虫歯・虫歯だった永久歯数の推移をさぐる
永久歯は基本的に生え替わることは無く、皮膚などの体の他の部位のように自己修復・再生する能力も無い。一度虫歯になってしまうと、抜いたり削ったり詰め物をするなどの処置を施す必要がある。そのような永久歯における「う歯(齲歯。齲蝕した歯。いわゆる「虫歯」)」や「う歯だった処置済みの歯」の実情に関して、厚生労働省が2017年6月に発表した歯科疾患実態調査(※)の2016年調査分の概要報告書から確認する。
今回対象となるのは5歳以上の「う歯」あるいは「う歯だった歯」の数の推移。DMFと呼ばれる状態の歯(複数形でTeeth)の数を指すが、これは
D……Decayed Tooth(未処置の歯、虫歯)
M……Missing Tooth(虫歯が原因で抜いた歯)
※30歳以降の場合は虫歯以外の原因で抜ける場合もあり、それも該当する
F……Filled Tooth(治療が済んだ(元)虫歯)
の頭文字を意味する。要は虫歯か虫歯だった歯、そして虫歯などの理由で抜けた歯。また大文字表記は永久歯、小文字表記は乳歯のことだが、今件では永久歯を対象としており、必然的に大文字となる。
まずは5~14歳。この年齢区分では1歳単位でデータが存在する。もっとも5歳や6歳などごく幼い時期には、永久歯の数も少なく、当然虫歯になる永久歯の数も少なめ。
純粋な連続性は無いとしたものの、明らかに「歳を重ねるに連れて本数が増える」「昔から現在に近づくにつれて本数が減る」傾向が確認できる。やはり公衆衛生の進歩や虫歯予防の啓蒙の成果が出ていると考えてよい。
一方15歳以上はこちらになる。こちらは開示情報の都合で1987年分の値が無い。
一部年齢階層でイレギュラー的な動きを見せているものもあるが、大勢においては14歳までの動きと同じく「歳を重ねるに連れて本数が増える」「昔から現在に近づくにつれて本数が減る」傾向が見受けられる。
40代後半以降になるとそれより若い世代と比べ、昔と現在との間の本数差にあまり大きな違いが出なくなる。これは多分に「虫歯以外の起因で抜けた歯もカウントされる」「歯が残っていれば虫歯リスクも増える」などによるもの。例えば2016年における平均喪失歯数は60歳前半で4.6本、70歳前半で8.6本、80歳前半で12.9本だが、老化など虫歯以外の原因で抜けたことも多分に考えられる。そしてそれら抜けた歯は、今件のDMF歯数にカウントされる。
「DMF歯」と認定された歯は基本的に「そうで無い歯」に戻ることは無い(永久歯は二度三度生えてこない)。いわば一方方向の道のため、歳と共に増加するのは当然の話。だからこそ、将来の自分自身のために、今は面倒くさいと思っていても歯みがきを欠かさず、健康な歯の維持を心がけたいものである。
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※歯科疾患実態調査
歯科保健状況の把握のために必要な資料を構築するため、1957年以降6年毎に実施しているもの(2017年発表分からは5年おきに変更されている)。今回概要が公開された2016年分については、2016年の国民健康・栄養調査において設定される地区(2010年の国勢調査の調査区から層化無作為抽出された世帯)からさらに抽出した地区の満1歳以上の世帯員を調査客体とし、国民健康・栄養調査の身体状況調査と共に実施(熊本地震の影響により熊本県全域を除く)。調査対象者数は男性2868人・女性3410人の計6278人。一部は質問紙調査だけでなく口腔診査受診も実施している。