一部主要国の可処分所得の実情をさぐる
可処分所得の最大値はアメリカ合衆国の4.66万ドル
収入のうち非消費支出を除いた、自分自身が自由に使えるお金を可処分所得(※)と呼ぶ。豊かさの指標の一つだが、この過去からの推移と現状をOECD(経済協力開発機構)の公開データベース「Household accounts」から確認する。
まずは欧州地域からはイギリス、スウェーデン、スペイン、フランス、ドイツ、イタリア、ギリシャ、ロシアを、それ以外からは日本、韓国、カナダ、アメリカ合衆国、メキシコを選び、最新値(2016年分。無い国は2015年以前の分でもっとも新しい値)を取得した結果が次のグラフ。なお単位はグラフ中にある通り米ドル。あくまでも他国との平均のために換算したもので、為替レートによって多分に変動することを考慮に入れる必要がある。
今回選択した諸国の中では、アメリカ合衆国がトップで4.66万ドル。収入ではなく可処分所得であることに注意。同国の馬力をうかがえる数字ではある。次いでヨーロッパ方面ではもっとも高い値を示すドイツ、フランス、スウェーデン、再び北米に戻ってカナダ、さらにもう一度ヨーロッパに戻ってイギリスと続く。日本はイギリスの次で3.04万ドル。日本は2015年時点の値なので、為替レートが円安に動いた現状では、もう少し低い値になるはず。
今値について、取得可能な限り過去にさかのぼって、その推移を見たのが次のグラフ。国によっては今世紀以降しか無い場合もあり、折れ線が一様の長さを示していない。また繰り返しになるが、あくまでも米ドル換算の結果で、各年・各国の対米ドル為替レートによる変動も多分にあることを考慮しておく必要がある。
アメリカ合衆国が群を抜いて可処分所得が高いことが改めて分かる。次いで高い値を示し続けているのはドイツやフランス。日本は中庸のポジションを維持し続けている。
大よその国では右肩上がりを示しているが、気になるのは大きく上昇していたロシア、そして今回確認した国の中では唯一失速、右肩下がりに転じているギリシャ。両国のここ数年の経済状況を容易に想起させる動きとなっている。また横ばいを維持しているスペイン、イタリアも、数年前までの欧州債務危機ではよく名前が挙がった国で、それぞれの国で施策として行われた財政緊縮政策が、国民生活にはプラスとならなかったことがうかがえる(スペインはここ数年、ようやく上向きを示し始めているが)。特にギリシャの下げ方は、失業率の高さも合わせると、一般市民の生活の大変さが容易に想像できる。プライマリーバランスの調整を強要すると、国が不幸になる場合もあり得るとの好例ではある。
過去からの増加分で見ると
可処分所得が家計の良し悪しを推し量る指標のすべてでは無く、また米ドル換算なので為替レートの問題や、それぞれの国の物価・インフレ率も考慮する必要があるのだが、一つの指標として、前世紀末の1999年からの伸び率を算出する。
基準年次第ではあるが、1999年を基準とした場合、もっとも高い成長率を示しているのはスウェーデンで、1.88倍。可処分所得が10年強で2倍近くに増加した計算になる。次いで韓国、アメリカ合衆国、イギリスと続き、日本はその次。ギリシャは欧州債務危機で同じく名前を挙げられているイタリアやスペインと比較すると、やはり低めの値に留まっている。
今件可処分所得は各国の一般世帯におけるお財布事情を知る上では、貴重な値となる。他国情勢を知って自分の懐が潤うわけではないが、何かのきっかけで参照値として用いられた際、その実態を確認する上で役立つに違いない。
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※可処分所得
厳密には実収入から非消費支出(支払いを義務づけられている税金や社会保険料など)を引いたもの。この可処分所得を、生活に必要な消費となる消費支出や、貯蓄などの黒字に割り当てる。世間一般にはこの可処分所得を手取り(収入)とも呼んでいる。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。