Yahoo!ニュース

高校生はスマートフォンで17.4%…小学生から高校生の電子書籍利用の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ スマートフォンはインターネットの窓口。ならば電子書籍も…?!(ペイレスイメージズ/アフロ)

・小学生から高校生でスマートフォンを使ってインターネットをしている人のうち、電子書籍を利用している人は15.5%。ノートパソコンでは6.7%(2017年)。

・各属性全体比では小学生から高校生全体のうち、7.8%がスマートフォンを使って電子書籍を利用している。

・高校生に限ると約17%がスマートフォンを使って電子書籍を利用している。

紙媒体による出版業界を大きく揺るがしているのがインターネットの存在だが、同時にそれを紙代わりのインフラとして用い、デジタルによる書籍の提供・販売を行うことで、時代の流れに乗る動きもある。スマートフォンをはじめとするインターネットの窓口となる端末が急速に普及する昨今、子供達の間に電子書籍はどこまで浸透しているのか。今回は内閣府が2018年3月に確定報を発表した「青少年のインターネット利用環境実態調査」(※)の報告書から、小学生から高校生における主要なインターネット接続端末を用いた、電子書籍の利用状況を確認する。

次に示すのは主要なインターネットへの接続可能媒体でインターネットを利用している人における、電子書籍の利用状況。設問表では「何をしているか」の対象として「電子書籍」とのみ記述され、具体的な説明は無い。厳密には電子書籍と電子雑誌は別物扱いされることが多いが、今件では「インターネット上で読める本や漫画、雑誌など」すべてを対象としていると判断し、回答したものと見た方が間違いは無い。また有料・無料の別の設定も無いため、単純に閲読しているか否かを答えてもらったものと見なす。

なお該当しそうな機種のうち子供向け娯楽用タブレットは当てはまる人数が総数で4人しかいなかったので、統計的に問題があるため省略している。また学習用タブレットは総数が108人だが属性別の仕切り分けでは数十人しかいないため(たとえば高校生は男子9人・女子5人の計14人)、参考値として取り扱い、グラフには掲載するが検証の対象にはしない。また一部属性で空欄の部分があるが、その属性では回答者自身が存在しないことを意味する。

↑ 電子書籍利用者比率(2017年、該当機種でインターネットを利用している人限定)
↑ 電子書籍利用者比率(2017年、該当機種でインターネットを利用している人限定)

パソコンでは女子中学生でデスクトップパソコンが17.1%の値を計上しているが、それ以外の属性では1割にも満たず、総数でも6.1%のみ。

タブレット型端末は小学生ではパソコンとあまり変わらない、むしろ低い値だが、中学生や高校生では大きく伸び、1割強の値を示す(男子高校生では9.5%だが)。他方スマートフォンでは中学生で1割強、男女別では女子の方が積極的に電子書籍を利用している。高校生になると男女の差はほぼ無くなり、2割近く。スマートフォンを使ってインターネットを利用している高校生のおよそ1/5は、電子書籍を利用している計算になる。

インターネット利用端末の利用者における電子書籍の利用状況としては、スマートフォンが一番、タブレット型端末が2番、パソコンはひかえめといった形(学習用タブレットは上記の通り利用者少数で統計上のぶれが懸念されるため除外する)。またスマートフォンでは中学生から積極的に読み進められ、高校生では2割近い閲読率を示している。

しかしこれは該当端末でのインターネットの利用者限定。電子書籍の現状を把握するためには、むしろ各属性毎の利用状況を知りたいところ。そこで各属性における電子書籍利用率を算出した結果が次のグラフ。例えば総数のスマートフォンは7.8%の値が出ているので、小学生から高校生を合わせた全体のうち7.8%、およそ13人に1人はスマートフォンで電子書籍を利用していることになる。

↑ 電子書籍利用者比率(2017年、各属性全体比)
↑ 電子書籍利用者比率(2017年、各属性全体比)

元々各該当端末によるインターネット利用率が低い小学生は、誤差の範囲に収まる利用率しかない。実質的に「読んでいる人はナシ」と見ても構わないレベル。中学生になるとスマートフォンやタブレット型端末では利用率の高さが後押しする形でそれなりの利用者率を示す。

そして高校生。スマートフォンそのものの利用率が圧倒的な値を示していることから、それを用いた電子書籍の利用者率もグンと跳ね上がる。高校生全体の17.4%、およそ6人に1人はスマートフォンで電子書籍を閲読している計算になる。タブレット型端末の場合はおよそ59人に1人。

今件調査は小学生から高校生を対象としたものであるため、当然大学生以上の大人の動向は把握できない。ただ、例えば総務省の通信利用動向調査によれば2015年末時点でインターネット利用者に限定した場合、男性40代でも8.0%に過ぎないとの結果が出ている(2016年分以降の調査では該当項目は存在しないので、これが最新値)。

↑ 電子書籍の購入者比率(2015年末、インターネット利用者限定、無回答調整なし)(通信利用動向調査から筆者作成)
↑ 電子書籍の購入者比率(2015年末、インターネット利用者限定、無回答調整なし)(通信利用動向調査から筆者作成)

調査様式が異なるため単純比較はできないが、高校生のスマートフォンによる電子書籍の閲読意欲は相当高いと見てよいかもしれない。

■関連記事:

ゲームの友な雑誌達の実情は…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向をさぐる

電子書籍は今や専用リーダーよりタブレット型端末が好まれる時代…米国電子書籍事情

※青少年のインターネット利用環境実態調査

直近年度分は2017年11月3日から12月3日にかけて2017年11月1日時点で満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(保護者は訪問配布訪問回収法)で行われたもの。時間の調整ができない場合のみウェブ調査法(保護者は加えて郵送回収法)を併用している。有効回答数は青少年が3288人(うちウェブ経由は122人)、保護者は3469人(うちウェブ経由は44人、郵送回収法は26人)。過去の調査もほぼ同じ形式で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事