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ガラケーとスマホ、それぞれの利用率の推移をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ガラケーからスマホへ。携帯のメインはシフトを続けているが(ペイレスイメージズ/アフロ)

この数年で携帯電話はガラケー(従来型携帯電話)からスマホへと大きくシフトし、勢力図も多分な変化を見せている。その実情を総務省情報通信政策研究所が2017年7月に発表した「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)などの調査結果をもとに確認する。

次以降に示すのは主要なモバイル端末である従来型携帯電話、スマートフォン、そしてその両機種の動向と密接な関係があるタブレット型端末における利用率に関して、「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」で2012年分以降、都合5年分の推移を記したもの。

まずは従来型携帯電話、いわゆるガラケー。なお調査票には「携帯電話(スマートフォンを除く。 PHSを含む)」とあり、厳密にはPHSも含まれる。また、スマートフォンやタブレット型端末とは別個選択肢で質問されており、複数回答形式であることから、複数種類の端末利用者の場合は、それぞれに対して「利用している」と回答するため、全項目を合わせると100%を超える属性は当然存在する。

↑ 従来型携帯電話利用状況
↑ 従来型携帯電話利用状況

2012年の時点では約7割の利用率を示した従来型だが、その翌年には51.0%に急落。それ以降も漸次利用率は減少しつつある。男性よりは女性の方が、高齢層よりは若年層の方が下げ幅が大きい。また、学生・生徒や10代から30代では2012年から2013年にかけて著しい減退(前年比でほぼ半減)が生じており、従来型からスマートフォンへのシフトが(両用からスマホ限定も合わせ)一気に生じたことがうかがえる。

他方50代から60代、特に60代の利用率減退は緩やかで、直近の2016年でも半数近くは従来型携帯電話持ち。ゆっくりだが確実に従来型離れが進んでいると見るべきか、なかなか移行が進まないと見るべきか。解釈は難しい。なお40代が前年比で大きく伸びているが、これは多分にイレギュラーの可能性が高い。この年齢階層に特異的な状況が生じたとは考えにくい。

続いてスマートフォン。

↑ スマートフォン利用状況
↑ スマートフォン利用状況

2012年の時点では32.0%でしかなかった利用率も、直近の2016年では71.3%と7割を超える勢い。男女の差はほとんど無く、年齢階層別では20代はもともと高く、2012年の時点ですでに7割近くを計上している。また10代から50代に至るまで、2012年から2013年に渡り大きな利用率の上昇が生じており、上記の従来型携帯電話の減退と合わせ、この1年間で大移動が生じたことが分かる。

学生・生徒における上昇率の変化は注目に値する。10代や20代では2012年から2013年にかけて大きな上昇が見られたが、学生・生徒では2013年から2014年において24.6%ポイントもの上昇が確認できる。同時期において爆発的な普及を示したコミュニケーション系アプリLINEが、この伸びの一翼を担ったものと推定できる。

最後にタブレット型端末。こちらは上記2種端末とは縦軸の区切りを異にしている。調査票では「タブレット端末(iPad、 Nexus9、 GalaxyTab など)」とあり、また別項目では「電子書籍リーダー(Amazon の Kindle など)」の表記もあるため、回答者が誤認識しない限りは電子書籍リーダーの類は該当しない。

↑ タブレット型端末利用状況
↑ タブレット型端末利用状況

スマートフォンほど急速な伸び方ではないが(縦軸の仕切りが異なることに注意)、少しずつ、そして確実に増加の動きを示している。女性よりは男性の方が伸び方が大きく、若年層よりも中堅層の方が大きな伸びを見せているのが興味深い。

他方直近年では前年比において、前年、男女それぞれでほぼ同率が計上されている。年齢階層別では10代が伸びているものの、20代から30代では小さからぬ減退を示し、40代から50代で大きな伸びが示されている。報告書の説明の限りでは、状況の説明のみが成され、その理由の推測は行われていない。何らかのイレギュラーの可能性もあり、少なくとも利用率が頭打ちになったとは考えにくい。

今回精査した3種端末に関する値は、現時点では5年分しか公開値が蓄積されていない。この5年間は該当端末の周辺環境が大きな変化を見せたため、非常に有意義なデータを取得できた次第ではあるが、同時に、5年分ではやや動向を推し量るのには不足している感もある。

来年以降も継続して調査が成され、各端末の値が取得されることを願いたいものだ。

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※平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2016年11月26日から12月2日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時併行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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