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スマホとガラケー、非所有者はどのような想いをいだいているのかをさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ いまだにガラケーを使いスマホを不要とする人も多い(写真:アフロ)

スマホを利用せず「今後も要らない」な人は2割近く

携帯電話のトレンドは従来型携帯電話からスマートフォンにシフトしつつあるが、一方で従来型を引き続き愛用する・求める人も少なくない。現在持っていない人たちの今後の所有願望はどのような実情だろうか。総務省が2017年7月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に確認する。

次に示すのは回答者自身のスマートフォンに関する利用状況。世帯ベースでの所有状況では無いことに注意。利用している、非利用ならば将来取得したい(=利用したい)か、あるいは要らないか。なお機種に関する回答用紙の説明は「スマートフォン(iPhone、アンドロイド端末など)」となっている。

↑ スマートフォン利用状況(2016年、回答者自身)
↑ スマートフォン利用状況(2016年、回答者自身)
↑ スマートフォン利用状況(2016年、回答者自身、「無い」)
↑ スマートフォン利用状況(2016年、回答者自身、「無い」)

全体利用率は71.3%と7割強。男女別ではほぼ同率で、年齢階層別では10代ですでに7割超え、20代では96.8%とほぼ全員の状態。30代でも9割強、40代でもほぼ8割。50代以降ようやく値は減少し始めるが、それでも過半数を超えている。60代ですら3割強。

就業形態別ではフルタイムが8割近く、パート・アルバイトが7割強、専業主婦・主婦が6割近く。金銭的負担、さらには必要度合いが所有率の違いに表れているのだろう(学生・生徒が8割強なのに対し、無職が3割強なのもその裏付けとなる。ただし無職の場合、定年退職後の高齢者も多分に含まれている)。

世帯年収別ではきれいな形で高年収ほど高所有率を示している。これもまた、毎月の通信料負担が大きな所有の要素となっていることがうかがえる。ただし400万円以上はほぼ横ばいとなるのも興味深い。

現在スマートフォンを利用していない人の所有願望度合だが、全体ではほぼ半々で不必要との意見の方が多い。一方で年齢階層別では、若年層は欲しい人が多数に登るのに対し、高齢層では必要ないとの判断を下している人が増えてくる。特に60代では全体の4割強が「スマートフォンは現在持っていないし、今後も要らない」としている。

年齢階層別のスマートフォン忌避傾向に似たような動きを示しているのが、世帯年収の差異。低年収ほど非保有率が高いが、加えて非保有者内における「要らない」派の割合も大きい。自分の環境から鑑み、コストパフォーマンスの観点で割りに合わないとの判断が下されているのだろう。

ガラケーはどうだろうか

続いて従来型携帯電話。いわゆるケータイ、ガラケー、フィーチャーフォン。回答用紙には「携帯電話(スマートフォンを除く。PHSを含む)」とあり、厳密にはPHSを含んでいる。また、スマートフォンとは別途の選択となっており、当然従来型とスマートフォンの双方を所有している場合は、それぞれで「所有している」と回答していることになる。

↑ 従来型携帯電話利用状況(2016年、回答者自身)
↑ 従来型携帯電話利用状況(2016年、回答者自身)
↑ 従来型携帯電話利用状況(2016年、回答者自身、「無い」)
↑ 従来型携帯電話利用状況(2016年、回答者自身、「無い」)

全体で利用率は35.2%。10代でも1割を超えているが、これは防犯用・保護者との連絡専用電話として子供向け携帯電話を与えられている事例があるため。以後、20代で減った後は歳と共に漸増していくが、40代で急上昇し、60代では実に2/3の利用率を見せる。また専業主婦・主婦や無職で高い値が出ているのは、この属性に属する人か多分に歳を召していることを予想させる。

年収別、居住地域別の差はあまり無し。強いて言えば低年収ほど所有率が高い。これも高齢層の割合の高さ、そして通信料の負担を考慮し、スマートフォンを所有できない人がいるからだろう。

非保有者の動向だが、多分に「要らない」とする意見で占められている。現在従来型を有していない人は、その多分がスマートフォンを所有しており、わざわざ再度従来型に戻る意向を持つ人はあまりいないことになる。一時期はいわゆる「ガラホ」が従来型携帯電話の底上げをするとも思われたが、昨今ではむしろ格安スマホが伸長しており、さらにスマートフォンの利用率拡大は(特にコスト面で気にしていた属性で)進み、それと共に従来型携帯電話への需要は縮退していきそうだ。

スマートフォンのシニア層への普及に関して多様な意見や推測が成されているが、今回の調査結果動向を見るに、60代に限ると現在持っていない人で今後欲しい人は全体比で4割足らず(≒現在の従来型携帯電話で満足)との状況が見受けられる。

↑ 現在スマートフォン非利用者における、今後の所有希望状況(2016年、回答者自身)
↑ 現在スマートフォン非利用者における、今後の所有希望状況(2016年、回答者自身)

4割足らずでしかないのか、4割足らずも可能性があるのかと見るのかはケースバイケースだが、若年層のように「持っていない人の多数がスマートフォンを欲しいと思っている」わけではないことを、改めて認識すべきだろう。

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※平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2016年11月26日から12月2日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時併行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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