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単身男性高齢世帯では79.2%…エアコン普及率の詳しい現状をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 夏に向けてエアコンを新規導入する世帯も増えてくる今日この頃。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・エアコンの普及率は単身世帯で81.7%、二人以上世帯で91.1%(2018年)。

・男性高齢者の単身世帯(男性のお年寄り一人身世帯)では2割強がエアコンの無い状態。

・給与住宅や民間賃貸住宅では、特に単身世帯のエアコン普及率が低い。

住宅の密閉性の向上などに伴い、エアコンは人々の生活に欠かせない家電となっている。その普及率の直近年分となる2018年3月末時点の現状を、内閣府の消費動向調査(※)の結果から確認する。

次に示すのは直近年分における、世帯主の男女別・年齢階層別でクロス区分した、単身世帯と二人以上世帯それぞれのエアコンの普及率。

↑ 世帯主男女別・年齢階層別エアコン普及率(2018年3月末)
↑ 世帯主男女別・年齢階層別エアコン普及率(2018年3月末)

エアコンの普及率は単身世帯で81.7%、二人以上世帯で91.1%。二人以上世帯よりも単身世帯の方が普及率は低い。中でも男性高齢者の単身世帯(つまり男性のお年寄り一人身世帯)では、79.2%に留まっている。逆算すると2割強はエアコン無しと回答していることになる。

続いて回答世帯の住宅所有関係別の実情。

↑ 住宅所有関係別エアコン普及率(2018年3月末)
↑ 住宅所有関係別エアコン普及率(2018年3月末)

賃貸住宅や給与住宅の単身世帯での低さが目立つ。特に単身世帯の給与住宅(社宅や官舎など)住みの人では4割近くがエアコン無しという実情が浮かび上がってくる。逆に二人以上世帯の給与住宅住みの普及率が高いのは、夫婦向けとしてエアコンがあらかじめ完備されているケースが多いからだろうか。

最後は世帯年収別。なおグラフの表記上、一部の属性では「以上」を省略している。例えば「300~400万円未満」は「300万円以上400万円未満」を意味する。

↑ 世帯年収別エアコン普及率(2018年3月末)
↑ 世帯年収別エアコン普及率(2018年3月末)

一部凸凹があるものの、二人以上世帯・単身世帯ともに大よそ高年収ほどエアコンの普及率は高い。また二人以上世帯の方が単身世帯よりも高い普及率を示している(年収1200万円以上の単身世帯は集計対象世帯数が6人と少数のため、統計上のぶれが生じている可能性がある)。

前者はエアコンそのものが設置料も含めるとそれなりの導入コストが必要になるのに加え、ランニングコストも高いハードルとなるため。もっとも初期投資額に関しては、最近の賃貸住宅は初めからエアコンが設置されている物件も多く、あまり考慮は必要無いのかもしれない。

後者は単身世帯の場合、「自分が我慢すれば無くてもよい(他人への配慮が不要)」「お財布事情」など、単身世帯における普及率を押し下げる事情が想定される。なお、今件の一人暮らしには若年層だけで無く、(特に定年退職後に配偶者と死別・離別した)高齢者も含まれていることに注意しなければならない。

体力の衰えや地域社会との接触の難しさから、特に定年退職後に生活環境が一変する男性高齢者は、室内に閉じこもることが多くなる。そのような環境下でエアコンが無いとなれば、室内での熱中症のリスクが懸念される。さらに万一そのような病症に陥っても、誰にも気が付かれないまま病状が悪化する可能性が高い。まずはエアコンの設置が欠かせない。単身世帯、特に高齢者世帯では、エアコンの普及率向上は健康リスクの観点では急務の課題に違いない。

エアコンが設置されているとしても、震災起因の電力節約志向の高まりに伴う意識的な、あるいは温度の変化を感覚的に認識しにくい高齢層の増加に伴い無意識に、必要不可欠な状況でもエアコンを使わず、健康被害が発生してしまう可能性がある。室内で熱中症が発生した際に、その現場にエアコンがあるにも関わらず稼働していなかったケースは確かに少なからず存在する。

夏に向けて自分自身はもちろんだが、身の回りで熱中症のリスクが高そうに見える人に対しても、十分な配慮が求められよう。

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※内閣府の消費動向調査

今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することにより、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査時期は毎月1回で、調査時点は毎月15日。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。

毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の普及・保有状況」を今件精査では用いている。これは「回答者の世帯において対象品目を回答時点(直近分の場合は2018年3月末時点)で持っているか否か」「持っている場合は保有数量はどれほどか」を尋ねた結果。具体的な利用状況は尋ねていない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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