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仕事をする人は床に就く時間も遅くなる…就業状態と就寝時刻の関係をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 帰宅したらもう深夜。仕事疲れで何もできずにバタンキュー、なんてことも(写真:アフロ)

ライフスタイルが見えてくる就寝時刻

就寝時刻は人の元々の性質だけでなく、ライフスタイルによっても大きな違いが生じる。特に仕事からの帰りが遅い人は、必然的に寝る時間も遅くなりがち。その実情を総務省統計局による社会生活基本調査(※)の公開値から確認する。

まずは直近2016年における平均就寝時刻だが、平日は男性が23時16分、女性が23時08分と、女性の方が8分早い。女性の方が早起きなことや、一人暮らしの男性において仕事で帰宅が遅く、就寝時刻もずれ込む事例が多いからだと思われる。実際働き盛りの年齢階層では男女で大きな差異が確認されている。

↑ 男女・曜日別平均就寝時刻(2016年、10歳以上、時:分)
↑ 男女・曜日別平均就寝時刻(2016年、10歳以上、時:分)

土曜は男性で平日とほぼ変わらず、女性ではむしろ3分夜更かしになる。これは翌日の日曜がお休みで、多少遅く起きても寝坊の心配が要らないため。一方日曜は就業者も休みを取る場合が多く日中のスケジュールに余裕ができ、早く翌日からの一週間に備えるために床につけるのが、平日よりも早めに寝てしまう原因。それでも23時前に就寝することは無い。

これを就業別に見ると、男女とも「有業者は日曜の方が早い」「無業者は平日と土日の差がほとんど無い」との動きが見られる(有業者の女性は土曜が平日より4分ほど遅くなっているが、これは上記にある通り、寝坊の心配が要らないために夜更かしをしているのだろう)。見方を変えれば、就寝時刻は就業時間(厳密には就業終了時刻)に大きく左右されることになる。この傾向は夕食開始時刻とほぼ同じため、夕方以降のスケジュールが就業で一様に、ところてん式にずれ込んでいることが分かる。

↑ 普段の就業状態・曜日別平均就寝時刻(2016年、15歳以上、男性、時:分)
↑ 普段の就業状態・曜日別平均就寝時刻(2016年、15歳以上、男性、時:分)
↑ 普段の就業状態・曜日別平均就寝時刻(2016年、15歳以上、女性、時:分)
↑ 普段の就業状態・曜日別平均就寝時刻(2016年、15歳以上、女性、時:分)

多くの人が休みを取る日曜でも、有業者と無業者との間に約30分の差が出るのは「日曜勤務の人」「平日の習慣上」双方の理由によるものだろう。また就業者は休日でも、準備などでそれなりに時間を取られることも一因。さらにいえば無業者は高齢層の比率が高いため、早めに就寝してしまうのも影響しているものと考えられる。

5年間でどれほど就寝時刻は変化したのか

今調査結果では5年前、つまり2011年時点における就寝時刻の値も取得可能。そこで5年間の変移を計算したところ、男女とも平日・土日を問わず早まる傾向が確認できた。

↑ 男女・曜日別平均就寝時刻(10歳以上、2011年から2016年への差異、分)
↑ 男女・曜日別平均就寝時刻(10歳以上、2011年から2016年への差異、分)

残業や土曜日出勤者が減れば帰宅時刻も早まるため、就寝時間を前倒しにすることができる。就寝時刻の早まりは、これで説明できそうではある。

これをさらに就業状態別に細分した結果が次のグラフ。

↑ 男女・曜日別平均就寝時刻(普段の就業状況別)(15歳以上、2011年から2016年への差異、分)(男性)
↑ 男女・曜日別平均就寝時刻(普段の就業状況別)(15歳以上、2011年から2016年への差異、分)(男性)
↑ 男女・曜日別平均就寝時刻(普段の就業状況別)(15歳以上、2011年から2016年への差異、分)(女性)
↑ 男女・曜日別平均就寝時刻(普段の就業状況別)(15歳以上、2011年から2016年への差異、分)(女性)

有業者と無業者間における、5年間の就寝時刻の動向に関する傾向は見いだせない。日曜で無業者の就寝時刻が有業者以上に早まっている雰囲気はあるが、一方で平日や土曜日は有業者の方が就寝時刻の早まり度合いは大きい。

しかしながらいずれも数分の単位でしかなく、無業者の「有業者より早寝」の動きには変わりは無い。元々無業者ほど夕食開始時刻が早まる動きが確認されており、それがそのまま夕食後の各種行動時間、そして今回の就寝時刻にまで影響を及ぼしているのだろう。

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※社会生活基本調査

5年おきに実施されている公的調査で、直近分となる2016年分は2010年時点の国勢調査の調査区のうち、2016年の熊本地震の影響を受けて調査が困難な一部地域を除いた、総務大臣の指定する7311調査区に対して実施された。指定調査区から選定した約8万8000世帯に居住する10歳以上の世帯員約20万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2016年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2016年10月15日から10月23日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と回収方式。

今件における就寝時刻とは、17時以降で翌日のお昼よりは前に始まり、60分を超えて続く睡眠の開始時刻を意味する。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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