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1971年以降の世界の二酸化炭素排出量をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 工場の煙もまた二酸化炭素。対策をしなければ産業の発達と共に増加する(ペイレスイメージズ/アフロ)

温暖化に深く関わりのある問題として注目されている二酸化炭素の排出量。その実情を国際エネルギー機関IEA(The International Energy Agency)の最新公開資料(※)を基に、収録されている1971年以降の動向について確認する。

まずは世界全体の総量、そして主要国(直近年時点で排出量上位国。具体的には中国、アメリカ合衆国、インド、ロシア、日本、ドイツ、韓国、イラン、カナダ、サウジアラビア)の経年における二酸化炭素排出量推移。

↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1971年~2015年時点、IEA調べ)(世界総量)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1971年~2015年時点、IEA調べ)(世界総量)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1971年~2015年時点、IEA調べ)(直近年上位国のみ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1971年~2015年時点、IEA調べ)(直近年上位国のみ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1990年~2015年時点、IEA調べ)(直近年上位国のみ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1990年~2015年時点、IEA調べ)(直近年上位国のみ)

中国の急上昇ぶり(増加率、増加量)やアメリカ合衆国の昔からの値の大きさ、そしていくつかの先進諸国における技術革新・公害対策などによる効果が出て値が減っているのが確認できる。日本やドイツは元々排出量が(今グラフ中では)少なめなポジションなのに加え、それでもさらに値を削っているのが見て取れる(2008年から2009年にかけての減少は、景気後退によるところも小さくない)。

なお中国とアメリカ合衆国のポジションが入れ替わったのは2006年。この時アメリカ合衆国は56.0億トン、中国は59.5億トンだった。

続いて全世界比の推移。こちらは1990年以降に限定する。

↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(1990年~2015年時点、IEA調べ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(1990年~2015年時点、IEA調べ)

世界全体の排出量との比率の上でも、中国の増加、アメリカ合衆国の増加から減少への転換、インドの増加ぶりが見て取れる。またドイツや日本は減少状態にあることが確認できる。

なお日本が2011年以降わずかだが排出量が増加に転じたのは、震災起因による発電方式の状況変化に伴い、二酸化炭素排出量が増えているのを受けての結果である。

最後に「国民一人当たりの」二酸化炭素排出量推移。こちらは折れ線グラフでは分かりにくいところもあるので、直近10年分の棒グラフを併記し、合わせてその推移を見ることにする。なお棒グラフは直近年の国別排出量の多い順にしてある。

↑ 一人当たりの二酸化炭素排出量(排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)
↑ 一人当たりの二酸化炭素排出量(排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)
↑ 一人当たりの二酸化炭素排出量(直近10年、排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)
↑ 一人当たりの二酸化炭素排出量(直近10年、排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)

アメリカ合衆国やカナダは高めの水準だが、それでもじわじわと値を落としていること、ドイツや日本も同様に今世紀に入ってからは削減効果が出始めていることが読み取れる。ただし日本においては、2011年以降は一時的な上昇。震災による電力事情の影響が出ていた。一方で韓国は急速に値を増していたがこの数年は頭打ち。

また総量部分でも増加傾向が目に留まったサウジアラビアが勢いのある上昇傾向なのが確認できる。これは他の中東石油産出国でも起きている現象で、例えば国ベースの排出量上位国に限定しなければ、一人当たりの排出量の最上位国はカタールで35.77トン/年となる。それだけ原油価格の高騰を受け、近代化による増加が進んでいることになる。

一方、中国の確実な上昇ぶりも注目に値する。同国の人口数を考慮すれば、この傾斜が何を意味するのか、今記事一つ目のグラフと照らし合わせれば容易に理解できるはずだ。また、人口の観点で考慮すると、今グラフでは傾斜こそ現時点ではゆるやかで一人当たりの値も低いものの、インドの動向も気になるところではある。

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※IEAの最新公開資料

具体的には「CO2 Emissions from Fuel Combustion- Highlights-」。現時点では2017年発行分で、2015年時点のデータが最新。今件値は燃料消費行動に伴う排出量であり、人間などの生物による生体活動に伴い排出される量は勘案されていない。

収録されているデータは1971年以降のものだが、今記事では一部で1990年以降のみに関しての精査もしている。ロシアが1989年分まではソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)のデータしか存在しないため。また、中国は原則的に2000年より前のものは香港を含めず、それ以降のものは含んでいる(平均値周りは中国本土のみ)。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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