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ゲームの友な雑誌達の実情は…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ かつてはゲームをする際にも専門誌は必要不可欠な存在だったのだが…。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・2017年10~12月期でゲーム・エンタメ系雑誌の印刷証明付き部数トップは「Vジャンプ」の18.0万部。

・部数では「アニメージュ」が第2位、そして「アニメディア」「PASH!」が続く。

・部数の前四半期比では「声優アニメディア」「アニメージュ」「PASH!」「声優グランプリ」がプラス。前年同期比では「声優グランプリ」のみがプラス、それ以外はすべてマイナス。

トップはVジャンプ…部数の現状

インターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視される、ゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる昨今。ゲームやエンタメ専門誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む)からさぐる。

まずは最新値にあたる2017年の10~12月期分と、そしてその直前四半期にあたる2017年7~9月期における印刷証明付き部数をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 2017年7~9月期と2017年10~12月期における印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌)(万部)
↑ 2017年7~9月期と2017年10~12月期における印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌)(万部)

いくつかの雑誌で青よりも赤の方が短め、つまり部数が減少している様子が分かる。他方、差異はさほど無いように見えるが、いくつかの雑誌で赤の方が長い、つまり部数が伸びている雑誌もある。最大部数を示しているのは「Vジャンプ」だが、前四半期よりは減少してしまっている。

現在印刷証明付き部数を計上しているゲーム・エンタメ誌は、現時点で7誌。日本雑誌協会の情報公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」に該当する雑誌は皆無(ジャンル区分そのものは今なお存在している。かつては「マック・ピープル」「ネットワークマガジン」などがあった)、「ゲーム・アニメ情報誌」でも6誌にまで減少しているのが現状。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

前四半期からの変化を確認

次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が配慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2017年10~12月期、前期比)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2017年10~12月期、前期比)

プラスを示したのは「声優アニメディア」「アニメージュ」「PASH!」「声優グランプリ」の4誌で、うち「声優アニメディア」「アニメージュ」は誤差領域(上下幅5%以内)を超えている。「声優アニメディア」では特定の声優への特集が表紙掲載とともに行われており、これが読者から好評のようだ。もっとも実部数は1万4067万部で、前期からの増加は1234部。少々物足りない感は否めない。

他方マイナスは3誌で、そのうち誤差を超えた下げ方は1誌、「Vジャンプ」。今ジャンルではもっとも部数が大きい同誌でこの下げ幅は実数の下げ方も大きなものとなる。

↑ Vジャンプ印刷証明付き部数(部)
↑ Vジャンプ印刷証明付き部数(部)

同誌は特集や付録で多分の上下感を見せるものの、大よそボックス圏(青色)内での部数を示しており、2012年に新たなボックス圏(黄色)を形成した後は、その下層での動きに終始。2017年1~3月期に底を叩いた雰囲気を見せ、その後回復を示したが、今四半期ではついに底が抜けてしまった。中期的にはさらにボックス圏を再設定しないといけない状態だと判断できる。

ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式だったはず。その方程式にゆがみが生じたのか、あるいは代入できる要素=ゲームが空振り状態なのか。

なお「Vジャンプ」では電子雑誌方式に関しては、紙媒体誌を購入した人限定で閲覧できる仕組み「購入者特典」の形での提供。電子書籍版のセールスが伸びたので今件値(紙媒体として印刷された部数)が減っているとの解釈は難しい。

前年同期比ではどうだろうか

続いて前年同期比における動向を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べれば長期間の動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2017年10~12月期、前年同期比)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2017年10~12月期、前年同期比)

誤差領域を超えたプラス計上誌は1誌「声優グランプリ」。同誌はここ数年は2万部前後を行き来している状態で、今期はたまたま前年同期がやや軟調だったためにその比較の結果、プラスを計上した感が強い。特に際立った成長などの気配は無い。

↑ 声優グランプリ印刷証明付き部数(部)
↑ 声優グランプリ印刷証明付き部数(部)

他方、マイナスは6誌で、うち4誌が誤差領域を超えた5%超、そのすべてで1割を超えている。「Vジャンプ」に至っては2割超えの下げ幅。下方トレンドに陥った可能性がある。「PASH!」は半数近い下げ幅だが、これは前年同期で「ユーリ!!! on ICE」による特需が生じたことによる大幅増加の反動による影響が大きい。

アニメ関連雑誌としてはライバル的な存在、関連業界では「三大アニメ誌」とも呼ばれている、具体的には「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」の動向。「ニュータイプ」の部数が非公開となったため、今回も残り「アニメージュ」「アニメディア」のみ、データの継続反映をさせた上で、状況の精査を続ける。

「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起きた後、そのポジションが維持されたまま、3誌とも部数を下げていた。その後順位はしばしば入れ替わり、もみあいの形を維持している。最近では1年前の2016年第1四半期で両誌とも「おそ松さん」特需で跳ねた際に立ち位置が逆転し、その状態が現在まで続いている。

↑ 三大アニメ誌の印刷証明付き部数(部)(2017年10~12月期まで)
↑ 三大アニメ誌の印刷証明付き部数(部)(2017年10~12月期まで)

直近値では「アニメージュ」4万5450部、「アニメディア」3万4567部。両誌とも特需反動で部数を落としているが、前四半期と比べると、両誌の差異はやや広がった計算となる。

非公開化直前の「ニュータイプ」は「アニメージュ」「アニメディア」とさほど変わらない部数だったことから、昨今のつばぜり合いにおいてどのようなポジションを示しているのか、大いに気になるところ。しかし非公開である以上、その願いはかなうことは無い。

日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も今ジャンルの低迷は続くことだろう。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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