世界各国の天然ガスの輸出入量の実情をさぐる

↑ 天然ガスは陸続きならばパイプラインを使って安価に輸出入は可能。(写真:アフロ)

・天然ガス輸入量のトップは日本。震災以降輸入量は急増。

・アメリカ合衆国はかつて天然ガスの輸入量トップだったが、自国でのシェールガス生産の増加により輸入量は漸減してトップから脱落。

・天然ガス輸出量のトップはロシア、次いでカタール、ノルウェー、カナダ。

環境に与える負荷が小さく、埋蔵量の多さや技術の進歩で採掘可能な量が増えたため、エネルギー源として重要視されている天然ガス。その輸出入量の実情をアメリカ合衆国のエネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)の公開データベースの値を基に確認する。

天然ガスは輸出国と輸入国の間が陸続きの場合はその多くがパイプラインで、海をへだてた場合はLNGに転換された上で輸出入が行われる。LNGとは「Liquefied Natural Gas」、つまり液化天然ガスの略で、天然ガスを運びやすく・貯蔵しやすくするため、凝縮して液化させたもの。1959年にはじめて生産され、天然ガスの大規模な海上輸送を可能とした画期的な手法であり、天然ガスの利用を促進させるものとなった。

昨今では天然ガスは環境負荷が小さいこと、埋蔵量が原油と比べて多いこと、そして技術の進歩によってこれまで「採掘困難、採算が取れない」とされてきた「非在来型天然ガス」の多くが採掘可能となり、「採掘可能量」(確認埋蔵量。現在の技術で経済的に採掘できる量。採掘そのものは可能でも採算が取れないものはカウントされない)が増加していることなどから、大いに注目を集めている。

この天然ガスを消費するにあたり国内生産量で足りなければ、他国から調達しなければならない。逆に国内消費量以上の生産がおこなえる国では、無理に生産しなくてもよく、余った分を貯蔵したり輸出する事も可能となる。そこで輸出・輸入量についてまとめたのが次のグラフ。

↑ 天然ガス輸入量トップ10(兆立法フィート、2010~2014年)
↑ 天然ガス輸入量トップ10(兆立法フィート、2010~2014年)
↑ 天然ガス輸出量トップ10(兆立法フィート、2010~2014年)
↑ 天然ガス輸出量トップ10(兆立法フィート、2010~2014年)

輸出量は最大の埋蔵量、生産量では第2位を誇るロシアがトップ。原油同様に天然ガスの価格もまた、ロシアの財政を大きく左右しうる要因であるのが分かる。先のウクライナ情勢においては、輸出先のヨーロッパ諸国に対する有効な切り札として用いられた(直接切るのでは無く、大きなプレッシャーとして、存在するだけで意義がある類の「札」)。昨今の中東情勢においてロシアの挙動が不審に見えるのも、天然ガスなどの化石燃料資源に関わる思惑もあると見てよいだろう。そしてカタール、ノルウェー、さらにはカナダが続く。

一方輸入国では生産量も多いアメリカ合衆国が、2010年時点ではトップだった。ところが2011年以降はそのアメリカ合衆国を追い抜く形で、日本がトップについている。これはいうまでも無く、先の東日本大地震・震災による電力事情・エネルギー政策の激変・迷走に伴い、天然ガスを用いた火力発電所の需要が急上昇したからに他ならない。カントリーリスクの点では間違いなくマイナスであり、憂慮すべき事態ではある。そしてその憂慮すべき状況は直近分の2014年でも変わらず、さらに輸入量を上乗せさせている。逆にアメリカ合衆国では国内生産量の増加を受け、輸入量は漸減状態にある。

↑ 天然ガス生産量トップ10(兆立法フィート、2011~2015年)
↑ 天然ガス生産量トップ10(兆立法フィート、2011~2015年)

その他の国の動向としては、特に中国の輸入量の急増が目につく。生産は増加しているが、消費量の増加度合いがそれを上回るスピードであるため、足りない分を輸入で補ってる状態に違いない。

天然ガスは環境負荷が小さいことや扱いやすいこと、技術の進歩で運搬が容易になり、採掘量も増加しつつあることから、注目を集めている。特に日本では震災以降、火力発電所の燃料として石炭とともに需要が急増しており、今回のデータではそれが明確な形で数字化されている。

天然ガスとて商品には違いなく、タダでは輸入できない。そして常に100%安全確実に必要量が輸入できる保証は無い。さらに自国での埋蔵・生産量と照らし合わせて考えてみれば、いかに細い綱を渡っている状態なのかが理解できよう。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。