10代の26%は「自宅にパソコンはあるけど使っていない」
高度の情報処理能力を有し、多彩なソフトで多様な実務をこなし、エンタメ部門の需要にも大いに応えてくれるパソコン。インターネットの普及とその窓口としてスマートフォンが多くの人の手に渡るようになり、相対的に利用価値は後退する一方で、今なお必要不可欠の場面も多い。また昨今では主要入力端末のキーボードと共に「若者のパソコン、キーボード離れ」的な指摘もなされている。それでは現状においては、どれほどパソコンが普及浸透し、利用されているのだろうか。今回は総務省が2017年7月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、パソコンの世帯普及状況や利用実態を確認する。
まずは自宅にパソコンがある人の状況。
全体では83.2%の人が自宅にパソコンがあると回答している。ただしそのうち回答者自身が使っているのは64.9%。残りは家族の他の誰かが使っているか、何らかの理由でほこりをかぶっていることが予想される。男女別では男性の方が所有率も利用率も高い。所有率はあまり差が無いが、女性の非利用率が高いため、利用率には14.0%ポイントもの差が出ている。
気になる年齢階層別の所有状況だが、回答者自身では無く回答者が居る世帯における状況であることから、10代はむしろ所有率は高く、50代までは横ばい、60代でやや下がる程度。一方で利用率を見るとやはり10代は低めで50代より低いの約6割に留まってしまう。
10代の1/4強は「自宅にパソコンはあるが使っていない」とする層。あるいは使っていないのではなく、使わせてもらえないのかもしれない。いずれにせよ、10代のパソコン利用率は6割にとどまり、1/4強は「自宅にあるが使っていない」実態にあることに違いは無い。
パソコンは高価な端末であることから、低年収ほどパソコンを取得する機会が少なくなる、それが若年層のパソコン離れ的な話の要因では無いかとの話があるが、今件調査値からも理由はともあれ結果としては同じ、低年収(世帯年収)ほどパソコンの所有率・利用率が低い傾向にあることが確認できた。もっとも年収による差異が生じるのは600万円までで、それ以上は年収が増えても大きな変化は生じない。
一方、非所有者の動向を見ると、パソコンに関する属性によるスタンスの違いが見えてくる。値は各属性の全体に対するものであることに注意。
10代から40代までは無い人の過半数でパソコンを欲しいと思っているが、50代になると無い人のうち要らないとする人の割合が急に増える。そして60代では1/4近くが自宅にパソコンは無く、その大部分は欲しくもないと答えている。学生・生徒(中学生から大学生)は自宅にパソコンが無い人の大部分は欲しいと思っているが、無職でほしい人は少数派(多分に高齢層が該当する)。パート・アルバイトの職にある人や専業主婦・主婦も自宅に無い人の大部分は要らないと考えている。
年収別動向だが、低年収ほどパソコン所有率は低い=非保有率は高いものの、その多くは「無いが欲しい」では無く、「無いし要らない」の回答。200万円未満では1/4強がパソコンは無いし欲しくないと答えている。ただしその属性の1割強はパソコンは無いが欲しいと考えているのもまた事実ではある。
今件における「自宅にパソコンがあるが利用していない」の回答は、家族構成員の別の人が利用している上で「使わせてもらえない」「使いたくない、使う必要性を覚えない」、さらに「自宅にパソコンはあるが誰も使っておらずほこりをかぶっている」などの多様なパターンが考えられる。世帯全体での利用状況を尋ねたわけではないので、家庭にあるパソコンの詳細状況は把握しきれたとはいえない。
とはいえ、各家庭におけるパソコンのポジションはある程度つかめる内容には違いあるまい。
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※平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
2016年11月26日から12月2日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時併行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。
今調査項目で示されているのは、パソコンの所有及び利用状況。自宅にある・無しを回答者に答えてもらい、ある場合には回答者自身が普段利用しているか、それとも利用していないか(置いてあるだけなのか、家族の別の人が使っているかは問わない)、無い場合には自宅に欲しいか、いらないかを答えてもらっている。単純にある無しの回答だけでなく、ある場合には利用状況を、無い場合には所有希望の有無まで尋ねることで、細かいパソコンの需要を精査できる。なお今件はあくまでもパソコンとしか問われておらず、デスクトップ、ノートの別は区別されていない(質問票上の表記は「パソコン(キーボード取り外し型も含む。タブレット端末は除く)」)。またインターネット接続の是非も範ちゅう外となっている。