4483.3万人が年に1日以上足を運んでいる…映画館での映画鑑賞実情をさぐる
映画館での映画鑑賞人口は4483.3万人
名作が次々と上映され社会現象も生じている映画業界。苦境にあるとの話もしばしば見聞きするが、実情として一般の人たちはどれほど映画館に足を運んで映画鑑賞をしているのだろうか。総務省統計局による社会生活基本調査(※)の公開値から確認する。
次に示すのは直近となる2016年時点において、過去1年間に1日でも映画館で映画鑑賞をしたことがある人(行動者)の人数と、各属性人口に対する比率。例えば男性総数では36.8%とあるので、10歳以上の男性のうち36.8%が過去1年間に1日以上映画館で映画鑑賞をしたと回答している。
映画館で映画を鑑賞した人は4483.3万人。男性が2030.8万人で女性は2452.5万人。年齢階層別では男性は10代後半がもっとも多く、次いで20代前半、10代前半と続く。10代が多めなのは、子供向けの映画を保護者と共に鑑賞しているのだろう。
他方女性は最大人数を示しているのは意外にも40代前半の250.6万人で、次いで20代前半、10代後半と続く。未成年と中堅層で一定の盛り上がりが生じるのは男女で変わらないが、女性は中堅層の方が多いのがポイント。保護者の立場として子供と一緒に足を運んでいるのがカウントされているものと思われる。
これが対人口比となると、男女共にほぼきれいな形で若年層が高く、20代後半から30代前半にかけて大きく落ち込み、あとは緩やかな減少を示していく。女性は10代前半よりも10代後半から20代前半の方が高い値が出ているのは興味深い。調査期間当時は「君の名は。」が上映中であり、これが少なからぬ影響を及ぼしたのかもしれない。
家族構成別での動向を確認
続いてライフステージ別の動向を確認する。具体的には学生か、独身か結婚しているか、そして結婚していた場合には子供がいるかいないか別に、映画館での映画鑑賞動向を見るもの。男女で大きな違いがあるため、男女それぞれに仕切り分けして別途行動者率を算出している(比較しやすいように男女間で縦軸は揃えてある)。
まず男性。ほとんどの場合、無業者よりも有業者の方が行動者率は高い。時間的な余裕は無業者の方があるはずだが、金銭的な問題か、興味の方向性の差異が出ているのだろうか。独身では若年層の方が行動者率が高く、年を経るに連れて落ちていく。無業者で45~64歳層が増加する傾向があるのは興味深い。
子供がいない世帯では有業者は35歳未満がピーク、無業者は35~44歳がピーク(35歳未満で無業者が空欄なのは有意値が計上されていないため)。自分自身の趣味で鑑賞しているのだろう。他方子供がいる世帯では有業者は大よそ子供が幼いほど行動者率が高い傾向がある。子供向けの映画を共に鑑賞するパターンだろうか。しかし無業者の場合は法則性は特に見られない。
女性は男性と比べて有業・無業を問わず行動者率は高い。独身では有業者・無業者共に35歳未満がピーク。結婚をしている場合、子供がいない世帯では大よそ独身と同じ値の動きを示すが、子供がいる世帯では子供が就学前は低めで小学生になると高くなり、その後も減少度合いは緩やか。本人ではなく子供の付き添いで映画館に足を運んでいる様子が想像できる。末子が高校生までは減少しているが大学生になると増加するのは、子供の世話を考えずに自分の好みで鑑賞できる時間が取れるのも一因かもしれない。
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※社会生活基本調査
5年おきに実施されている公的調査で、直近分となる2016年分は2010年時点の国勢調査の調査区のうち、2016年の熊本地震の影響を受けて調査が困難な一部地域を除いた、総務大臣の指定する7311調査区に対して実施された。指定調査区から選定した約8万8000世帯に居住する10歳以上の世帯員約20万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2016年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2016年10月15日から10月23日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と回収方式。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。