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就業形態別の「正規の仕事が無いので非正規で」の人の実情

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 数ある選択肢の中で非正規を。その理由を「正規が無くて仕方なく」とした人は。(写真:アフロ)

・2017年で非正規社員のうち「正規の職員・従業員の仕事が無い」から就業したとの人は男性で22.7%、女性で10.5%。

・女性のパートやアルバイトは9割強、男性は7割から8割が望んで非正規社員として働いている。

・「正規で働けないから仕方なく非正規で」は、大よそ男性中堅層の問題。

景況感や労働市場の変化に伴い大きな注目を集めているのが、いわゆる非正規社員問題。その非正規社員の立場で働く人たち自身は、どのような理由で現職にあるのかを、総務省統計局が2018年2月に発表した、2017年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果を基に、【非正規社員の人達はなぜ非正規として働いているのだろうか】で確認した。今回は少し視点を変え、非正規社員の立ち位置をもう少し細分化した上で、さらに「正規の職員・従業員の仕事が無いから」との回答理由の動向を見ることにする。

現在非正規社員(非正規職員・従業員)として就業している人において、なぜその立場にいるのか、主な理由を挙げてもらった結果は次の通り。選択肢「自分の都合のよい時間に働きたい」「家計の補助・学費などを得たい」「家事・育児・介護などと両立しやすい」「通勤時間が短い」「専門的な技能などを活かせる」「正規の職員・従業員の仕事が無い」「その他」のうち、本来は非正規での就業を望んでいなかった、つまり自分では望まずに非正規就業をしていると判断できる「正規の職員・従業員の仕事が無い」は、男性で22.7%、女性で10.5%との結果が出ている。

↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2017年)(理由明確者限定)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2017年)(理由明確者限定)

この「望まずに非正規社員」について、非正規の就業スタイルの詳細によって大きな違いが生じているのでは、との意見もある。そこで非正規の就業状態につき、「パート」「アルバイト」「労働者派遣事業者の派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」に細分化し、それぞれについて各上記選択肢から「現職就業の主な理由」を挙げてもらい、そのうち「正規の職員・従業員の仕事が無い」の値を算出したのが次のグラフ。男女で就業状況に大きな違いがあるため、男女別の仕切り分けも行う。

↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(「正規の職員・従業員の仕事が無いから」)(2017年)(詳細就業形態別)(万人)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(「正規の職員・従業員の仕事が無いから」)(2017年)(詳細就業形態別)(万人)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(「正規の職員・従業員の仕事が無いから」)(2017年)(詳細就業形態別)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(「正規の職員・従業員の仕事が無いから」)(2017年)(詳細就業形態別)

男女ともに主な理由として「望まずに非正規社員」の値が高いのは、派遣や契約社員。男性派遣社員では4割近くとなっている。他方、パートやアルバイトでは男性が1割から2割程度、女性は1割足らず。

最初のグラフの通り、元々女性よりも男性の方が該当選択肢の回答率が高いため、多くの就業状態でも男性の方が高い値を示している。もっとも非正規就業者人口そのものは女性がはるかに上なため、人数で見るとパートや派遣社員で女性の方が上との結果が出る。特にパートの女性は56万人が「望まずに非正規社員」状態。

また今件「望まずに非正規社員」以外は望んで選択した具体的内容なため、100%からこの値を引いた結果が「望んで非正規社員」となる。女性のパートやアルバイトは9割強、男性は7割から8割が望んで非正規社員として働いていることになる。一方派遣社員は男性が6割強、女性はほぼ7割、契約社員では男性7割強、女性では3/4程度に留まっている。

さらに年齢階層別に仕切り分けすると次の通りとなる。ただし今件項目は元値が1桁のものが多く(元々万人単位での公開値で、しかも年齢階層別に仕切り分けしているため、値が小さなものとなる)、かなり荒い、誤差が懸念される結果となっている。あくまでも大よその動きを見極める程度のもの。

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↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2017年)(理由明確者限定)(男性/女性、年齢階層別)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2017年)(理由明確者限定)(男性/女性、年齢階層別)

男性では「時間の都合のよい時に」は学生が多く含まれる若年層と定年退職後の人、「家計の補助」は若年層と高齢層、「技術を活かしたい」のは高齢層に多く見受けられる。そして「正規が無いから仕方なく」は中堅層に多い。高齢フリーターもここに少なからずが含まれているのだろう。

女性では「時間の都合」がかなり多く、「家計の補助」が続く。また「家事や育児などとの両立」は中堅層に多い。主婦のパートやアルバイトが該当すると見れば道理は通る。「正規が無いから仕方なく」との回答は25~34歳層でやや多いものの、男性と比べると随分と少なめではある。

この結果の限りでは、「正規で働けないから仕方なく非正規で」は、大よそ男性中堅層の問題であることが分かる。

今件で注意しなければならないのは、精査した選択肢「正規の職員・従業員の仕事が無いから」にはいくつかの意味がある点。具体的には「当事者は正規社員として就業できる技能がある。しかし適切な該当求人が無い」、そして「当事者の技能が低く、就業可能な正規求人が無い」の2パターン。さらに当事者自身が自分の技能に関して正しく認識している場合もあれば、認識ができていない可能性もある。

仮に非正規の求人が正規にシフトしたとしても、今回スポットライトを当てた「望まずに非正規」な回答者すべてがその枠に収まる、就業ラインに達しているとは限らない。その他の希望条件ともあわせ、就業のマッチングは一筋縄ではいかないのが実情ではある。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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