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若者の早食いは本当か…年齢階層別に見た食事の時間の現状と過去からの推移をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 若者の早食いは本当なのだろうか(素材:ぱくたそ)

健康の観点では食事はゆっくりとよくかんで食べるのがよいとされ、当然時間はそれなりにかかる。一方でしたいこと、しなければならないことが増えている昨今では、食事の時間も惜しいからと、特に若年層の間では早食い傾向にあるとの指摘も見受けられる。食事時間の実情はどのような具合なのか、総務省統計局による社会生活基本調査(※)の結果を用いて、食事時間の実情と、過去からの変化を確認する。

まずは直近2016年の男女別・年齢階層別動向だが、大よそ女性の方が食事時間は長い。とはいえ1日あたりの差異は数分程度。20代がもっとも短く、それより年齢が上がるに連れて少しずつ延びていく。

↑ 男女、年齢階層別食事の時間(2016年、週全体、1日あたり、時間:分)
↑ 男女、年齢階層別食事の時間(2016年、週全体、1日あたり、時間:分)

20代でもっとも短くなるのは大学生活や就業してからまだ日も浅く、何かと多忙だったり、自分自身での食事作りが面倒で簡単なもので済ませてしまうからかもしれない。一人暮らしの人も多いのだろう(複数人数での食事は会話もあるため、必然的に時間は長くなる)。とはいえ30代前半までは大きな差異は無く、30代後半以降になると少しずつ延びる傾向にある。70代に入ると2時間を超え、最長時間の年齢階層は男女共に80代前半。若年層と比べると1日あたり食事の時間が30分ほど長くなる計算。1日3食と仮定すると、1食あたり約30分だったのが約40分になるという具合。

食事の時間に関して過去のデータも織り込んで確認して比較したのが次のグラフ。年齢階層の仕切り分けの変更が何度か行われており、今グラフでは直近の様式にあわせていることから、足りない部分は値が入っていない。そのため1986年と1991年では断片的な値のみとなっている。

↑ 年齢階層別食事の時間(1986年~、週全体、時間:分、一日あたり)
↑ 年齢階層別食事の時間(1986年~、週全体、時間:分、一日あたり)

若年層が短く年を取るに連れて延びる傾向に変わりは無いが、10代の食事時間が少しずつ延びているために最短時間の階層がずれていく傾向が見受けられる。直近の2016年では10代後半・20代前半・20代後半がすべて1時間26分で同時間の最短年齢階層となっている。

その階層も併せ20代前半までは昔と比べて今は少しずつ食事時間が延びる一方で、20代後半以降は逆にわずかずつだが縮む動きが確認できる。70代に入ると再び延びる傾向になることから、就業してる人の食事時間が少しずつ短くなっているのかもしれない。

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※社会生活基本調査

5年おきに実施されている公的調査で、直近分となる2016年分は2010年時点の国勢調査の調査区のうち、2016年の熊本地震の影響を受けて調査が困難な一部地域を除いた、総務大臣の指定する7311調査区に対して実施された。指定調査区から選定した約8万8000世帯に居住する10歳以上の世帯員約20万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2016年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2016年10月15日から10月23日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と回収方式。

今調査では生活様式に関して「睡眠」「身の回りの用事」「食事」「通勤・通学」「仕事(収入を伴う仕事)」「学業(学生が学校の授業やそれに関連して行う学習活動)」「家事」「介護・看護」「育児」「買物」「移動(通勤・通学を除く)」「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」「休養・くつろぎ」「学習・自己啓発・訓練」「趣味・娯楽」「スポーツ」「ボランティア活動・社会参加活動」「交際・付き合い」「受診・療養」「その他」の20に区分している。

今回はこの中で「食事」の動向を確認しているが、具体的には「家庭での食事・飲食、外食店などでの食事・飲食。学校給食、仕事場での食事・飲食」が該当する。交際のための食事・飲食は「交際・付き合い」に、おやつなどの間食は「休養・くつろぎ」に分類される。またいわゆる「ながら行為」による時間は含まれない。あくまでも主行動の時間であることに注意が必要。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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