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自己防衛、狩猟、コレクション…米国の銃所有事情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 寝具に銃を忍ばせる…という描写もよく見かける(写真:アフロ)

銃の所有が一般人にも許可されている米国。人々はいかなる目的で銃を手にしているのだろうか。その実情を同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年6月に発表した調査報告書「America’s Complex Relationship With Guns」(※)から確認する。

今調査対象母集団では3割の人が自ら銃(拳銃、ライフル銃、ショットガン合わせて)を所有している。

↑ 自分の世帯に銃保有者がいるか(2017年3~4月、米国)(18歳以上)
↑ 自分の世帯に銃保有者がいるか(2017年3~4月、米国)(18歳以上)

では銃を所有している人は、どのような理由でその銃を持っているのだろうか。理由を答えてもらった結果が次のグラフ。もっとも多かったのは自己防衛の目的によるもので、2/3が回答している。

↑ 銃を所有している主な理由(複数回答)(2017年3~4月、米国)(18歳以上)
↑ 銃を所有している主な理由(複数回答)(2017年3~4月、米国)(18歳以上)

銃を持っていれば他の銃の弾を避けられる、弾き返せるわけではないが、敵性対象物に反撃力を誇示して行動を思いとどまらせることが可能となる。交渉・駆け引きの猶予が無い相手には、先手必勝の行動を成すこともできよう。

次いで多い回答は狩猟で38%、さらに射撃競技用として所有しているとの意見も30%。銃のコレクションをしているから持っている人や、仕事用としての銃所有の人も1割前後いる。

これを回答者の居住地域別に仕切り分けしたのが次のグラフ。

↑ 銃を所有している主な理由(複数回答)(2017年3~4月、米国)(18歳以上)(居住地域別)
↑ 銃を所有している主な理由(複数回答)(2017年3~4月、米国)(18歳以上)(居住地域別)

都市部では自己防衛が71%、近郊でも71%で変わらないが、地方になると62%と値は落ちる。一方で狩猟目的は都市部で27%でしかないものの、地方では48%。仕事用として持っている人が都市部で12%もの高い値を示しているのと合わせ、居住地域の特性が現れた形となっている。

さて、銃は基本的に弾を込めて撃つことでその威力を発揮するが、間違って発射してしまうリスクを考慮し、弾を込めずに銃本体のみをしまうのが安全であると知られている。他方、いざという時にすぐに銃を使えるように、弾を込めたままで銃を保管する、置いておく考え方もある。

銃をどのように使っているのか、銃に対する姿勢によるところが大きいが、自宅にいる時は常に銃に弾を込めた状態で置いているのか否かを聞いたところ、全体では38%もの人が常に置いていると回答する結果となった。

↑ 自宅にいるときは弾を込めた状態の銃をすぐ手に取れるような場所に置いているか(銃所有者限定)(2017年3~4月、米国)(18歳以上)
↑ 自宅にいるときは弾を込めた状態の銃をすぐ手に取れるような場所に置いているか(銃所有者限定)(2017年3~4月、米国)(18歳以上)

邦画のアクションものでは寝室の枕元や作業机の一番上の引き出しに、すぐに撃てる状態の拳銃を忍ばせている描写をよく目にするが、それが稀なケースでは無いことが分かる。

男女別では男性の方が「常に」の値は高いが、「まったく無い」を除いた頻度を問わずに置いている割合は男女でさほど変わりはない。銃を所有している人の2/3が自己防衛目的であることを考えると、すぐ撃てる状態でそばに置いておくのは当然の結果なのかもしれない。

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※America’s Complex Relationship With Guns

2017年3月13日から27日と、同年4月4日から18日にかけて行われたもので、RDD方式によって無作為抽出された電話番号(携帯・固定を問わず)の対象者(18歳以上限定)に専用のウェブへアクセスし回答してもらっている。対象者がインターネットへのアクセス環境を持っていない場合は、タブレット型端末と無線インターネット接続環境が貸与される。対象者数は合計で3930人。国勢調査の結果に基づき、年齢や性別、学歴、居住地域、人種などでウェイトバックが実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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