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月ぎめで新聞を取っている人の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 新聞をポストに毎日投函してもらう定期購読スタイル。これが「月ぎめ」。(写真:アフロ)

・月ぎめ新聞購読者は約7割、そのうち全国紙は5割強。

・全国紙を月ぎめで取っている人のほとんどは1紙のみの購読。

・月ぎめ購読者は全国紙やブロック3紙で減少中。県紙・地方紙はほとんど減っていない。

月ぎめ新聞購読者は約7割

新聞を閲読している人の多くは世帯単位で月ごとに契約し、定期購読する「月ぎめ」での購読スタイルによるものとなる。この「月ぎめ」による購読者の実情を、新聞通信調査会が2018年1月に発表した「メディアに関する世論調査」(※)の結果から確認する。

「月ぎめ」は購読者にとっては確実に新聞が入手ができ、新聞社(新聞販売店)には固定客となるため、双方ともにメリットがある。今調査対象母集団では回答時点で70.6%の人が月ぎめで新聞を取得している。

↑ 月ぎめで取っている新聞の有無(2017年度)
↑ 月ぎめで取っている新聞の有無(2017年度)

新聞販売店では複数の新聞を取り扱っている。また複数の販売店とそれぞれ契約し、1世帯で複数の新聞を月ぎめで購入する場合もある。例えば一般紙と業界紙、業界紙とスポーツ紙、さらには複数の一般紙を購読して中身を比較するといった具合。そこで月ぎめで取っている人に対し、どのような種類の新聞を取っているのかを複数回答で聞いた結果が次のグラフ。「全国紙」とは朝日、毎日、読売、産経、日経を、「ブロック3紙」とは北海道、中日、西日本新聞を意味する。

↑ 月ぎめで取っている新聞の種類(2017年度、該当者限定、複数回答)
↑ 月ぎめで取っている新聞の種類(2017年度、該当者限定、複数回答)

全国紙は51.7%。意外に少ないと思う人もいるかもしれない。県紙・地方紙が38.6%、ブロック紙が12.2%。スポーツ紙や夕刊紙、その他の新聞(業界専門紙など)は1割にも満たない。全部を足すと111.0%になるため、同一区分内で複数紙を購読している可能性もあるが、それでも複数購読はさほどいないことが予想できる。

そこで「同一区分内で複数紙を購読」のうち、一番ありそうなパターンとなる全国紙に関して、何紙を取っているかを聞いた結果が次のグラフ。4.8%が複数紙を購読している。

↑ 全国紙を何紙取っているか(2017年度、該当者限定)
↑ 全国紙を何紙取っているか(2017年度、該当者限定)

約21人に1人との割合が多いか少ないかは微妙なところだが、ともあれ全国紙の複数購読者はそれだけいることになる。

月ぎめ新聞購読者の動向

月ぎめによる新聞購読者の動向を経年推移で、さらには属性別で確認していく。まずは経年変化。データが取得可能な2008年度以降に関し、どの種類でもよいので月ぎめで新聞を購読しているか、具体的にどの新聞を取っているか、その変化を見たのが次のグラフ。じわりと減少していくようすが分かる。

↑ 月ぎめで取っている新聞(経年推移)
↑ 月ぎめで取っている新聞(経年推移)

もっとも古い2008年度時点では88.6%だった月ぎめ新聞購読者も、直近の2017年度では70.6%。20%ポイント近い減少を示している。具体的な中身を見ると、地域性の強い県紙・地方紙はほとんど変化が無いが、全国紙とブロック3紙が漸減し、これが全体値を押し下げている様子が分かる。

特に全国紙の減少ぶりは著しく、大よそ2/3に減っている。新聞で読まれている記事の上位には「地元関連」「社会関連」が名を連ねているが、その需要によりマッチした新聞が好まれ取られ続けていることなのだろうか。

これを属性別に見たのが次のグラフ(グラフ描写の都合上、2010年度以降に限定している)。

↑ 月ぎめで新聞を取っている人の割合(属性別、経年推移)
↑ 月ぎめで新聞を取っている人の割合(属性別、経年推移)

18歳から19歳の年齢区分で、2012年度から2013年度にかけて大きく上昇した、非常に特異な動きが確認できる。これは単なるイレギュラー値なのでは無く、新学習指導要領によって小中高校で新聞などを教材として活用することが示されたことを受け、学校などで手に取る機会が増えたことから、自宅でも取る・取ってもらう人が増えたものと考えられる。しかしその勢いも一時的なもので、再び漸減の動きを示しており、直近の2017年度では60.3%にまで減じている。

男女別では特に違いは無く漸減、年齢階層別では60代以降はさほど大きな減少は無いものの、それより若い年齢階層における加速度的な減少ぶりが見られる。特に中堅層における減り方は著しく(縦軸の下限がゼロでは無く40%であることに注意)、他の複数項目でこの層の新聞と距離感を置く姿勢が浮き彫りにされているのが実情ではある。

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※メディアに関する世論調査

直近分となる第10回は2017年11月2日から11月21日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもので、有効回答数は3169人。有効回答者の属性は男性1526人・女性1643人、18~19歳63人・20代274人・30代422人・40代567人・50代504人・60代601人・70代以上738人。過去の調査もほぼ同じ条件で行われている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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