トップはヤンジャン50万部超え…男性向けコミック誌の部数動向をさぐる

↑ コンビニでの立ち読みの友的存在な男性向けコミック誌。その部数実情は(写真:アフロ)

ヤンジャントップの53.4万部、次いでビッグコミックオリジナル

専用の電子書籍・雑誌リーダーだけでなくパソコンやスマートフォン、タブレット型端末を用いたインターネット経由で漫画や文章を読む機会が多数設けられるようになったことで、人々の読書欲はむしろ上昇しているとの見方もある。一方で紙媒体を用いた本はその立ち位置を落とし、多分野でビジネスモデルの再定義・再構築を迫られる事態に陥っている。今回はその雑誌のうち、特にすき間時間の良き友である男性向けコミック誌(少年向けコミック誌よりも対象年齢が上の雑誌。青年向けも含む)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む)から、実情をさぐる。

まずは男性向けコミック誌の直近四半期、2017年7~9月の実情。

↑ 2017年4~6月期と2017年7~9月期における男性向けコミック誌の印刷証明付き部数(万部)
↑ 2017年4~6月期と2017年7~9月期における男性向けコミック誌の印刷証明付き部数(万部)

男性向けコミック誌は先日解説した少年向けコミック誌(【ジャンプ一強、けれど200万部割れ継続…少年向けコミック誌の部数動向をさぐる】)と比べると印刷部数の規模が小さく、また飛びぬけた値を示す雑誌が無いため、上位陣では比較的きれいな部数の差異による傾斜のグラフが生成される。

男性向けコミック誌では前四半期と比べてラインアップからの脱落誌、追加誌は無し。特に大きな変動も無し。前四半期の値と比べると「月刊!スピリッツ」が他誌とは異なる動き(明らかな増加)をしているが、部数そのものが少数のため、大勢には影響を及ぼさないレベルであることが分かる。

プラスが2誌…前四半期比

続いて公開データを基に各誌の前・今四半期間の販売数変移を独自に算出し、状況の精査を行う。雑誌は季節でセールスの影響を受けやすいため、四半期の差異による精査は、雑誌そのものの勢いとはズレが生じる可能性がある。一方でシンプルに直近の変化を見るのには、この単純四半期推移を見るのが一番。

↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌)(2017年7~9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌)(2017年7~9月期、前期比)

プラス計上をした雑誌は誤差領域(上下幅5%内)で1誌「週刊ヤングジャンプ」、誤差を超えた確実なプラスが「月刊!スピリッツ」1誌。

「月刊!スピリッツ」では特に特別企画や付録が該当期間中に展開されたとの話は無いものの、連載作品で「でぃす×こみ」や「重版出来!」の評価が高く、これらの作品目当てで購入しているとの意見もあちこちで見受けられるようになった。作品が掲載母体誌を支える、好ましい傾向。

もっとも部数は今期で8667部と1万部にも満たない。プラス計上は大いに評価されるべきではあるが、他誌との単純比較は難しいところ。

季節変動を除外できる前年同期比では

続いて季節変動を考慮しなくて済む、前年同期比を算出してグラフ化する。今回は2017年7~9月分に関する検証なので、その1年前にあたる2016年7~9月分の部数との比較となる。少々間が開いた期間の比較となるが、季節変動を除外し、より厳密にすう勢を知ることができる。数十年もの歴史を誇る雑誌もある中で、わずか1年で何割もの下げ幅を示す雑誌も見受けられるが、それだけ雑誌業界は大きく動いていることを再確認させられる…とはかつて用いていた表現だが、最近では「見受けられる」ではなく「少なくない」と差し換えた方が良い状況。

↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌)(2017年7~9月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌)(2017年7~9月期、前年同期比)

前四半期比で大きく伸びた「月刊!スピリッツ」が前年同期比でも飛躍、「コミック乱」が誤差領域内でプラス、それ以外はすべてマイナス。誤差を超えた確実なマイナスは5誌、中でも「ヤングアニマル嵐」の下げ幅が2割近く(マイナス17.2%)に達しており、強い危機感が改めて認識できる。他にも「アフタヌーン」「イブニング」「モーニング」と名だたる雑誌たちが誤差を超えた下げ幅を計上している。

有名どころ、コンビニなどでも多々目に留まる雑誌が軒並み名を連ねているのを見るに、もの悲しさを覚えるものがある。同時に「そういえば最近になって立ち寄り先のコンビニで見かけなくなったな」と思い返した雑誌も複数あるだけに、複雑な心境にも追いやられる。

現在は電子書籍、ウェブ漫画が浸透する中で、小規模書店の閉店、コンビニでのコミック誌のシュリンク化・棚からの撤去が続き、紙媒体を手に取る機会が減少している。漫画を提供し、市場を支えていくための仕組みも選択肢が増え、領域が広がり、これまでとは異なる発想が求められつつある。これまでは馬車でしか行き来できなかった場所への輸送ビジネスが、バスや電車、飛行機などが登場し、馬車業界において顧客が奪われているような展開とも表現できる。

なお今件の各値はあくまでも印刷証明付き部数であり、紙媒体としての展開動向。コミック誌の内容が電子化されて対価が支払われた上でダウンロード販売された場合、その値は反映されない。そして電子雑誌の利用性向も確実に上昇している。特に今記事の該当ジャンルである男子コミック誌は電子雑誌化率が高く、そのため印刷証明部数が減少を続けても、各雑誌、コミックそのものの需要がそれと連動する形で減退しているとは限らないことは認識する必要がある。今件はあくまでも紙に印刷した形で提供されている雑誌に限った動向。

今回数少ない部数増加誌となった「月刊!スピリッツ」も紙媒体版以外に電子版の展開が行われている。電子版の購入部数も合わせれば、上げ幅はもっと大きなものとなったに違いない。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。