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すでに1000万世帯超え…共働き世帯の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 今やパートなどによる兼業の主婦も珍しくない。共働き世帯はどれほどいるのか(ペイレスイメージズ/アフロ)

1000万世帯を超え、さらに増加中の共働き世帯

核家族化の進行と消費性向や可処分所得、就業に関わる世界観や労働環境の変化に伴い、共働きはごく普通のライフスタイルとなりつつある。共働き世帯の実情を、厚生労働省の国民生活基礎調査(※)の結果などをもとに確認する。

子供が居る世帯における母親の就労状況は次の通り。

↑ 末子の年齢階級別にみた仕事ありの母の割合(「母の仕事の有り無し不詳」は含まず)(児童あり世帯比)(~2016年)
↑ 末子の年齢階級別にみた仕事ありの母の割合(「母の仕事の有り無し不詳」は含まず)(児童あり世帯比)(~2016年)

しかし子供が居ない世帯でも共働き(夫婦双方の就労状態)をしている場合は良くあるパターンで、これだけでは、共働き全体の現状を把握することはできない。

そこで「男女共同参画白書」の最新版(2017年6月発行分)を確認し、その中から該当するデータを抽出。過去のデータと照らし合わせて整合性を確認した上で、2016年分を反映させたのが次のグラフ。直近の動向が分かりやすいよう、21世紀以降のもののみのグラフも併記した。なお2011年はグラフ中特記にある通り、2011年の東日本大地震・震災における被災三県を除外して計算している。

↑ 共働き等世帯数の推移(万世帯)(~2016年)
↑ 共働き等世帯数の推移(万世帯)(~2016年)
↑ 共働き等世帯数の推移(万世帯)(2001年~2016年)
↑ 共働き等世帯数の推移(万世帯)(2001年~2016年)

グラフ中の項目で「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」とは「夫が非農林雇用者で、妻が非就業者(非労働力人口か完全失業者)」、「雇用者の共働き世帯」とは「夫婦ともに非農林業雇用者の世帯」を意味する。つまり今件では「単身世帯」「夫婦ともに非雇用世帯(年金生活者など)」「世帯主が事業者(経営者や個人事業、商店主など)」「農林業従事者世帯(農業で生活している人など)」などは含まれない。

今件データの対象となる「夫が勤め人、妻が専業主婦」世帯と「夫も妻も勤め人」といった共働き世帯数の推移としては、「夫が勤め人、妻が専業主婦」世帯が1990年まで漸減、それ以降はしばらく横ばい。しかし2000年以降は再び漸減の傾向にある。一方で「共働き世帯」は1990年まで漸増、それ以降は横ばい。しかし2005年あたりから再び増加に転じつつある(厳密には金融危機ぼっ発以降は漸減、震災の年から増加に転じている。

両項目の関係で見ると、1990年から2000年の間はほぼ同数で推移しているが、2000年以降は1990年以前と比べて逆転現象が起き、「共働き世帯数>>夫が勤め人・妻が専業主婦世帯」の構図が維持されている。しかも両項目の差は年々広がる傾向にある。これは夫の可処分所得の減少を妻がパートで補う、妻が働きやすい非正規雇用の仕組みが整備された(あるいは企業による需要が増えた)ことなどを起因とする。

全世帯に占める比率の算出

世帯数そのものは世帯構成人数の減少に伴い増加傾向にある。そこで単純に共働き世帯数の推移だけでなく、「全世帯に占める割合」も算出し、グラフ化する。

つまり上記ではグラフ生成時に該当しなかった世帯、「単身世帯」「夫婦ともに非雇用世帯(年金生活者など)」「世帯主が事業者(経営者や個人事業、商店主など)」「農林業従事者世帯(農業で生活している人など)」などを合わせた全世帯数に対し、「共働き世帯」などが占める割合、その変移をグラフにする。世帯数そのものは「国民生活基礎調査の概況」から容易に取得できるため、これを用い、比率計算を行う。なお直近分となる2016年分に関しては、全世帯数の値において、熊本地震に伴う熊本県の調査対象外措置により、実数値よりは少ない値が計上されているため、本来の値からはいくぶんのずれが生じている可能性がある。

↑ 共働き等世帯数の全世帯数に占める割合推移(~2016年)
↑ 共働き等世帯数の全世帯数に占める割合推移(~2016年)
↑ 共働き等世帯数の全世帯数に占める割合推移(2001年~2016年)
↑ 共働き等世帯数の全世帯数に占める割合推移(2001年~2016年)

「就労夫に専業主婦」の割合が年々減少している(約30年で半減近く)のはともかくとして、「全世帯数に占める共働き世帯の占める割合」は1990年以降ほぼ横ばいを維持しているといった、意外な結果が確認できる。もっとも過去10年ぐらいに限定するといくぶん増加しているように見えるが、これも1990年代の水準に近づきつつある程度との解釈も可能。

これは年金生活者や単身生活者の増加により、日本の世帯数そのものが増加現象にあるので、(共働き世帯数そのものが増加していても)全体に占める比率としては一定率が維持されたままになる構図である。

なお直近分となる2016年分の上放れは、専業主婦世帯の減退の仕方の緩やかさと合わせ、上記の通り熊本県の世帯数除外によるぶれの可能性がある。

「共働き世帯数の全世帯数比率がほぼ2割を維持」し続けている理由については、納得のいく説明が見つからない。裏付けとなる社会的規範・法令の変化があれば良いのだが、それも見当たらない。不思議な現象だが、社会構造学的にこのような均衡が自然に生じる結果となった可能性はある。

見方を変えれば、この比率がさらに上向くようなら、社会全体として大きな変化が生じていることのシグナルととらえるべきだろう。それゆえに、2016年分の値の上昇が、熊本県の除外によるものか否か、来年以降の動向が大いに気になるところではある。

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※国民生活基礎調査

全国の世帯及び世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2016年6月2日・7月16日にそれぞれ世帯票・所得票・介護票、所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収できたデータは世帯票・健康票が22万4208世帯分、所得票・貯蓄票が2万4604世帯分、介護票が6790人分。

今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2016年分)は大調査に該当する年であり、世帯票・所得票だけでなく、健康票・介護票・貯蓄票に該当する調査も実施されている。

また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大地震・震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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