上がりをしている。

・総務省の小売物価統計調査で継続して長期間価格が調査されている唯一の銘柄「ピース(10本)」では1959年時点で40円だったものが、2018年4月時点では230円にまで値上がりしいてる。

・60年ほどの間にハイライトは6倍、しんせいは9倍近く、ゴールデンバットは11倍に値上がり。消費者物価指数を加味すれば(消費者物価指数は1959年から2018年の間に約5.8倍に上昇)実質的な価格上昇倍率はかなり下がるが、それでもなおたばこの価格が上昇していることに変わりは無い。

たばこ価格は漸次上昇中

昨今では受動喫煙問題や電子たばこに関する話で見聞きすることが多い、たばこ。そのたばこの価格推移を総務省の小売物価統計調査(※)の公開調査結果から確認する。

日本ではたばこの販売はJT(旧専売公社)の寡占的な事業で、1985年までは専売制だった。現在でも日本国内においては唯一、たばこ製造を許可され、販売している(JT以外の企業では海外からの輸入たばこを販売している)。また地域による価格変動も無い。小売物価統計調査では1950年以降ホープ・ピース・しんせい・ゴールデンバット、そして1960年に発売されたハイライトの計5種類について価格の追跡調査が行われていたため、計測期間における該当銘柄の価格が取得でき「ていた」。

その値を基に生成したのが次のグラフ。ハイライトは1961年以降の調査値の収録なので、1959年の値は1961年のを代用している。

↑ たばこ価格(円)(~2009年)
↑ たばこ価格(円)(~2009年)
↑ 1959年と2009年時点における監視対象銘柄の価格(円)
↑ 1959年と2009年時点における監視対象銘柄の価格(円)

監視対象銘柄すべてにおいて、3倍から4倍程度に値を上げていることが分かる。また、1980年代後半から1990年代後半までの間はたばこ価格にほとんど変動が無かったこと、その時期以外はいずれの銘柄も一定期間毎に値上げを繰り返しているのが確認できる。ピースの初期をのぞき、価格が下がったことは無い。

唯一価格監視が継続できる銘柄はピース

上記グラフはいずれも2009年までのもの。現行では2017年(年次)、あるいは2017年4月(月次)までのデータを取得できるのに、なぜわざわざ古い値を最新値としたグラフを生成したのか、首を傾げる人も多いだろう。実は小売物価統計調査では紙巻きたばこに関する監視対象銘柄を、2010年から大幅に切り替えている。喫煙者の消費性向に従った判断によるものだが、これにより継続データを取得できるのはピースだけとなってしまった。

さらに2012年分からはたばこに関して銘柄の統合が行われ、特定銘柄に関わる調査は無くなり、輸入品と国産品それぞれに指定銘柄(複数、非公開)の平均値が計上されることとなった(総務省に確認済み)。

他方2010年以降では、2010年10月にたばこ税の引き上げ=たばこ販売価格のアップ、2014年4月からの消費税率改定に伴いうたばこの販売価格引き上げ、2016年4月、2017年4月、2018年4月には一部銘柄においてたばこ税や消費税率の変更とは無関係に値上げが実施されている。

そこでピースについてはJTから直接価格を抽出して長期価格変動を精査、残り4銘柄も含めた現在監視対象の銘柄に関しては引き上げ前、そして価格変動時における実情を反映したグラフを生成する。

↑ たばこ価格(ピース、円)(~2018年、2018年は直近月)
↑ たばこ価格(ピース、円)(~2018年、2018年は直近月)
↑ 1959年と2009年時点における監視対象銘柄の価格(価格変更時分追加、円)
↑ 1959年と2009年時点における監視対象銘柄の価格(価格変更時分追加、円)

60年ほどの間にハイライトは6倍、しんせいは9倍近く、ゴールデンバットに至っては11倍にまで上昇している。消費者物価指数を加味すれば倍率はかなり下がるが(消費者物価指数は1959年から2018年の間に約5.8倍に上昇している)、それでもなおたばこの価格が上昇していることに変わりは無い。

たばこの販売価格引き上げはことあるごとに論議の対象として持ち上がっている。そう遠からずのうちに再び価格の変化が生じる可能性はある。それが現実のものとなれば、グラフに変化が見られることになるだろう。

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※小売物価統計調査

国民の消費生活上重要な財の小売価格、サービス料金および家賃を全国的規模で小売店舗、サービス事業所、関係機関および世帯から毎月調査し、消費者物価指数(CPI)やその他物価に関する基礎資料を得ることを目的として実施されている調査。

一般の財の小売価格又はサービスの料金を調査する「価格調査」、家賃を調査する「家賃調査」および宿泊施設の宿泊料金を調査する「宿泊料調査」に大別。価格調査および家賃調査については、全国の167市町村を調査市町村とし、各調査市町村ごとに、財の価格およびサービス料金を調査する価格調査地区(約27000の店舗・事業所)と、民営借家の家賃を調査する家賃調査地区(約28000の民営借家世帯)を設けている。また、宿泊料調査については、全国の99市町村から320の調査旅館・ホテルを選定している。

価格調査および家賃調査の調査市町村は、都道府県庁所在市、川崎市、相模原市、浜松市、堺市および北九州市をそれぞれ調査市とするほか、それ以外の全国の市町村を人口規模、地理的位置、産業的特色などによって115層に分け、各層から一つずつ総務省統計局が抽出し167の調査市町村を設定している。宿泊料調査では、都道府県庁所在市又は全国の観光地の中から宿泊者数の多い地域を選定し、99の調査市町村を設定している。調査市町村ごとに宿泊者数の多い旅館・ホテル等を調査宿泊施設として選定している。

価格調査については、調査員が毎月担当する調査地区内の調査店舗などに出かけ、代表者から商品の小売価格、サービス料金などを聞き取り、その結果を調査員端末に入力する。家賃調査については、原則として調査世帯を訪問し、世帯主から家賃,延べ面積などを聞き取り、同様に調査員端末に入力する。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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