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鉄道係員への暴力行為、2016年度は712件発生

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ラッシュ時には利用客のストレスもたまる。ちょっとした出来事でトラブルにも(写真:アフロ)

日本民営鉄道協会は2017年7月3日に、2016年度(2016年4月から2017年3月)に発生した、大手民鉄16社・JR6社・札幌市交通局・東京都交・横浜市交・名古屋市交・大阪市交・福岡市交・東京モノレール・ゆりかもめ・首都圏新都市鉄道・北総・横浜シーサイドライン・愛知環状(計34社局)における、駅員や乗務員など鉄道係員へ行われた暴力行為の件数に関する集計結果を発表した。それによれば2016年度の該当件数は712件となり、昨年度からは減少はしたが、引き続き高い水準にあることが分かった。行為発生の時間帯では昨年度に続き深夜時間帯が多く、発生場所では改札での事案がもっとも多い結果が出ている。

2016年度における該当鉄道会社各社の、鉄道係員に向けて行われた(利用客による)暴力行為件数は712件。昨年度の792件より80件減少し、一日あたりの平均回数は1.95件となった。2年連続の前年度比減だが、高い水準が維持されていることに変わりはない。

↑ 年度別駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(~2016年度)
↑ 年度別駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(~2016年度)

曜日・時間帯別では週末・深夜帯での発生件数が多く、後述する飲酒の有無と合わせ「週末で飲酒しての帰り道」といった状況での事案発生が多いことをうかがわせる。特に週末にかけて、飲酒を伴った事例が顕著であったことから、リリースでもその件に関して特記「月別では8月・12月、曜日別では木・金・日、時間帯別では深夜の発生件数が多いことから、暴力行為と飲酒に相関関係が見られます」が行われている。

↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(時間帯別)(2016年度)
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(時間帯別)(2016年度)
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(曜日別)(2016年度)
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(曜日別)(2016年度)

事件発生時における加害者側(利用客側)の飲酒状況についてだが、6割強が「飲酒あり」との結果が出ている。上記の値と合わせ、週末で酒を飲み気が大きくなった利用客による事象発生を想像させる。

↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(加害者の飲酒ありか否か)(2016年度)
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(加害者の飲酒ありか否か)(2016年度)

事件の発生場所だが、これは「改札」が最多で4割近く。次いで「ホーム」が3割強、「車内」が1割強で続いている。切符などを使わない無理な通過の試みやICカードの誤動作をはじめとする、改札通過時のトラブルがきっかけとなり、鉄道係員との間のいざこざ発生が容易に想像できる。改札そのもの、あるいは隣接する窓口で駅係員と客が口論を起こしている情景を、目撃した経験を持つ人も多いだろう。

↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(発生場所)(2016年度)
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(発生場所)(2016年度)

最後は冒頭でも言及した、加害者(利用者)側の年齢。絶対数と全体比の算出を年齢階層別に行っている。長期的には60代以上の比率がいくぶんではあるが増加傾向にある。

↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(加害者年齢)(~2016年度)
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(加害者年齢)(~2016年度)
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(加害者年齢)(不明をのぞいた件数に対する各年齢階層の構成比)(~2016年度)
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(加害者年齢)(不明をのぞいた件数に対する各年齢階層の構成比)(~2016年度)
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鉄道係員への加害事例は多分に「自分はお客の立場で偉い。多少の暴挙でも許容範囲」と横柄な考えを持つ人によるものもある。それが明確な意図でなくとも、潜在的なものとして持っていれば、各種暴挙につながることは容易に想像できる。

しかしその考えは独りよがりのものでしかない。自分と相手がどのような立場でも、そして自分がさらに飲酒状態でも、今回挙げられた各種行為は犯罪でしかない。その事実を改めて認識すべきである。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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