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元正規社員と元非正規社員と…失業者の推移をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 失業は生き甲斐、生活の糧を失うだけでなく、自己否定にも。雇用形態で違いは。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・2017年において前職が正規社員だった完全失業者数は32万人。派遣社員は5万人、パート・アルバイトは23万人。

・正規、非正規を問わず完全失業者数は2009年をピークに大よそ減少しつつある。

・現職の人数に対するその職にいた人の完全失業者数の割合は派遣社員がもっとも大きい。

労働市場に関わる状況の変化において、注目を集めている事象の一つが非正規社員問題。先日総務省統計局から発表された労働力調査の2017年分の結果を基に、雇用形態別の失業者の動向を確認していく。

直近となる2017年では、正規社員は2016年の3367万人から2017年には3423万人となり、都合56万人増加している。一方で非正規社員は2016年の2023万人から2017年には2036万人となり、13万人の増加。結果として雇用者全体は正規・非正規合わせ(役員を除き)5460万人となり、前年の5391万人から69万人の増加となった。

前職の雇用形態別に離職した完全失業者(「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」の3条件すべてに当てはまる人)数の推移を確認すると、前年より契約社員・嘱託は増加、それ以外は減少している。「仕事をしたくて職を探しているが見つからない人」の減少は、少なくとも雇用される・されないとの観点では労働市場が改善していることを意味する。

↑ 前職の雇用形態別、離職した完全失業者の推移(万人)
↑ 前職の雇用形態別、離職した完全失業者の推移(万人)

今データはあくまでも「過去1年間に前職を離職した者のうち」との前提があることに注意しなければならない。つまり「失業期間が1年以上」(なかなか再就職先が見つからない)の人は今グラフには反映されていないことに留意する必要がある。

この「就職浪人1年超」に該当する人は2016年の77万人から2017年には66万人に減少している。「正規社員増加」「パート・アルバイト増加」の状況とつき合わせて見るに、離職した人・していた人が、さまざまな雇用形態で雇われる事例が増えているものと思われる。

元派遣社員に対する風当たりの強さは継続中だが、少しずつ風は収まりつつある。次のグラフは各雇用形態別に「その時点で雇用されている人数」に対する、「前職でその雇用形態にいた人の完全失業者数の割合」を算出したものだが、元派遣社員の値がいまだに他の職種と比べれば高い値を示している。現状は27人派遣社員が雇われている場合、それとは別に1人が「元派遣社員の完全失業者」(失職してから1年未満)として存在する計算になる。

↑ 完全失業者の雇用者に対する比率の推移
↑ 完全失業者の雇用者に対する比率の推移

パートやアルバイト、正社員と比べて派遣社員は元々の人数が1ケタ少ないため(派遣社員は134万人、パート・アルバイトは1414万人、そして正規社員は3423万人)、単純な比率計算では「ぶれ」が生じている可能性はある。ただし10年以上同じ計算式で同様の結果が出ていることから、その誤差は十分無視できる範囲に収まっていると考えてよい。解雇された派遣社員(の割合)の相変わらずの多さが認識できる。

完全失業者数の絶対数は元正規社員の立場にある人が一番多い(2017年は32万人)。しかし同じ雇用形態で現在働いている人に対する完全失業者数の比率を算出すると、元派遣社員の値が一番大きくなる。同じ雇用形態で再び就職を望む人が多い実態を考慮すれば、元派遣社員の辛さが再認識される次第である。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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