「夫婦別姓選択」意向の年齢階層別のギャップの実情をさぐる

↑ 結婚すると同じ名字を名乗る必要が。選択式に法を変えようとの意見もあるが。(写真:アフロ)

・法改正による選択的夫婦別氏制度を望む人は若年層に多く、現行法の維持を望む人は高齢層に多い。

・10年前の結果と比べても、年齢による選択的夫婦別氏制度への姿勢の違いに大きな違いは無く、世代による思惑では無い。

・今世紀に入ってから全体としての選択的夫婦別氏制度への姿勢はほぼ同じような状態。

内閣府が2018年2月に発表した「家族の法制に関する世論調査」(※)の結果によると、法的に婚姻状態にある夫婦が同じ名字(姓)を名乗らねばならない現行の法令制度に関し、現状を維持すべきだとする意見は3割近くいることが分かった。大まかな傾向としては、大よそ若年層ほど「旧姓選択可能に法律変更派」が多く、年齢が上がるに連れて「現行法維持派」が多くなる。「同じ姓を名乗るべきだが、元の姓を通称として使えるようにすべき」とする意見も、若年層の方が同意派は多い。

↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(2017年11~12月)(男女、年齢階層別)
↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(2017年11~12月)(男女、年齢階層別)

仮にこの傾向がそれぞれの「世代」(一定時期内に生まれた人達)特有のものとするならば、10年前は1区切り分若い世代、男女とも60~69歳の層でも「現行法維持派」が多数を占めるはず。そこで同様の調査が行われたほぼ10年前の2006年、そして年齢階層別の値が取得可能なもっとも古い調査となる2001年におけるデータを抽出し、同じようにグラフ化したのが次の図。

↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(2006年11~12月)(男女・年齢階層別)
↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(2006年11~12月)(男女・年齢階層別)
↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(2001年5月)(男女・年齢階層別)
↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(2001年5月)(男女・年齢階層別)

少なくとも過去10年ほどの間においては、「個々の世代に属する人が、夫婦の別氏制度に関して同じ意見を維持したまま、年を取ったという形跡は見られない」。むしろ直近分の2017年において、女性の中堅層までの間で押しなべて「旧姓選択可能に法律変更派」が同じぐらいの割合に達したのが目に留まる。世代のシフトなどでは説明ができず、社会的現象として現役女性の間に、選択的な夫婦別氏制度を肯定する気運が高まったと見るべきか。

もちろん10年前に回答した人がそのまま直近の調査でも答えたわけでは無いので、あくまでも全体的な傾向としての話ではあるが、「同じ意見を持ったまま年を取る」との仮説には結びつかない。

「現行法維持派」の意見を持つ人の動きをまとめたのが次のグラフ。なお調査対象の下限年齢は2012年までは20歳、2017年以降は18歳となっている。

↑ 「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」回答率推移(男女・年齢階層別)
↑ 「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」回答率推移(男女・年齢階層別)

回答世代が年を重ねてもそのまま同じ意見を踏襲するのでは無く、各年齢である程度固定化された意見があり、その一方で時代の流れとともに少しずつ個々の年齢階層の回答に変化が生じると見た方が自然ではある。

全体値の傾向がほぼ同じだった2001年の結果と比べると、男性は20代までは2017年の方が回答率が高い=賛成派が多いのに対し、30代以降は2001年の方が回答率が高い、女性は30代までが2017年の方が高く、40代以降は2001年の方が高い結果が出ている。16年の間に若年層で賛成派が増え、中堅層以降で減り、結果としてバランスがほぼ均等となったようだ。

もう10年・20年とさかのぼり、年齢階層別の動向から世代のシフトを確認できるとよいのだが、残念ながら2001年より前の結果は全体値しか公開されていない。さらに1994年以前は設問の選択肢が大きく異なり(例えば「別姓は許可されるべきでは無いが、通称を使えるように」との選択肢が無い)、厳密には連続性は無い。それでもあえて全体値の動向のグラフ化を行ったのが次の図。

↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(全体、経年推移)
↑ 選択的夫婦別氏制度に関する意見(全体、経年推移)

「通称利用」の選択肢が与えられたこともあり、1996年の調査以降「現行法維持派」が減る動きを示している。2006年から2012年にかけていくぶん値を戻したものの、直近2017年で再び2001年の水準に戻った雰囲気。上記にある通り年齢階層別では構成に違いがあるものの、全体の意見としては直近の2017年の結果は2001年とほぼ同じで、今世紀に入ってからは「現行法維持派」と「旧姓選択可能に法律変更派」が数%ポイントのやり取りをする動きにあると見るべきだろう。

なお高齢層で「現行法維持派」の意見が多数に上る理由は、今件調査からだけでは判断が難しい。年を重ねる=人生経験が長いことを意味していることから、「今までの制度で長年過ごしてきたが、大きな問題は無かった。だから今後あえて制度を変え、混乱のリスクを積み増しする必要は無い」との考えを、高齢者の多くは持っているのかもしれない。

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※家族の法制に関する世論調査

日本全国の18歳以上の日本国籍を有する者の中から層化2段無作為抽出法によって選んだ5000人を対象に、2017年11月30日から12月17日にかけて、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は2952人。男女比は1396対1556、年齢階層比は18-29歳が253人、30代354人、40代525人、50代477人、60代566人、70歳以上777人。過去の調査も同様の様式だが、前回までは20歳以上を対象としている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。