育児系雑誌の部数動向をさぐる
・育児系雑誌の2017年第4四半期(10~12月)における印刷証明付き部数では、前年同月比でプラスなのは「PHPのびのび子育て」「初めてのたまごクラブ」の2誌。
・「初めてのたまごクラブ」は電子版やミニサイズ版の同時展開、有益な付録がポイント。
・「PHPのびのび子育て」は分かりやすい話題の切込み方、手に取りやすいビジュアルが人気の要か。
育児に関する情報はいくらあっても足りないと感じるもの。情報取得のために雑誌は必要不可欠な存在ではあったが、最近はインターネットに主役の座を奪われつつある。現状について育児系雑誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む)から確認する。
現在印刷証明付き部数の公開ページで取得できる、該当ジャンルの雑誌は8誌。次に示すのは直近にあたる2017年第4四半期(10~12月)における部数の実情と、前年同期比の部数動向。印刷物は季節により販売数の変化が大きく生じるため、季節変動を考慮しなくてもよい前年同期比の方がすう勢を見るのには適している。
少子化は育児系分野の市場縮小の一要因。しかしその市場は単純な子供の人数の減り方をはるかに超えるスピードで縮小している。そして核家族化などを考慮すれば、口頭伝達の教え手となる祖父母が身近にいる育児世帯は数を減らしていき、育児情報の需要は増えることから、切り口次第ではチャンスは多い。もちろん同時にインターネット、中でもスマートフォンやタブレット型端末を利用した主婦層による利用の普及が進んでおり、子育て層に向けた情報・コミュニティサービスも充実しており、雑誌ならではの提案が求められる。例えば蓄積性、専門性、正確性、実物品の提供などが思い浮かぶ。
盛況を博していた「ベビモ(Baby-mo)」だが、最近は姉妹誌の「プレモ(Pre-mo)」とともに低迷気味。同誌は充実した冊子内容と有益な付録が好評を博しており、毎号大きな話題を集めていた。「ベビモ」の中期的な動向を確認すると、育児系だけに限らず、雑誌全般でも注目に値する堅調さを示していた。確かな支持層を確保し、信頼を得ることで口コミにより新たな読者層が逐次生まれ、さらにそのような状況に甘んじること無く常に改善を模索し、それが功を奏していたように解釈できる。しかしながら2015年後半から大きな失速を見せている。何らかの方針転換がなされ、それが読者の動きにつながったのだろうか。
他方、「初めてのたまごクラブ」はプラスを計上。
「初めてのたまごクラブ」は季刊誌で該当発行誌は1誌。「妊娠がわかったばかりの『わからないこと』『不安なこと』を解消する情報をこの1冊にぎゅっとまとめました。医師監修の信頼できる情報満載で、あなたの妊娠生活を応援します」のキャッチコピーにある通り、不安を持つことの多い妊娠したばかりの女性に様々な観点から情報の提供を行っている、教本的な存在。通常版は電子版も展開し、またハンディサイズ版(B5変型判、内容は同じ)も存在する。特別付録の母子手帳ポーチやマタニティマークストラップも嬉しいところ。
部数動向の限りでは2016年第3四半期で大きく上昇を示し、それ以降は安定した部数動向に移行している。何らかの方針転換があり、それが功を奏しているのだろうか。掲載情報への評価が極めて高いことから、口コミでよさが広まっているのかもしれない。
「PHPのびのび子育て」も大きな伸びを示している。
該当期間の発行誌は3号分。特集内容を確認すると「子どもに『すぐ効く』最高のひと言」「『困った子』『心配な子』ほど大きく伸びる!」「子どもを『怒る』のは、やめられる!」のような、素朴だがあるある話的な、子供を持つ保護者の疑問が分かりやすい形でコピー化されており、手に取りやすいものとなっている。表紙のデザインが絵本的なのもポイントだろうか。
また部数動向を見直すと、ここ2年ほどは大きな上下を繰り返しながら、平均としては上昇に転じた気配も感じられる。2015年末を底として、販売動向に変化が生じたとの解釈もできよう。
少子化だけで無く情報伝達媒体の多様化もあり、紙媒体は多ジャンルで厳しいビジネス環境下にある。しかしながら育児系雑誌ではその特異性もあり、雑誌ならではの付加価値を見出せる構成を示すことで、不調を乗り越える可能性を秘めている。育児情報を求める人たちにとって頼りになる存在となることができるか否か、出版社や編集部の力量が問われるところだ。
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