Yahoo!ニュース

東日本大震災によるボランティア活動の活性化の実態をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 先の震災では多くの人がボランティア活動に参加した(ペイレスイメージズ/アフロ)

東日本大震災では被害の大きさを受け、多くの人がボランティア活動(※)に参加し、それをきっかけにボランティアへの機運そのものも高まったとされている。その実情を社会生活基本調査(※※)の結果から確認する。

ボランティア活動の具体的種類のうち「災害に関係した活動」の行動者率(調査時点において過去1年間に一度でもその行為を実行した人の割合)は2011年において大きな飛躍が確認できる。なお2001年は元データの都合上、70歳以上がすべてひとまとめにしてあるため、75歳以上が空欄になっている。

↑ 「ボランティア活動」の種類別行動者率(「災害に関係した活動」)
↑ 「ボランティア活動」の種類別行動者率(「災害に関係した活動」)

●「災害に関係した活動」の具体例

・救援物資の確保・輸送

・炊き出しなどの災害時の救援

・災害復旧のための資金の募集

・現地での労力奉仕

・災害後の被災者への救援

2001年と2006年の間にはゼロカンマ数%ポイントの差異があるが、これは「ぶれ」の範囲で、社会的情勢の変化に伴うものではない。一方、2006年から2011年にかけての動きは、「何らかの状況変化に伴う動き」であることは、誰が見ても一目瞭然。そしてその理由は2011年3月に発生した東日本大震災によるものと見て間違いない(震災は3月、今調査の2011年分は10月に実施。その時点で「過去1年間に行ったか否か」を訪ねている)。特に従来ほとんど動きの無かった若年層における大きな伸び、中堅層の活躍ぶりが見て取れる。

この2006年から2011年への変移を確認したのが次のグラフ。

↑ 「ボランティア活動」の種類別行動者率(「災害に関係した活動」)(2006年から2011年への変移、ppt)
↑ 「ボランティア活動」の種類別行動者率(「災害に関係した活動」)(2006年から2011年への変移、ppt)

元々20代や30代は行動者率が低めだったのも一因だが、この層の大きな伸びが実体として表れている。先の震災におけるボランティア活動に、多数の若年層が参加するようすが伝えられているが、それが単なる見た目だけのもの、演出的な切り貼りによるものではないことが、改めて確認できるというものだ。また、2006年時点では最多階層が40代後半から60代だったものが、2011年では30代後半から50代前半にシフトしたことも、注目すべき動きではある。

他方直近の2016年では2011年と比べて災害の数そのものが減っている(とはいえ調査年には熊本地震をはじめ、複数の大規模災害が発生しているが)こともあり、2011年からは行動者率が大きく減っている。しかしながら前々回(2006年)の調査結果と比べると、ほとんどの属性で行為者率は増加していることが確認できる。

↑ 「ボランティア活動」の種類別行動者率(「災害に関係した活動」)(2006年から2016年への変移、ppt)
↑ 「ボランティア活動」の種類別行動者率(「災害に関係した活動」)(2006年から2016年への変移、ppt)

震災で生じた特異的な災害に関係したボランティア精神の高まりは一過性のものではあったが、その一部は長期的なものとして定着をしているようである。

■関連記事:

ついに「自分のことだけ」を超えた「他人の役に」な傾向

寄付、献血、ボランティア…就業者の社会貢献活動経験とは

※ボランティア(活動)

社会生活基本調査では報酬を目的とせずに自分の労力や技術、時間を提供して地域社会や個人、団体の福祉増進のために行う活動を指すが、交通費などの実費程度の金品の支払いが生じた場合は報酬と見なさず、ボランティア活動に含む。一方、ボランティア団体が開催する催し物に参加しただけの場合は、該当活動とはみなされない。

※※社会生活基本調査

5年おきに実施されている公的調査で、直近分となる2016年分は2010年時点の国勢調査の調査区のうち、2016年の熊本地震の影響を受けて調査が困難な一部地域を除いた、総務大臣の指定する7311調査区に対して実施された。指定調査区から選定した約8万8000世帯に居住する10歳以上の世帯員約20万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2016年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2016年10月15日から10月23日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と回収方式。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事