育児系雑誌の部数動向をさぐる

↑ 子育ては手探りの部分も多い。雑誌は情報源として欠かせない存在だが……(ペイレスイメージズ/アフロ)

育児に関する情報はいくらでも欲しいと感じるもの。情報取得のために雑誌は必要不可欠な存在ではあったが、最近はネットにおかぶを奪われつつある。現状について育児系雑誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む)からさぐる。

現在印刷証明付き部数の公開ページで取得できる、該当ジャンルの雑誌は8誌。次に示すのは直近にあたる2017年第1四半期(1~3月)における部数の実情と、前年同期比の部数動向。印刷物は季節により販売数の変化が大きく生じるため、季節変動を考慮しなくても良い前年同期比の方がすう勢を見るのには適している。なお「nina's(ニナーズ)」はまだ1年分の部数公開がされていないため、前年同期比の精査からは除外する。

↑ 育児系雑誌印刷証明付き部数(2017年1~3月)(万部)
↑ 育児系雑誌印刷証明付き部数(2017年1~3月)(万部)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2017年1~3月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2017年1~3月、前年同期比)

少子化は育児系分野の市場縮小の一要因。しかしその市場動向の多くは単純な子供の人数の減り方をはるかに超えるスピードで縮小している。そして核家族化などを考慮すれば、口頭伝達の教え手となる祖父母が身近に居る育児世帯は数を減らしていき、育児情報の需要は増えることから、切り口次第ではチャンスは多い。もちろん同時にインターネット、中でもスマートフォンやタブレット型端末を利用した主婦層による利用の普及が進んでおり、子育て世代に向けた情報・コミュニティサービスも充実しており、雑誌ならではの提案が求められる。例えば蓄積性、専門性、正確性、実物品の提供などが思い浮かぶ。

盛況を博していた「ベビモ(Baby-mo)」だが、最近は姉妹誌の「プレモ(Pre-mo)」と共に低迷気味。同誌は充実した冊子内容と有益な付録が好評を博しており、毎号大きな話題を集めていた。「ベビモ」の中期的な動向を確認すると、育児系だけに限らず、雑誌全般でも注目に値する堅調さを示していた。確かな支持層を確保し、信頼を得ることで口コミにより新たな読者層が逐次生まれ、さらにそのような状況に甘んじることなく常に改善を模索し、それが功を奏していたように解釈できる。しかしながら2015年後半から大きな失速を見せ、その後も部数は横ばい。さらに今四半期ではさらなる下落の動きを示した。何らかの方針転換がなされ、それが読者の動きにつながったのだろうか。

他方、「PHPのびのび子育て」は前年同月比ではプラス圏。

↑ PHPのびのび子育て印刷実績
↑ PHPのびのび子育て印刷実績

該当期間の発行誌は3号分。特集内容を見渡すに、「「早く!」がなくなる、朝と夜の習慣」「子どもを幸せにする言葉・キズつける言葉」「3・7・10歳がわかれ道!心が荒れる子・おだやかな子」のような、素朴だがあるある話的な、子を持つ保護者の疑問が分かりやすい形でコピー化されており、手に取りやすいものとなっている。特に「3・7・10歳がわかれ道!心が荒れる子・おだやかな子」の号がよく売れており、評価も高い。

また部数動向を見渡すに、ここ1年ほどは大きな上下を繰り返しながら、平均としては上昇に転じた気配も感じられる。この傾向がもうしばらく続くようなら、2015年末を底として、機運に変化が生じたとの解釈ができよう。

一方、唯一の誤差を超えたプラス値を計上したのが季刊誌の「初めてのたまごクラブ」。

↑ 初めてのたまごクラブ印刷実績
↑ 初めてのたまごクラブ印刷実績

キャッチコピーは「妊娠がわかったばかりの「わからないこと」「不安なこと」を解消する情報をこの1冊にぎゅっとまとめました。医師監修の信頼できる情報満載で、あなたの妊娠生活を応援します」。季刊誌なので当然該当期の発行誌は1誌だが、通常版以外にサイズの小さなハンディ版も合わせて展開されている。また、すべての号にシンプルながらも役に立つアイテム、マタニティマークがついたグッズが同梱されているのが高ポイント。部数動向を見ても昨年で下げ止まりを見せた後、この半年ではトレンドが転換した感を覚えさせる。もう少し様子を見る必要があるが、期待はできる。

少子化だけでなく情報伝達媒体の多様化もあり、紙媒体は多ジャンルで厳しいビジネス環境下にある。しかしながら育児系雑誌ではその特異性もあり、雑誌ならではの付加価値を見出せる構成を成すことで、不調を乗り越える可能性を多分に秘めている。育児情報を求める人たちにとって頼りになる存在となることができるか否か、出版社や編集部の力量が問われるところだ。

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