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「人の仕事の多くが新技術に代替される」米国ではどの程度実現すると思われているのか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ロボットやコンピューターは人の仕事を奪うのか(絵:いらすとや)

技術進歩は日々行われ、生活や仕事環境も大きな変化を生じていく。新しい技術は多くの人に恩恵を与えるが、同時に自分の立ち位置を失う人も生み出してしまう。現在人のしている仕事のどれほどが、ロボットやコンピューターのような新技術に取って代われると考えられているのか。米国の認識を同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した、技術と人々の暮らしに関わる調査報告書「Automation in Everyday Life」(※)から確認する。

次に示すのは新技術の代表的な存在であるロボットやコンピューターのさらなる進歩や浸透により、人が従事していた仕事の多くがそれらに取って代わられるか否かを、回答者自身の見聞きの経験や推測として答えてもらった結果。

↑ 人による仕事の多くがロボットやコンピューターに取って代わられる(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 人による仕事の多くがロボットやコンピューターに取って代わられる(2017年5月、米国、18歳以上)

設問では具体的な事例や業態、期間を区切っているわけではないので、全体としての話となるが、米国の成人のうち1/4近くは人による仕事の多くがロボットやコンピューターに取って代わられるとの話を何度となく繰り返し見聞きしたり自分でも考えている。そして2割の人はそれが多方面の場で実現すると考えている。恐怖を覚えるか夢のようにあこがれるかは別として、そこそこあると考える人まで合わせると8割強の人がロボットやコンピューターが人の仕事を代替すると見聞きしたり考え、8割近くはそれが実現するであろうと考えている。人の仕事はほとんどが、ロボットやコンピューターに取って代わられることは無いだろうと見聞きする、考える人はごく少数でしかない。

しかしながら人の仕事がロボットやコンピューターに代替される未来の想像の中身は、技術進歩への考え方により大きく異なるようだ。

↑ 人による仕事の多くがロボットやコンピューターに取って代わられる可能性(技術進歩への支持派・不支持派)(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 人による仕事の多くがロボットやコンピューターに取って代わられる可能性(技術進歩への支持派・不支持派)(2017年5月、米国、18歳以上)

技術進歩そのものを支持肯定している人は、人による仕事の多くがロボットやコンピューターに取って代わられる場面は限定的であり、多くの人は人による仕事は相変わらず人が従事し続けると考えている。他方、技術進歩を支持しない人は人による仕事の多くがロボットやコンピューターに代替されてしまい、多々の場面で人の仕事の場が失われると考えている。

要はロボットやコンピューターが、現在人が従事している仕事を代替するようになっても、人の(自分の)仕事を奪われることはないだろう、むしろ大いに手助けとなると考えているからこそ、技術進歩を支持している。人が従事している仕事をロボットやコンピューターが奪い、人の(自分の)仕事が失われてしまうと考えている人は、技術進歩へは否定的に考えてしまう。

例えば技術進歩により普及しつつある自動レジならばコスト削減が期待できる経営者やスピーディな会計が期待できるお客の立場ならば、その導入を期待するが、レジ打ちの仕事をしている人には自分の職場が失われると危機感を覚えてしまう。必然的に経営者やお客は技術進歩の支持をするし、レジ打ちの人は不支持の姿勢を見せる。

雇用する側や企業全体、社会の生産性や効率性からは技術進歩はプラスとなることは多いが、仕事に従事している人の観点では自分の仕事を奪われかねない。ジレンマ的な構図ではあるが、納得のいく話ではある。

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※Automation in Everyday Life

調査専用の調査対象母集団(RDD方式で選択された固定電話・携帯電話を有するアメリカ合衆国の18歳以上を対象に選択)を対象に2017年5月1日から15日にかけて実施されたもので、有効回答数は4135人、うち就業者は2510人。国勢調査の結果を元に性別、年齢、学歴、人種、支持政党、地域、就業中か否かなどの属性でウェイトバックが実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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